テラーノベル
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ワンクッションはお手数ですが1話をご覧ください。
「吉田さーん、君宛にお手紙届いてんでー」
「んー、今行く」
#2 鮮明
事務所に届いた一通の手紙。
黄色一色の便箋に、ところどころラメが入っていて、ああこれは俺のメンカラである「きらめきイエロー」を模しているのだと気付いたのは最近のことだ。
それには、やけにか弱い線で、俺への思いの丈とやらを、長々と記してあった。
《突然のお手紙失礼します。
言わずもがな、吉田仁人さん。私はあなたのファンです。
⋯(中略)⋯
ところで、ライブや握手会にも毎回参加させていただいているのですが、覚えておられますか》
──覚えてるものか。名前も写真もないんだぞ。見ず知らずの有象無象を、お前は覚えていられるのか。
心のなかでそうツッコミながら、続きを読み進める。
《もちろん覚えておられないのは承知のうえです。
ですので、認知してもらえるようにしました》
手紙はそこで終わっている。
不審に思って、手紙の封筒を上下に振ってみると、中から何やら、ごそり、と物音がした。
《自信作です》
手作りと思しきプラバンのキーホルダーには、俺の写真と無数の黄色いハートが散りばめられている。一種のファンアートみたいで面白い。
ファンからの愛にほっこりしていると、まだ封筒が重いことに気がついた。
また封筒をひっくり返した同刻、はらはらと音を立てて中身が落ちる。
「……髪、の毛……?」
片手に余るほどの大量の髪の毛。
少し縮れたそれらが、己の存在を主張してくる。
ピーッと、危険を告げる警告音が頭に響いた。
──これは、ヤバいんじゃないか……?
そう焦る気持ちの中、髪の毛の間に挟まった、白く控えめなメモ用紙が目に映る。
今も絶え間なく頭の中でガンガンと警告音が鳴り続けている。駄目だ。見てはいけない。そう訴えかけている。
しかし、単なる興味本位で、髪の毛の下敷きになっている小さなメモ用紙に手を伸ばしてしまった。
《吉田 佐野宅出 07:42←朝帰りか?
佐野 吉田の手に触れる 07:45
吉田 佐野の頭を撫でる 07:59
佐野 吉田に話しかける 09:31
⋯⋯》
ゾッとした。俺と佐野の一挙手一投足、すべてを監視されているみたいな書きぶり。他にも、俺とメンバーの戯れだとか、発言だとか、そういうのも全てびっしりと書かれている。
警告音がより一層大きくなって、頭の奥がギスギスと痛む。
極めつけは、赤字で濃く書かれた、最後の言葉だった。
《吉田に近づく奴 ユルサナイ》
何これ。ホラー映画のオープニングかよ。そう笑えるものなら笑いたかった。
……ヤバい。少なくとも俺の語彙がヤバいになるくらいヤバい。
誰かに相談する? 助けを求める?
そんなことを考えはしたが、それさえも見られているような気がして、気持ちが悪かった。
そしてなにより──俺ごときのことに、メンバーを巻き込みたくない。
その一心で、俺は冷や汗で色褪せてしまった黄色の便箋に誓った。
──このことは、何があっても隠し通すと。
せん‐めい【鮮明】
あざやかではっきりしているさま。
コメント
1件
えっ!?!?めっちゃ怖いやつ来た!!!😱💦 最初のファンレターとキーホルダーは「ほっこり〜♡」って思ったのに、髪の毛と監視記録みたいなメモが出てきた瞬間にガラッと雰囲気変わってマジでゾッとした……「ユルサナイ」の赤字、脳内にこびりついて離れないんだけど!?😭💔 でも吉田さんがメンバー巻き込みたくなくて隠し通す決意するところ、健気すぎて胸が痛いよ……続き気になりすぎる!!