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少し重い体で、その毛布を頭からのけ、顔を出す。
「あの、1つ、良いでしょうか……?」
躊躇もありつつ、今の俺にとって一番大切だと感じるそれを尋ねる為に、俺に背を向け部屋を出ようとした主炎に声を掛ける。
ドアノブに手をかけかけていたその手の動きをピタリ止めた。
ゆっくりとその大きな背中を返し、あの瞳がまた俺をしっかりと見据える。
「何だ?」
その声は低く、穏やかで、俺を何故か落ち着かせる。
「……主は、ナチス・ドイツ様は、ご無事でしょうか…?」
主炎は俺の問いかけに眉一つ動かさない。
あいも変わらず、一本調子の声で、簡潔に、されどもしっかりと、答えた。
「あぁ。別室で、お前の心配をできるぐらいには元気にしている」
その言葉に俺は思わず胸を撫で下ろした。
“別室で”その理由は、きっと、脱出を企まぬように。こちらに危害を加えぬように。そんな意図の表れだろう。
だが、それでも良い。主が無事だったのだ。俺にはそれ以上の事は必要無い。
再び激しくなる胸の動悸を感じながら、主炎の方をもう一度見つめれば、彼の月光のような瞳には深い心配の色が渦巻いていた。
「じゃあ、晩飯持ってくるな」
主炎はそんな瞳をすぐにそらして、踵を返す。そのまま、そっとドアノブを回し、部屋を出た。
油を差したのか、もう金具の錆びた耳障りな音は消えている。
動悸の激しくなる胸を思わず押さえながら、だんだんと遠くに消えてゆく足音に耳を傾ける。
アイツは、本当に何がしたいのだろうか。