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母に“好き”を否定され、奪われ続けたある日の事
俺は海へと立ち寄った、決して自害するためとかではなく 何となくだった。
潮風が気持ちよく、水面に映る太陽が キラキラと宝石のように美しかった。
靴と靴下を脱いで、足首までつけてみると、ひんやりと冷たい感触が伝わってくる。
目を凝らして見てみると、小魚や子蟹が石の隙間から顔を出している。
今度は膝まで浸かって見る、スカートが濡れないよう気をつけながら足を動かしてみる
風呂とは違う心地よさ、冷たいのに暖かい、そう感じた。
海は俺を包んでくれる、心から安心できる、俺にとって唯一の場所になった。
海からあがり、持っていたハンカチなどで足を拭き、座って靴下と靴を履き直す
その間もたまらなく心地よかった、周りには誰もいない、俺1人だけ。
しばらくして 立ち上がり帰ろうとすると、朝まで何かが光って見えた
俺はそれを手に取って確認した、それは硝子の破片だった。
酒瓶の破片だろうか、翡翠色に輝くそれは、今まで手にして来たアクセサリーなんかとは比べ物ならない程に美しく、大切に思えた。
俺はそれをポケットにしまい、あの家へと帰った。
部屋に戻ると、俺はその破片を 磨いたり削ったり眺めたりと、様々な方法で観察した。
角を削り取られたそれを見て、どこか自分に似たものを感じた、そして満足してからそれを宝箱というなの空き缶の中にしまった。
心の底で、何かが積もっていく、満たされていく
初めて母に奪われない、俺の“好き”がそこにあった。
「明日も行こう」
そう呟き、俺は部屋を後にした。