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海の紅月くらげさん
「はい、ましろん。ラムネどうぞ」
手渡されたラムネを握りながら潤を見上げる。
「ありがとう!えっと、はい、百円!」
「あげたいからいいよ」
私の手のひらの百円を遠ざけて、にこやかに微笑む潤。
「でも」
「俺のは?」
隣にいた実里くんが不服そうに潤を睨む。潤は困ったように微笑みながら、自分の分を実里くんに渡そうとした。
「ごめん。二つしか買ってないから、これあげるよ」
差し出されたラムネを一瞥して実里くんが外方を向く。
「いいよ。買ってくるから」
「実里、俺も行く」
ふらりと現れたのは、チョコバナナを食べている和葉だった。
チョコバナナの割り箸部分をしっかりと握りしめながら、最後の一口だけ大事にとっておいているようだった。
「俺はラムネとチョコバナナとあんず飴を買おうと思う」
「だからなに」
「俺の手は二本しかない。けど、ラムネとチョコバナナとあんず飴を買いたい。大問題だ」
「……はぁ、わかったから行くなら早くして」
実里くんのふわふわの栗色の髪を和葉が優しく撫でる。それを実里くんがむっとした様子で払いのけた。
あ……、そっか。和葉も実里くんにお祭りをもっと楽しんでほしいんだ。
買いに行く二人の後ろ姿がなんだか微笑ましい。兄弟じゃなくても、みんな潤みたいに実里くんのことが大事なんだ。