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94 - Ep85 レオ 〜魔族領〜

2025年01月08日

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 日差しが目の裏から眩しく差し込む。
 久しぶりに、陽気な気持ちで目覚めたような気がする。


「ン…………」


「起きたか」


 私の起床を待っていたのは、白髪で容姿も変わって見えるが、雰囲気が薄らと残っている。

 私のパーティにいたシールダーの、シグマだ。

 記憶が曖昧だが、何が起きたかは瞬時に思い出した。

 しかし、気持ちは落ち着いていた。


「ここはどこだ……?」


「魔族領」


「!? なんだと……!?」


 それは、敵陣に丸裸でいる驚きもあったが、話に聞いていたものとは違う、温かい穏やかな陽の光が、信じられなかった。


「外、出てみるか?」


「いいのか……? 手錠とか……俺を拘束しなくて……」


「あぁ。する必要がないからな」


 シグマはそう言うと、悠長に背を向けた。


 ――


 外に出ると、キルロンドの街並みによく似た、人々の往来がある通りが広がっていた。

 唯一違うことは……髪色だけだった。

 どうやら、私が寝かされていたのは、病院のベッドだったらしい。


「わぁっ! 金髪だ! 初めて見た! かっこいい!」


 子供…………?

 黒髪…………魔族の子供。

 あどけない顔で、何の不思議もなく話しかけてくる。


「本当ね。黒のメッシュがかっこいいわね」


 その母親…………。

 私の様子を見て、シグマは言葉を掛けた。


「モテモテじゃん。”王子様” 」


「えぇー! 王子様なの!? かっこいいー!!」


 なんなんだ、魔族領は…………?

 王子と聞いても、変わらぬ態度。

 キルロンドとは……違う。


「取り敢えず、レオも体調悪くないみたいだし、このまま一度セノのところに連れて行く。他の二人も、体調が悪くなければ集まっているはずだ」


「他の二人……?」


「ソル・アトランジェとカナリア・アストレア。俺たちの目的は、キルロンドの将来有望株の三人を、この魔族領に連れてくること、だからな」


「二人は無事なのか……!」


「うん。お前と一緒」


 暫く歩くと、小さな教会が現れる。その外には、セノがニタリと笑みを浮かべて待っていた。


「魔族化の進行も上場……体調も良いみたいだね、レオくん」


「お前……セノ=リューク……!」


「ふふ、中に二人、先に待ってるよ。行こうか」


 私は小さく頷くと、中には険しい顔をした、ソルさんとカナリアさんが席に着いていた。


「レオ様……」


「ソルさん……カナリアさん……」


 少しの沈黙の後に、ソルさんが口火を切る。

 一番、魔族を嫌っていた人だからだ。


「僕は……この街を見て正直、戸惑った……。『魔物のように恐ろしい種族』だと思っていたからね。こんなに平和で、こんなに豊かな街に魔族が住んでいるだなんて、どこの本にも書いてはいなかった……」


「戦争の為の……洗脳…………。プレイバーゲームも、その内の一つで……私たちが争っていたのも……全て……」


「ハイハイ、先の見えない考察はそこまで。これからちゃんと、君たちには説明するからね」


 そんな考察が行き交う中で、セノはパンパンと掌を叩き、私たちの視線を集めた後、私たちに、本当の歴史、魔族がどう言う存在かを説明した。

 私は、既に街並みを見て、なんとなくの嫌な予想はできていたが、魔族に恨みの強い二人は、動揺を隠せない様子で、時折、涙を溢していた。


 そして、同時に知ることになる。

 俺たち三人は、元王族と呼ばれる人たちは皆、それぞれが魔族の子供たちなのだと。


「すまない……僕は……少し一人になりたい……」


「ソルさん……」


 そう言うと、ソルさんは静かに出て行ってしまった。

 カナリアさんも、何も言わず、終始涙を溢しながら、その場から立ち去って行った。


「やあ、レオくん。君は、これからどうする?」


 その問いに、私は直ぐには答えられなかった。

 早く帰還した方がいいのか。

 いや、そもそも期間なんて出来るのか?

