テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
夕方。
大学のカフェを出て、駅までの帰り道。
道が混んでいて、歩くのが少し大変。
ジョセフがぶつかりそうになった子供を咄嗟に避ける。
その拍子に、シーザーに手がふれる。
「あ、わりぃ。」
ジョセフは手を離そうとする。
しかしシーザーは、逆に手を絡ませてくる。
「…は?」
「転ぶと危ないだろ。」
ジョセフは少し顔が赤くなる。
「え、あ…そうだな。」
ジョセフは言葉に詰まった。
沈黙のまま、ふたりは歩き出す。
手は少しずつ、自然に握られていく。
周囲は普通に人が行き交うけど、ふたりの世界は静かで、少し緊張感がある。
「……こういうの、変だよな。」
ジョセフがようやく口を開く。
「変じゃあない。…自然な距離感だ。」
シーザーはサラリと言ってのける。
ジョセフが顔をさらに赤らめて苦笑いする。
「自然か〜?俺、心臓爆発しそうだぞ?」
シーザーは微かに笑うだけで、何も言わない。
でも手は繋いだまま。
駅までの短い道のり。
ふたりの間に言葉はいらない。
触れてるだけでも、十分伝わる距離感がある。
そして、駅に着くころ、ジョセフがぽつりと言った。
「またこういうのあるのかな。」
「ああ。」
シーザーはうなずく。
手を繋ぐ偶然は、次の約束にも、まだ見ぬ日常にも小さな希望を残す。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!