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よう、ルイスだ。今俺は人生最大の危機に直面してる。何かって?あれからシャーリィの奴は俺を離さないもんで、仕方なく同じ部屋に放り込まれたんだよ。シスター達にな。
そして今も、ベッドに腰かけてシャーリィの奴がギュッっと抱きしめてきて離さねぇんだ。
嫌なのかって?まさか、惚れた女にここまでされて嬉しくない男が居るかよ。滅茶苦茶嬉しいさ。いや、もう後先考えずこのまま押し倒して想いを全身にぶつけてやりたいくらいだ。
……でもな、駄目なんだよ。確かに俺も迂闊だったさ。距離を置くって決めた側からデートに誘うし、プレゼントするし。ワンピース愛用してくれるのは嬉しかったけど。しかもさっきのアレだぜ。まるでお姫様を助けに来た勇者様かよって話だ。
…でも、俺は伝説の勇者なんかじゃない。こいつの足枷に何か成りたくない。頼れる男に成りたいってのは、ガキの願望なのか。
「シャーリィ、いい加減離れろよ。いや、一緒に居てやるからさ。手を離してくれねぇと俺も身動きが取れねぇ」
「……ルイは、嫌ですか?」
上目遣いやめろ、決意が鈍るだろうが。
「嫌じゃねぇよ。お前にこんな想いをさせちまった自分に腹が立ってる」
「あれは私が迂闊なばっかりに…」
「それでもだ!もっと早く駆けつけるタイミングは幾らでもあった。俺はそれに気付けねぇで、結局遅れた間抜けさ」
「そんなことは…」
「駄目なんだよ、シャーリィ」
「えっ?」
「駄目なんだ。俺、今のままじゃ間違いなくお前の足を引っ張る。俺はバカだから、お前が考えてること、やろうとしてることを分かってやれねぇ。でも、とんでもないことをやるような気がする」
「…」
「そんなお前の隣に居るには、強くなくちゃいけねぇんだ。ベルさんはバカみたいに強いし、シスターも規格外。セレスティンの爺さんなんて反則級に強いんだぜ。エレノアの姐さんだってそうだ」
そう、シャーリィの周りには滅茶苦茶強い連中が集まってコイツを守ってる。そんな連中の中に入っちまったら…。
「そんな人達の中じゃ…俺も守られる存在になっちまう」
「ルイ…」
「そんなのは、俺が許せねぇ。俺はお前に守られる男じゃねぇ、お前を守れる、お前が安心して背中を預けられる男に成りてぇんだ!」
だから、それまでこの気持ちは封印しとく。情けねぇけど、シャーリィの足枷にだけは成りたくねぇんだ。
「……悪い、怖い思いさせといてなに言ってんだって話だよな」
「…」
「…シャーリィ、どうしっ…!」
ああ、言葉を出せなかったよ。だって、俺の唇にシャーリィの唇が触れたんだから。つまり、キスされた。
「っ!お前っ…」
「実に見事な独白をありがとうございます。一方的に語られるのは不快極まりないです」
「おっ、おう。悪かったよ」
あれ、怒ってる?
「貴方の理屈は分かりました。実に立派な考えです。貴方を部下と言う観点から見れば、称賛を惜しみません」
「おう。」
「ですが……貴方の気持ちに、私の気持ちは考慮されていません」
「えっ?」
「私がなにも思っていないとでも?確かに貴方に対して苦手意識はあります。ですが、それ以上にどれだけ貴方に救われたか」
俺が、シャーリィを?
「ルミを失ったとき、私は絶望しました。大切な家族を理不尽に奪われ、ようやく手に入れた大切な友達。それすらも、私は奪われた。私自身の落ち度もありますが、それ以上に!」
こんなに感情的なシャーリィは始めてだな。
「この世界は意地悪だ!くそったれだ!私のささやかな願いすら奪い去る!恨みますよ!世界を!何もかもをぶっ壊してしまいたくなる!」
「シャーリィ…」
「そんな中…貴方が現れた。毎日毎日、暇なのかと疑うくらい私にちょっかいを出して。煩わしくも思いましたよ。でも、同時にルミを失った悲しみを少しだけ癒してくれた」
ああ、そうだ。二年前、暇があれば大樹の墓の前でじっとしてたシャーリィを見付けて、放っておけなくて…ちょっかいをかけてた。
「どんなに救われたか、分からないでしょうね。私は自然と貴方の来訪を待つようになった。貴方との掛け合いは…まあ疲れますけど、楽しかった」
「疲れるは余計だろ」
「そして、今回の件。何が怖かったのか。簡単です、貴方以外の男に襲われる。それを実感した瞬間、怖くなって情けないことにただ涙を流すことしか出来なかった」
「当たり前だよ、情けなくなんかねぇよ。あれで平然としてる女が居るならそいつは相当な色物だぜ」
「生憎私は色物ではなく、貴方に助けられて本当に嬉しかったんです」
「…ああ、間に合って本当に良かったよ」
「ですが!」
「ん?」
なんだ、良い感じに終わりそうだったのに。
「先程も言いましたが、この世界は意地悪です。クソヤロウで、くそったれです」
「おう」
「だから」
「おいっ!?」
油断していた俺はあっさり押し倒され、シャーリィが馬乗りに…って!羽織らせてた俺の上着を脱ぎやがった!?
当然その下には無惨に破かれたワンピースがあるわけで…俺は慌てて顔を逸らした。
「また私の大切なものを奪い去るかもしれません。いや、意地悪なので間違いなく狙ってくる。だから」
「おいぃ!!」
こいつ、ワンピースを脱ぎやがった!てか下着!下着着けてねぇ!なんでだ!?
「奪われる前に、奪われないようにちゃんと私の手元に置いて護る必要があります。何があっても、どんな手を使っても!」
俺に馬乗りになったシャーリィは、その真っ白な身体を惜しみ無く晒す。月明かりに照らされたシャーリィは女神のように見えた。
…まあ、素っ裸なんだがな。
「だから、ルイ。貴方の覚悟は理解しましたが…諦めてください。私は、貴方を大切なものにします」
「…拒否権は?」
「ルイに襲われたと大声を出しましょうか?」
「洒落に成らねぇから!」
「では、答えは?」
本当にこいつは!
「分かったよ、俺も腹括るさ…強欲なお嬢様」
「結構………ルイ、来て…」
「っ!」
俺はそのまま身体を起こしてシャーリィを押し倒した。
あー、何て言うか………情けねぇ話だな。女にここまでお膳立てさせちまったんだからさ。
けど、もう腹は括った。目標は変わらねぇ。コイツが、シャーリィが心底笑顔になれるその日まで、俺はシャーリィの剣として生きていく。それは変わらねぇ想いだ。
で、その後なんだが。まあ、お互い若さに任せちまったからな。翌朝シャーリィは足腰立たなくなるし俺も節々が痛い。シスターやベルさんに生暖かい目で見られたのはご愛敬だな…はぁ。