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三文小説
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渡辺がゆっくりと目を開ける。
見慣れない白い天井。
鼻をくすぐる消毒液の匂い。
「……。」
身体を動かそうとすると、頭に鈍い痛みが走った。
「翔太。」
聞き慣れた優しい声が耳に届く。
ゆっくり顔を向けると、ベッドの横には宮舘が座っていた。
その手は、ずっと渡辺の手を包み込んでいたようだった。
「……涼太。」
宮舘は安心したように微笑む。
「よかった。」
渡辺はぼんやりと宮舘を見つめる。
「……ずっといたの?」
「うん。」
「目が覚めるまで、ここにいるって決めてた。」
その言葉に、渡辺は少しだけ笑った。
「ありがとう。」
しかし、次の瞬間には表情が曇る。
「あべちゃんは?」
宮舘はすぐに頷いた。
「命に別状はない。」
「足に怪我はしているけど、治療は終わった。」
「今は目黒がそばにいる。」
その言葉を聞き、渡辺は大きく息を吐いた。
「……よかった。」
胸をなで下ろしたのも束の間、誘拐された時の記憶が少しずつ蘇る。
自分は途中で意識を失った。
そのあと――。
「……。」
「あべちゃん。」
渡辺は唇を噛んだ。
「俺を守ってくれてた。」
拳を強く握り締める。
「本当は。」
「俺が守らなきゃいけなかったのに。」
「あべちゃんに……。」
「守られた。」
悔しさと情けなさが込み上げる。
「俺、何やってんだよ……。」
渡辺は目を伏せた。
その瞬間。
宮舘は何も言わず、そっと渡辺を抱きしめた。
「涼太……?」
渡辺は驚いて顔を上げる。
宮舘は優しく背中をさすりながら、静かに話し始めた。
「翔太。」
「翔太は、自分を責める必要はない。」
「でも……。」
「俺はあべちゃんを守れなかった。」
宮舘は首を横に振る。
「違う。」
「翔太がスマホを持っていてくれた。」
「GPSを切らずにいてくれた。」
「その位置情報があったから。」
「警察はすぐに二人を見つけられた。」
渡辺は宮舘を見つめる。
「もし。」
「翔太がスマホを持っていなかったら。」
「もっと発見は遅れていたかもしれない。」
「酷い事をされていたかもしれない。」
「二人揃って殺されていたかもしれない。」
宮舘は少しだけ目を潤ませながら続ける。
「翔太が残してくれた道標が。」
「二人を助けたんだ。」
渡辺の目に涙が浮かぶ。
「でも。」
「あべちゃんは怪我を……。」
「阿部は。」
宮舘は優しく微笑んだ。
「翔太を守りたかった。」
「翔太も。」
「阿部を守りたかった。」
「それだけだろう?」
渡辺は小さく頷く。
「……うん。」
「だから。」
「どっちが守ったとか。」
「守れなかったとか。」
「そんなことじゃない。」
「二人とも、お互いを守ろうとした。」
「その結果。」
「二人とも無事だった。」
宮舘は渡辺の肩を軽く叩いた。
「それで十分だ。」
渡辺は堪えていた涙を流した。
「……涼太。」
「怖かった。」
「うん。」
宮舘はもう一度優しく抱きしめる。
「怖かったな。」
「もう大丈夫。」
「俺がいる。」
「もう一人にはしない。」
渡辺は宮舘の肩へ額を預け、小さく頷いた。
「……ありがとう。」
宮舘は静かに微笑みながら、渡辺の髪を優しく撫でた。
病室には、ようやく張り詰めていた心がほどけていくような、穏やかな時間が流れていた。
コメント
3件

一気に読みました。 怖かったよね。 怪我しているの見たらそれもナイフ刺さってたら青ざめるよね😨 抱え込む2人だからゆっくり傷を癒して欲しいな しょっぴーも自分を責めるよね。 涼太が言う様にGPSなかったら…怖いよね😱
みらさん、第5話読了しました🕊️ 渡辺が自分を責めるシーン、胸がぎゅっとなりました。でも宮舘が「翔太が残してくれた道標が二人を助けたんだ」って言うところ、ああ、そういう見方もあるんだなって気づかされて。お互いを守ろうとした気持ちがちゃんと通じ合っているのが、すごく温かかったです。病室のラスト、ふたりの緊張がほどけていく空気が、読んでいるこちらにも伝わってきました。