 でも、そんなことよりも、私の脳内を駆け巡っているのは、この世界をこのままにしていて良いのか、と言うことばかりだった。


 夜間、再び、私は同じ病院のベッドに寝かされる。

 見張りなのか、シグマは静かに漫画本を読み漁り、私のベッド横の椅子に腰を掛けていた。


「なあ、シグマ……。お前は、どんな気持ちで、私たちキルロンド生たちの中に潜んでいたんだ……?」


「ああ、俺は口が軽いから、あんまり喋らないように気を遣ってたかなぁ。まあ、潜入自体は面白そうだったし、ルルリアも近くにいたし、常時避難できるようにしてあったからな」


「ルルリア=ミスティア……SHOWTIMEの中に紛れ込んでいた魔族だな……」


「そーそー。アイツも猪突猛進でバカだから、お姉さんの演技が楽しいとか言って、上手くやってたな〜。これがただの潜入だったら、バレてたかも」


「そんな危険を犯してでも……お前たちは潜入した」


 その言葉に、シグマは目を見開いた。


「そうだよ。やるしかないからね。俺たちが目指すのは真の世界平和。魔族が救われる道もそりゃあ目指したいけど、魔族だけが救われても……きっと意味がない」


 私は、グッと拳を握っていた。


「セノはやってくれるって信じてる。だから、俺たちはセノをリーダーに立ててる。アイツが決めたことなら、どんな難題でもやってみせる」


「私は……どうすればいいと思う……?」


「ふはっ! チーム組んでた時には一切、誰にも相談なんてしなかったのに! ウケる!!」


「チッ……お前に聞いた私が愚かだった」


「強くなれよ、レオ」


「…………?」


「お前たち三人は、魔族とキルロンドの因縁を変えられるかも知れないと思われて、セノに呼ばれたんだ。お前がここに来て何を感じたかは分からないけど、キルロンドを守るにせよ、セノに同意するにせよ、お前に必要なことは強くなることだろ?」

『お前みたいに威張ってる奴の言うことを聞かないとこの国にいちゃいけねぇなら、こっちから願い下げだ』

『公式戦でお前を潰す…………!!』

『じゃあ……俺はそれをぶっ倒す……!』


「ヒノト…………グレイマン…………。お前がいれば、きっと私たち三人がいなくても…………」


 そして、静かに起き上がり、黒髪が少しずつ伸びてきた髪をわしっと掴む。


「闇魔法……上等だ……。私は……強くなるぞ……!!」


「そーこなくっちゃ」


 翌日から、私はシグマと鍛錬することになる。

 少しずつ闇魔法を探り、自分のものにして行く。

 しかし、それには思った以上の集中力と、体力が吸い取られて行った。


「おーい、もうバテたのかよ〜、王様〜」


「クソッ……アイツ、キルロンドにいた時は力をセーブしてたのか……! もう一回だ!!」


「丁度いいや。レオさ、魔族学寮で鍛えなよ」


「魔族学寮……?」


「魔族軍の次代の兵士たちを育成する学校。まあ時間もないから、卒業の代に特別入学ってことで。そこで一番になれなきゃ、そもそもセノとは並べない……。お前の守りたいモンは、何一つ守れないし、俺たち現魔族軍の兵士たちには、遠く及ばねぇさ」


 私は、静かに頷いた。

 その晩、シグマから魔族学寮の資料が届いた。

 まるで、普通の学校のパンフレットのようだった。


『君も勇者を目指せる!』


 勇者を……目指す……。

 どこの国でも、敵をたくさん殺した者が勇者で、英雄と呼ばれる。

 その背景など……誰も知らない。


 私は……いや……俺は…………。

 もう、王なんて肩書はいらない…………!


 絶対に強くなって…………。

 俺が真の平和の上に立ち、その王になる…………!


 その日は、いつもより静かに、寝れたような気がした。

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