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学校から駅までは結構距離があって、歩いて30分近くかかる。田舎すぎる。
「瀬南くんはGWどこか行くの?」
「…答えなきゃいけない?」
「ううん、大丈夫」
無言で歩くのもな…と思って質問を無下に返されるのを分かってても、とりあえず思いつく話題をひたすらに振った。
「美術部に飾られた絵ほんと綺麗だった」
「まぁ、そうだね」
「綺麗で見惚れてたらスマホ忘れちゃったんだけどね」
「うん」
「GW前に携帯忘れるなんてバカだよね、 本当に気をつけないと…」
「…無理に話題振ってくることないから、ちょっと静かにしてたら?」
あ、私無駄に喋り過ぎたかな。静かにしてた方が良かったのかも、やらかしたな…
「あ、ごめん」
私の声が響くからうるさく感じてたのかも。瀬南くんに何度か声が大きいって言われてたのに配慮足りなかったな…
「………」
「………」
「…連休、気乗りしないんでしょ。そんな時にこっちに気遣わなくていいから」
「え…」
他の人には何も言われなかったのに何でこの人…
「ほんっと、分かりやすい顔」
「な、何で私がGW嫌がってるの分かったの?」
「…’GW’って単語出る度に作ったような顔されてたら分かる」
「私、瀬南くんとGWの話そんなたくさんしてたっけ?」
「中学の集まりあるって話とか今も自分から話題出して落ち込んでるし…さっき、僕も1回言っちゃったし」
初めて見かけた時と今日のやりとり…そっか私、隠してたつもりだったけど出ちゃってたのか…
「あはは、人のことよく見てるねすごい」
「それやめて、作り笑いしないで」
私にそんな言葉をかけてくれたのは彼だけな気がする。言い方は素っ気ないし、口調はちょっと強いというか厳しいけど私にとっては優しい言葉だ。
「……ありがとう」
「ん」
「学校で笑顔作ってるの…しんどくて」
「今、表情作んなくていいから」
作らなくていい…今どれだけこの言葉がありがたいか
「……ちょっとだけ、私の話してもいい?」
「どうぞ」
「GW初日、明日なんだけど……おばあちゃんの四十九日なんだ」
話すつもりはなかったのに表情を作らなくなっただけでこんな話をしてしまうなんて…ほんと。こんな暗い話、楽しいはずないから話さない方がいいのに
「うん」
いつも口調は素っ気ないのに相槌は優しくて溜め込んでたものを吐き出していいよと言ってくれているようで、それまで誰にも言えなかった言葉がポロポロと溢れていく。
「優しくて大好きなおばあちゃんだからすごくショックで」
「うん」
「四十九日って喪に服していた遺族が日常生活に戻る日らしいんだけど」
「うん」
「…今も普通に日常生活送ってるけど、私の中では全然心の中が晴れてなくて日常に戻れるわけないって思ってて」
「うん」
「でも、学校の皆には関係ないし変に暗くなってたらダメだし、普段通りでいようって思ってるけど気が緩むと暗くなっちゃいそうで怖くて」
「……そう」
話してる内容、喋ってる順番すらめちゃくちゃな気がするけど、それでも瀬南くんは何も言わずに頷いて聞いてくれた。
「家族もね、私がおばあちゃん好きなの知ってるからすごい気遣ってくれて…でも、それが申し訳なくて」
「うん」
「明るく振る舞える気がしないし、どの誘いも受ける気になれなくてさ、だからGWは部屋に引きこもっていようかなって」
「絵を見るのは、好き?」
今までずっと相槌をうっていた彼が私に質問をしてきたずっと俯いてた顔を上げると瀬南くんとばっちり目が合う
「…もちろん」
「明々後日が暇なら僕に付き合って」
「え?」
「僕に’お礼’したいんでしょ?」
あ、さっきの…
「うん、したい」
「じゃあ、明々後日11:00に学校最寄駅ね」
「…分かった」
なんかサラッと約束しちゃったけど瀬南くんいいのかな。出会って間もない私なんかと…声うるさいとか言われたし、こんな暗い気分の私といてもつまらな…
「余計なこと考えなくていいから、明々後日は何処行くのかとか何着ていこうかとか考えたら?」
「いや、でも…」
「隣にいるのが恥ずかしいくらい私服ダサかったら他人のふりして帰るから」
「え?!ど、どうしようそれは困る!…な、何着てこう…」
他人のふりして帰られたら準備して来た意味!ってなるしどうしよう…何着ていくのが正解?どういう服がオシャレなの?!中学の時だって制服かジャージだったし私服着る機会なんて滅多に…いや、明々後日ってことは明後日空いてるわけだからその日に買い物に行ってくるのも有り?
1人で思考を巡らせていると最寄駅にはあっという間に到着した。
「瀬南くん本当に今日はありがとうございました。このご恩は忘れません」
「’お礼’してもらうし気にしないで」
「うん、しっかりお礼させて下さい!」
「気張らなくていいから」
はぁっ…とため息をつきつつも瀬南くんは改札口まで送ってくれた。
「明々後日って駅のどこにいればいい?」
「ここでいい、改札前にいて」
「分かった」
「電車、来そうだけど急がなくていいの?」
「はっ!あ、ありがとう!本当に瀬南くんには感謝しきれないよ!また、明々後日ここで!ばいばい!」
電光掲示板を確認するとあと2分で出発だったので瀬南くんにお礼を言って定期券を取り出し改札を抜ける。
手を振って さよならの挨拶をしたけど、彼が手を振り返してくれることはなく、ただただこちらを見つめていた。