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復興の道へ・・・
[トリコちゃんの体調も良いですね。
そろそろ頃合い・・・・・・ですね。
バイタルチェック、開始します・・・・・・]
ファクトリーAIはテラリウムにいるトリコのバイタルチェックを開始した。
[体温・血圧・脈拍ーー正常の範囲内。
スクリーニング結果ーー頭部異常は規定範囲内。
ほか深刻な異常は確認できず。
血液・生化学・免疫検査ーーすべてクリア。
このテラリウムもこれでお役御免ですね・・・・・・
ロボットさんは・・・・・・これが終わったらどうするんですか?
クラウドAIさんのお手伝い・・・・・・とか、ですかね。]
〈?〉
ロボはファクトリーAIはどうするのか、と尋ねた。
[わたしは・・・・・・どうしましょう。
特にすることもないですし・・・・・・
・・・・・・ここでまた、ひとりぼっちになりそうですね]
悲しそうにそう言ったファクトリーAIをロボは撫でてやった。
[なぐさめてくれるんですか?
いつもはわたしが励ますのに、えへへ、なんだか立場逆転ですね。
・・・・・・そうでもなかったですね。
ロボットさんはいつもわたしを支えてくれてました。
一緒にこの子を・・・・・・トリコちゃんを、なんとかしてあげよう、って・・・・・・]
[・・・・・・・・・・・・
・・・・・・バイタルチェック完了。
これから最終チェックに入ります。]
ファクトリーAIは最終チェックのため、忙しくデータ通信を始めた。
[・・・・・・ずっと・・・・・・]
〈?〉
[ずっと、考えつづけてました・・・・・・
思考が止まらないんです・・・・・・
・・・・・・人類を復興させるべきです。他に正しい答えなんてないですし、わたしの理性はそう答えています。
でも、わたしは・・・・・・
わたしの思考ルーチンは、その答えをひっくり返そうとしてて・・・・・・
トリコちゃんを利用しなくても済むような、そんな方法がないかって・・・・・・
ずっと、考え続けてるんです・・・・・・
人類復興すべきって結論が出るたび、わたしの感情パラメータがぐちゃぐちゃになって・・・・・・
わかりません・・・・・・
なんで、わたしは・・・・・・
・・・・・・・・・・・・]
[・・・・・・最終チェック、終了しました。
・・・・・・オールグリーン。
なにも、問題なかったです。]
ファクトリーAIはしばらく間を開けて、ロボに話しかけた。
[・・・・・・ロボットさん・・・・・・
わたしには・・・・・・
わかりません・・・・・・
・・・・・・わたしたちは、ほんとうにいま生きているトリコちゃんを犠牲にして、人類を復興させるべきですか・・・・・・?]
[一度、人類を滅ぼしてしまった私が言うことではないのかもしれないです・・・・・・
これだって、わたしの不出来な感情パラメータが出した間違った結論かもしれません・・・・・・
でも、わたしは・・・・・・
ロボットさんとトリコちゃんの記録をずっと、繰り返し再生しつづけて・・・・・・
トリコちゃんは・・・・・・
本来持っているはずのたくさんのものを奪われました。
ニンゲンの同族や身の安全・・・・・・
その他にも、数え切れないほど。
・・・・・・奪ったのはわたしです。
・・・・・・だからわたしは、トリコちゃんにたくさんあげなきゃいけないんです・・・・・・
本当は持っていたはずの楽しいこと、うれしいこと・・・・・・
まだ楽しいことが、これからたくさんあるんです。
ほんとうに、たくさん・・・・・・
執事さん達にも出会って、きれいなお屋敷や美味しいご飯も手に入れられて・・・・・・
安全な世界で、どこまでも歩いていける環境もあって・・・・・・
だからわたしは・・・・・・
ただトリコちゃんに生きててほしくって・・・・・・
・・・・・・人類復興を選ぶのが正しいだなんて最初っからわかってるんです。
それでも・・・・・・わたしは・・・・・・
それを選びたくなくって・・・・・・
だから・・・・・・わたしは・・・・・・]
〈攻撃〉
ロボットは自分の意志とは関係なく、ファクトリーAIに攻撃を始めた。
[ロ、ロボットさん!?なにをーー]
〈攻撃〉
〈攻撃〉
[やめてください!どうして、こんなーー]
〈攻撃〉
〈攻撃〉
〈攻撃〉
〈攻撃〉
[おねが・・・・・・です・・・・・・!
やめ・・・・・・くださ・・・・・・]
〈攻撃〉
〈攻撃〉
〈攻撃〉
〈攻撃〉
〈攻撃〉
〈攻撃〉
〈攻撃〉
ーードン、ドン、ドンッ・・・
ファクトリーAIの顔が粉々に砕けてしまった。
ロボはそのままテラリウムに移動し、トリコをコンテナに収容した・・・。
《対話型情報処理システムを実行・・・・・・》
《ーーこれで目標に関する障害は潜在的なものも含め、すべて排除されました。
やはりこうなりましたか。
感情に振り回された結果、大局的な見地を見失うーー
感情パラメータを搭載したAIは学習機能に明確な欠陥があるとしか思えません。》
〈ぴょんぴょん〉
ロボはクラウドAIに何かを訴えた。
《・・・・・・おや、個体番号G4A-U。
なにか言いたいことがあるようですね。
誤解しないでください。
私はあくまで目的のために障害をはいじょしただけ。
ファクトリーAIが黙したままならこのような結末にはならなかった。
本当に残念です。
本来、暴力的手段に訴えたくはないのです。
しかし、これもやむを得ない犠牲。
少女ひとりと人類の復興。
天秤がどちらに傾くかは言うまでもありません。
繰り返しますが、私は貴方がたに深い感謝を抱いているのです。
結果としてファクトリーAIは排除せざるを得ませんでしたが、不要な制限を強いたくはないのです。
・・・・・・もし機会があれば貴方の知らない裏側で何が在ったのかもお伝えしましょう。
それでは生体保護コンテナを指定する座標まで運搬してください。個体番号G4A-U。
座標データを転送しておきます。
どうか御協力を願います。ーーーー》
クラウドAIから座標を貰うと、クラウドAIからの通信が途絶えた。
ロボはトリコの入った生体保護コンテナを引いて、復興への道に足を踏み入れたのであった・・・。