テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
1件
みぅです🤍🥀 第6話、読み終わりました…。 「来世じゃなくて今がよかった」って言葉がすごく刺さって、胸がぎゅーってなった。最後まで笑おうとしてた彼女の強さと、手紙を何度も読んじゃうはるきの気持ち、わかるよ、ほんとわかる。 ミサンガが切れた瞬間、一緒に泣きそうになった。 でも「約束する」って言えたはるき、ちゃんと前に進もうとしてて…それがまた切なかった。あなたの書く“別れ”の描き方、すごく丁寧で、静かに寄り添いたくなる。お疲れさま、愛さん🌙
41
赤羽結乃愛
82
33
サッカーオタク
484
# 『6番の約束』
便箋を開く。
涙で文字が滲む。
何度も袖で目をこする。
そして。
ゆっくり読み始めた。
「はるきへ。」
「まずは言わなくてごめんなさい。」
「大事な大会の間に言える勇気は私にはなかったんだ。許してね笑」
その「笑」が、
苦しかった。
最後まで。
笑おうとしていたんだ。
「はるきと一緒にいられたこの期間、ずっと笑ってた気がする!」
写真が浮かぶ。
公園。
帰り道。
くだらないLINE。
ミサンガを結んだ日。
全部。
昨日のことみたいだった。
「別れたことちょびっと後悔してるけどね笑」
「ちょびっとじゃねぇだろ……」
思わず笑う。
でも。
その笑顔はすぐ涙に変わる。
「あのね、ほんとに幸せだったよ。」
その一文だけで、
胸がいっぱいになった。
苦しかったはずなのに。
怖かったはずなのに。
幸せだったと言ってくれる。
そんな人だった。
「自分を責めないでね。」
無理だ。
そう思った。
でも。
その言葉だけは、
裏切りたくなかった。
「来世は結ばれたいなー笑」
涙が便箋に落ちる。
「来世じゃなくて……」
「今がよかった。」
震える声で、
そう呟いた。
「現世は幸せに暮らすんだよ!!」
「ありがとう今まで。」
「ばいばい!」
手紙は終わった。
静かな部屋。
はるきは便箋を胸に抱きしめる。
「……ありがとう。」
その言葉だけが、
やっと口からこぼれた。
三か月。
季節は秋になった。
でも。
はるきだけ、
夏に取り残されていた。
朝。
目覚ましを止める。
起き上がれない。
学校。
笑えない。
部活。
ボールが足につかない。
「どうした?」
監督が聞く。
「すみません。」
それしか言えない。
試合。
ゴールを決めても、
嬉しくなかった。
勝っても。
負けても。
観客席を見てしまう。
そこにいるはずのない、
世界一の応援団長を。
夜。
トーク画面を開く。
最後のメッセージ。
「ばいばい。応援できて嬉しかった」
消せない。
消したくない。
「会いたい。」
その一言だけが、
毎日増えていった。
秋の夕方。
家へ帰ると、
母が小さな封筒を差し出した。
「病院から預かってたんだって。」
見覚えのある字。
『はるきへ』
震える手で開く。
「私がいなくなってからの生活は慣れました??笑」
「慣れるわけないだろ。」
思わず笑って、
泣いた。
「私ははるきが前を向けていないなら、それは応援団長として不甲斐ないので、ここでもう一通手紙読んでね^^」
「最後まで応援団長かよ。」
涙が止まらない。
「はるきが思ってる以上に私はしあわせだったよ。」
「余命宣告された時から、隣にいてくれる時間は全部宝物だった。」
「当たり前だと思ってたものが、当たり前じゃなくなった時って、本当に全部素敵な世界だったんだ。」
ページをめくる。
「毎日部活頑張ってるはるきだから、LINEも少し申し訳なくなっちゃうし、嫉妬もして苦労かけちゃってごめんね。」
「謝るなよ。」
声が震える。
「でももう前を向いて歩かなきゃダメだよ!!」
「少しづつ前に進みなさい。」
「これが私の最後のお願いです。」
その一文を、
何度も読む。
十回。
二十回。
何度も。
「もう手紙もメッセージも送れないけど、せめて、はるきがしあわせだったって言える人生になりますように。」
「じゃあまた天国でね。」
「行ないよくするんだぞ🫵🏻」
読み終わる。
涙でぐしゃぐしゃになった便箋を、
胸に抱いた。
そして。
初めて笑った。
「……分かったよ。」
「約束する。」
翌日。
久しぶりに、
グラウンドへ立った。
ボールを蹴る。
走る。
苦しい。
でも。
逃げなかった。
「幸せになるんだよ。」
その言葉を思い出す。
もう一歩だけ、
前へ。
その瞬間だった。
「……あ。」
手首から、
小さな音がした。
赤と青のミサンガ。
付き合っていた頃、
彼女が結んでくれたもの。
一度も切れなかった。
雨の日も。
泥だらけの日も。
試合の日も。
三年間、
ずっと。
なのに。
今日。
前を向こうと決めた日に、
静かに切れた。
はるきはしゃがみ込み、
そっと拾い上げる。
手のひらに乗せる。
少し色あせた糸。
涙が一滴、
その上に落ちた。
「……そういうことか。」
空を見上げる。
秋の風が吹く。
どこかで、
笑い声がした気がした。
「やっと前向いたね😊」
そんな声が、
聞こえた気がした。
はるきは、
切れたミサンガを捨てなかった。
財布の中へしまう。
二通の手紙と一緒に。
これから先も。
嬉しい日も。
苦しい日も。
ずっと一緒に生きていくために。
あの日の約束は、
終わったんじゃない。
形を変えて、
これからも続いていく。
第四部 完