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翌朝。
キャンパスの中庭。
ジョセフは友だちと話しながら歩いているけど、頭の中は昨日の帰り道で手が触れた瞬間でいっぱい。
思い出して、顔が赤くなってきてしまう。
「おいジョセフ〜、いきなり顔赤くしてどうしたんだよ!」
「まさか好みの女いた!?どれどれ!」
「ちっげーよ!!そんなんじゃね〜から!」
なんとか他のことで気を紛らわそうとしても、さらに昨日のことを考えてしまう。
シーザーも同じだった。
誰もいない教室の窓際で、窓ガラスに映る自分の姿を見て、小さく息を吐く。
動揺と、微かな笑みが混ざった、なんとも言えない顔が映っていた。
「……手を繋いでしまった…半勢いで…」
授業の合間、偶然近くに座るふたり。
ジョセフが小声で、でも顔は背けながら聞く。
「……なぁ…昨日の…」
「…あぁ、特別なことではない。」
シーザーは眉を上げ、自然に言う。
でも、微妙に笑っている。
それに気づいたジョセフは、さらに顔を赤くする。
「と、特別じゃあないって、どういうことよン。心臓爆発しそうだったんだぜ!?」
シーザーは、冷静を装って肩をすくめる。
「…人間は、時に偶然で距離が縮まるものなんだぜ、ジョジョ。」
ジョセフは、頭を抱えて、でも笑ってしまう。
「偶然で距離が縮まる…とか言われると、もっとドキドキしちまうだろ!!」
それを聞いたシーザーは、ふっと笑ってしまう。
「なら、余計に悪くないだろう」
ふたり、顔を見合わせて、また手の距離を意識する。
触れることなく、でも、昨日と同じ気持ちが胸に残る。
周囲には何も分からない。
でも、ふたりだけは知っている。
昨日の偶然が、これからの日常に小さな魔法をかけたことを。
そして、授業が始まるベルが鳴って、ふたりは同時に手を引っこめる。
授業中、ふたりは隠れて手を繋ぐこともないし、言葉を交わすこともない。
でも、昨日と同じ距離感がずっと続いていた。