今日も朝早くから現場入りし、着々と準備を始めた。
『あ、勇斗さん!おはようございます!』
現場に入って聞こえてくる第一声は…猫撫で声のあの人。
この間の飲み会のこともあって、異様に距離を縮めようとしてくる。
俺も正直苦手ではあるが共演仲間だから、表面上は良くしておかないと…。
「おはようございます」
『今日晴れてよかったですね!外撮影だから』
「ほんとっすね」
『勇斗さんが晴れ男なのかもしれませんね!』
「そうかもしれませんね、…笑」
『あれ、勇斗さん、首元…赤くなってますよ?』
「首元?」
『はい、項あたり…?あ、これ鏡どうぞ!』
鏡越しに見ると、確かに赤くなっていて、それは正にキスマークのような…
あ…
『どうしました?』
「あ〜いや、ほらもう暑い季節ですし、蚊にでも刺されたんすかね…笑」
『確かに!もうでてきてますもんね!嫌だなぁ』
「ちょっとメイクさんに隠してもらってきます。」
そう言って、なんとか煩雑な時間を抜け出した。
キスマークみたいって…これどうみたってキスマじゃん。
…絶対仁人の仕業だろこれ。
てか、いつ付けたんだよ,,
急いでメイクさんの元へ行き、隠してもらうよう頼んだ。
メイクさんとは長年の付き合いだから、遠慮なんてものはなく、ズカズカと踏み込んでくる。
「ごめん!これ…隠してもらっていい?」
「なにこれ、キスマ?笑」
「…。違うわ!」
「今の間は流石に怪しすぎ〜笑はぁ…とうとう勇斗も現場までキスマもってきちゃうかぁ…笑」
「だから違うって!」
「はいはい笑とりあえず隠せばいいのね」
「うん。よろしく」
「おっけー」
案の定いじられたが、なんとか隠せたっぽい。
そして今日の撮影も無事に終え、早急に家に帰った。
「ただいまー」
「おかえり」
「ちょっと仁人集合」
「ん?」
「これ、いつつけたんだよ」
「あ…いや、えーっと…」
「今日さんざんメイクさんに煽られたわ。共演者の人にも言われたし。」
「それは…ごめん。でも、」
「言い訳はベッドで聞きます。」
仁人を軽々と抱え、ベッドに寝かせた。
未だに言い訳しようとする仁人はほっとき、服を脱がせ、仕返しのように全身にキスマークを付けた。
そしてそのまま流れに身を任せ、いつもより少々乱暴で甘い営みが行われた。
「で、言い訳はなんだっけ?」
「勇斗が…勇斗が頻繁に飲みに行くから,,,あの女の人とも仲良さそうにしてるし…この間の飲み会だって、勇斗潰れててあの人から電話きたんだぞ?」
「え…そうなの?」
「うん。勇斗のスマホで電話するわ、距離は異様に近いわ、名前で呼ばれてるわ。ほんとなんなんだよ」
「なんかごめん。てか、そんなこと思ってたんだ。嫉妬?」
「…そうだよ。すみませんね、心狭くて。お前のことが好きすぎてどうしようも無いんだわ。」
「いや、普通に嬉しい」
「え…?」
「なに」
「いや…引くかと思ってた」
「いやいや引きませんよこの程度。」
ほんとこの程度じゃ全然引かないわ。
仁人は知らないだろうけど、俺は現場に行く度にロック画面をお前に変えてんだよ。
仁人といる時は普通の風景画だけど、仁人がいない時は、満面の笑みの仁人の写真にわざわざ変えてんの。
俺はいつだってお前のことしか考えてないし、お前のことしか考えられないの。
その辺分かってる?
この首元の赤い印が、仁人の嫉妬を表したものなら、もっとつけたっていい。
「なんだったらもっとつけてもいいよ」
「んじゃつける。」
そう言って、やけに素直に俺の首元にもうひとつ赤い印を付けた。
すると今度は仁人がグイッと上を向き、首元を見せつけた。
「どうした?」
「勇斗ももっとつけていいよ。俺はお前のもんだって証明してよ」
「…。」
既に赤く染まった首元にもうひとつ付け足し、足元をすくい上げ、そのまま太腿に甘噛みした。
「痛っ…噛むな!」
「…お前のせい。」
「は?」
お前が可愛すぎるから。
可愛すぎてどうにもできないんだわ。
俺が嫉妬でおかしくなりそうなのも、
とろけるくらいに甘やかしたいって思うのも、
全部お前のせい。
ごめん、まだ寝かせらんないわ____.
『勇斗さん!おはようございます!』
「おはようございます!」
「あれ、今日はテンション高いですね」
「そうっすか?」
「なんかいつもに増してキラキラしてます!あ、また首元、刺されてますよ!」
「ほんとだ。痒いと思ったんっすよね…笑またメイクさんに隠してもらわないと…。じゃ、準備してきちゃいますね」
「わかりました!あ、勇斗さん待って!」
「…?」
「今日撮影終わり、みんなで飲む話出てるんですけど、勇斗さん…来ますか、?」
「…すみません!ちょっとこれからは行けそうにないっすね、、」
「…え?」
俺の事が大好きすぎる恋人が嫉妬しちゃうんで…笑
end.
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