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「……ふぅ、まあ、こんなもんで潮時か」スイートルームのフカフカなソファに深く身を沈め、俺は手の中のスマホを見つめた。
画面の向こうでは、相変わらず荒涼とした異世界で、白石や佐藤たちが群がる魔獣をテキパキと迎撃している。
最初はあいつらの惨めな姿を眺めるのが最高の娯楽だった。
だが、どれだけ極上のワインでも毎日飲めば慣れるように、ただ泣き叫ぶ神条たちの見苦しい悲鳴にも、いい加減飽きが来ていた。
「どうなさったのですか、司様?」
ヘカーティアが、心配そうにその可憐な瞳を覗き込ん込んでくる。俺は彼女の柔らかい頬を撫でながら、静かに息を吐いた。
「いや……もう十分楽しんだと思ってな。罪を認めて変わろうとした奴らまで、いつまでもあの地獄に縛り付けておくのも、美学に反する」
俺はスマホを操作し、グループチャットに最後の通知を打ち込んだ。
**近衛 司:** 『白石、佐藤、吉川、遠藤……その他、自分の罪と向き合って改心した者たちへ。お前たちの償いは、今日で終わりだ』
画面の向こうで、白石たちがピタリと足を止める。
白石 葵:『近衛くん……? それって……』
近衛 司:『地球への【完全な帰還】を認める。もう二度と異世界に引き戻されることもない。お前たちが自分の足で掴み取った『改心』の成果だ。受け取れ』
【対象:白石葵、佐藤拓海、吉川まゆ、遠藤達也を含む、真に改心した12名】
【象徴:異世界呪縛の完全解除、および地球での日常生活への完全復帰】
「森羅万象——『全快帰還(フルリターン)』」
画面の中で、黄金の光が白石たち12人を優しく包み込む。
「近衛くん……! ありがとう……! 本当に、ありがとう……っ!」
白石が涙をこぼしながら深々と頭を下げ、佐藤や他の面々も胸に手を当てて静かに感謝の祈りを捧げていた。
次の瞬間、光とともに12人の姿が画面から消え去った。
◇
そして——あとに残されたのは。
「え……? おい、白石たちが消えたぞ……!?」
「なんで!? なんであいつらだけ居なくなってんだよ!?」
取り残された神条、鬼塚、姫宮、そして黒岩担任たち加害者と浅ましい傍観者どもだった。
「近衛! 近衛ぇぇぇッ! 俺たちは!? 俺たちはいつ帰れるんだよおおおっ!?」
神条が泥だらけの顔でスマホにしがみつき、血吐くような悲鳴を上げる。
俺は死んだ魚のような冷たい瞳で、チャット画面に最後のメッセージを打ち込んだ。
近衛 司:*『お前たちは永遠にそのままそうだ。口先だけの反省と、最後まで他人に依存した浅ましい魂。お前たちには“帰る資格”すらない。……さようなら』
神条 蓮:*『嫌だあああああっ! 近衛様! ごめんなさい! 本当にごめんなさい!! 許してくれええええっ!!』
画面の向こうで、モンスターの群れが叫び続ける神条たちを取り囲んでいく。
俺は一切の迷いなく、スマホから『異世界観測アプリ』を長押しし——【削除】を押した。
ぽん、と軽い音とともに、アイコンが画面から消え去る。
神条たちの悲鳴も、絶望の叫びも、これで完全に途絶えた。
「……ふぅ。これでスッキリしたな」
俺がスマホをテーブルの上に放り投げると、ヘカーティアが嬉しそうに俺の首に抱きついてきた。
『うふふ、素晴らしい幕引きですわ司様。罪を贖った者には光を、最後まで腐りきっていた者には永遠の闇を……まさに神の裁きに相応しい結末です』
「ああ。これでもう、過去の因縁は全て清算された」
俺は愛おしい女神を抱き寄せ、その可憐な唇に優しく重ねた。
窓の向こうには、どこまでも広がる地球の美しい夜景と、俺の次のイリュージョンショーを待つ無数の人々の熱気が広がっている。
世界を魅了する大イリュージョニスト・近衛司と、彼を愛する女神ヘカーティア。
俺たちの、本当の意味での「最高で自由な人生」は、ここから始まるのだ。
コメント
1件
読み終わりました……第21話、すごく重くて、でもすごく綺麗な終わり方でしたね。 罪を認めて変わった白石たちにはちゃんと光を与えて、最後まで腐ってた神条たちには永遠の闇を突きつける——このメリハリ、「裁き」の美学を感じました。特にスマホのアプリを削除して、神条たちの悲鳴が完全に途絶える瞬間、鳥肌立ちました。 司様の冷徹な優しさと、ヘカーティアの温かな肯定が最後に重なって、なんか……救われた気持ちと、ちょっと切ない気持ちが混ざってます。この作品、しっかり闇と向き合って、ちゃんと決着をつけたんだなって思いました。 キュルノさん、素敵な物語をありがとうございます🥀🌙