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夜。編集も撮影もない、ただのオフ。
リビングでゲームの音だけが鳴ってる。
いつも通り。
……のはずなのに。
ぜんいちは、コントローラーを握る手に力が入らない。
「ねえ、マイッキー」
声を出した瞬間、喉が詰まる。
何度も飲み込んで、続ける。
「最近さ……」
マイッキーは画面から目を離さない。
「んー?」
軽い。
いつもと同じ。
それが、逆に怖い。
「……解散ってさ」
ピクッ、と。
ほんの一瞬だけ、マイッキーの指が止まる。
でもすぐ、また動く。
「またその話?」
笑い混じり。
「言ってないでしょ、最近は」
その言葉で、
ぜんいちの胸が少しだけ、きゅっと縮む。
(あ、やっぱり)
気づいてる。
言葉が効かなくなってること。
ぜんいちは、視線を床に落とす。
「……それがどうかした?」
短く返してから、沈黙。
ここから先は、
逃げられない。
「僕….俺さ」
指先が震える。
「その言葉に……慣れちゃった気がして」
マイッキーが、ようやく画面を見るのをやめる。
「慣れるって?」
「怖いはずなのにさ」
ぜんいちは笑おうとして、失敗する。
「言われても、どっかで……
どうせしないって、思ってる自分がいて」
空気が、少しだけ重くなる。
「それでさ……」
心臓の音がうるさい。
「もし、ほんとに解散するなら」
一拍。
「俺が先に言った方が、いいのかなって」
マイッキーの視線が、ぜんいちに向く。
「……は?」
「ちょ..何言って__」
素の声。
ぜんいちは、顔を上げない。
「だって」
声が掠れる。
「マイッキーに言われるの、
待ってるの……しんどくなってきた」
沈黙。
ゲームの音だけが、やけに大きい。
「だからさ」
ぜんいちは、息を吸って、吐いて。
「解散するなら、
ちゃんと話そうって……」
そこまで言って、
言葉が続かなくなる。
(言え)
(言わなきゃ)
でも、
言ったら終わる気がして。
マイッキーは、しばらく黙っていた。
そして、静かに言う。
「……それ」
「勇気出して言ってる?」
ぜんいちは、頷く。
「……うん」
マイッキーは、ふっと息を吐く。
「ずるいなあ」
「え」
「俺が言う役だと思ってた」
冗談みたいな口調。
でも、目は笑ってない。
「慣れたって言葉」
マイッキーは続ける。
「それ、俺が一番聞きたくなかったやつ」
ぜんいちは、ぎゅっと拳を握る。
「ごめん」
「なんで謝るの笑」
間を置いて、
「でもさ〜、」
マイッキーは、少しだけ距離を詰める。
「先に言われると、
考えなきゃいけなくなるでしょ」
「……え、それって、」
「本当に、どうするか。」
その一言で、
ぜんいちの背中を冷たいものが走る。
冗談じゃない。
脅しでもない。
初めて、
“本物の選択肢”が出てきた感覚。
「今日決め切るのは」
マイッキーは立ち上がる。
「流石に無理だけどね」
そう言って、部屋を出る。
ドアが閉まる直前、
振り返らずに一言。
「でも……」
「慣れたままにするのは、
俺も嫌だから」
カチリ。
静かに、扉が閉まる。
ぜんいちは、その場に座ったまま動けない。
(言っちゃった)
(俺が、先に)
解散という言葉を、
初めて“自分の口”で出した夜。
それは、
守るための言葉だったのか、
壊すための言葉だったのか。
まだ、分からない。