三咲はこの頃、心の中での葛藤に悩んでいた。智也への未練が消えない一方で、修一との関係が少しずつ深まっていることも感じていた。修一の優しさは、彼女にとって非常に心地よく、智也と過ごしていた時間のように、時折胸が痛むこともあった。けれども、修一と過ごす時間には新しい感覚があり、それがどうしても心地よかった。
ある日、三咲は修一と放課後に一緒に帰ることになった。その日は特に気持ちが落ち着いていて、修一との会話が楽しくて仕方なかった。しかし、帰り道で智也に偶然出会った瞬間、三咲の心は一気に動揺した。
智也は、三咲を見て驚いた表情を浮かべた。「あ、三咲…どうしたんだ?修一と一緒に帰ってるのか?」
三咲は一瞬、言葉を失ったが、すぐに落ち着いて言った。「うん、今日は修一くんと一緒に帰ることになったの。」
その答えを聞いた智也の表情は一瞬硬直したように見えたが、すぐに「そうか…」とだけ言って、足早にその場を去った。
その瞬間、三咲の胸の中で何かが引っかかる感覚があった。智也が去っていった後、修一は少し心配そうに彼女を見つめた。「三咲、大丈夫か?」
三咲はその優しさに心が温かくなると同時に、何とも言えない気持ちを抱えながら答えた。「うん、大丈夫…ただ、ちょっと気まずかっただけ。」
修一は少し考えた後、にっこりと笑った。「それなら良かった。でも、無理に話すことはないからな、気になることがあったら、何でも言ってくれ。」
その言葉に、三咲は一瞬だけ安心したものの、心の中では智也との関係がどこに向かっているのか、そして自分が本当にどちらを選びたいのか、分からなくなっていた。
帰り道、三咲は修一と話しながらも、智也の顔が頭から離れなかった。彼があの時見せた表情に、彼女は少しだけ傷ついている自分がいることに気づいていた。それでも、修一と一緒にいるときの安心感が、何よりも心地よく感じていた。
その夜、三咲はベッドの中で目を閉じ、ふと考える。もし智也と修一、どちらを選べばいいのだろうか。智也への思いが消えない中で、修一の存在が確実に心を引き寄せていた。でも、修一と過ごしている時間は、確かに新しい世界を開けてくれるものだった。
「どうしてこんなに複雑なんだろう…」三咲は自分にそう呟いた。
その時、修一からのメッセージが届いた。内容は短く、「今日は楽しかったよ。また明日も話そう。」というものだった。それを見て、三咲は少しだけ安心し、そして心の中で何かがまた少し動き出すのを感じた。
翌日、学校で修一とすれ違うたびに、三咲はその目を合わせるのが少し恥ずかしくなった。そして、智也と目が合った瞬間、どうしても避けてしまいたくなる自分がいることに気づいた。
「こんなことでうまくいくわけないよね…」三咲は心の中でつぶやいた。
だが、結局その日の放課後、三咲は修一にまた一緒に帰ろうと誘われ、二人で帰ることになった。智也の顔を見てしまうと、彼に対する未練や不安が胸に広がり、どうしても前を向いて歩けないような気がしていた。
その日の夕方、三咲は改めて自分の心の中で何を選ぶべきなのか、悩みながらも歩き続けていた。
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