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「早く自分の部屋行きなよバカ!!」
勢いよく部屋のドアを閉め、私は背中を預けたまま深くため息をついた。
頭を抱えると、さっきりりあに無理やりつけられた、ピンクのヘアピンが指先に触れる。
「……何が『最高に可愛い』だよ。バカじゃないの」
心臓が、さっきからうるさいくらいに脈打っている。
怒りのせいか、それとも――あいつの、甘い香水の匂いが鼻をかすめたせいか。
クラスの頂点に君臨する量産型女子、星野りりあ。
一匹狼を気取る地雷系の私とは、住む世界が違うはずだった。
それが、親の再婚のせいで「妹」になるなんて、何の嫌がらせだろう。
おまけに「学校では秘密ね」なんて、こっちのセリフだ。
少しだけ落ち着きを取り戻した私は、お風呂に入って頭を冷やすことにした。
お気に入りの黒いストレートヘアを洗い流し、お風呂から上がってリビングに向かう。
……それが間違いだった。
「あ、めるちゃん!お風呂上がり?お疲れ様〜♡」
リビングのソファでくつろいでいたのは、信じられない姿のりりあだった。
あいつが着ているのは、黒地に大きなピンクのフリルがついた、私の一番お気に入りのオーバーサイズパーカー。
ぶかぶかの袖から、白くて細い指先がちょこんと覗いている。
「……ちょっと。勝手に私の服着ないでよ」
私が低く睨みつけると、りりあはわざとらしく首を傾げて、上目遣いで微笑んだ。
「え〜?めるちゃん、これ絶対似合うのに♡ っていうか、りりあにも似合ってない?……ねえ、可愛い?」
ずるい。
こいつは自分がどう動けば、どう微笑めば他人がときめくかを完璧に理解している。
フリルのついたフードを深く被り、内緒話をするみたいに私に顔を近づけてくるりりあ。
「……っ、似合ってない。今すぐ脱げ」
「えー、冷たいなぁ。これからずーっと一緒なんだから、服の貸し借りくらい、いいじゃん?」
そう言って、りりあは私の手首をきゅっと掴んだ。
お風呂上がりだからか、あいつの手のひらはいつもより少し熱くて、私の肌にその体温がじわじわと染み込んでいく。
「学校では言えないんだからさ……お家の中くらい、仲良くしよ?お姉ちゃん♡」
悪戯っぽく微笑む「妹」の瞳に、完全にペースを乱された自分の顔が映っていた。
黒とピンク。最悪で、最高にキュートな私たちの秘密の生活は、まだ始まったばかりだ。
コメント
5件
りりあちゃんもめるちゃんもどっちも可愛い…!!
見た目だけじゃなくて所作まで……! すんばらしい!!!(♡>~<♡)