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「あの二人を問い詰めた時、あまりにもあっけらかんとしてて。本当はいじめなんか、なかったんじゃないか。慎吾の気を引きたかっただけじゃないかとか……思って。最低だよね。私がやったことで、いじめを助長させてしまった。あんな酷いことされたなんて、知らなくて。本当にごめんなさい」 凛は深々と、頭を下げていた。
「……ううん。そう思われて当然。私、凛に何をされたのか聞かれていたのに感情ばっか話して、具体的に説明出来なかった……。今思い返すと、自分でも何言っているのか分からないぐらいに……。よくあの話で、……内藤さん達に話をしてくれたと思うぐらいだよ。凛からしたら、私はウザったい存在だったよね? 弱くて、ウジウジして、いつも誰かに守ってもらう。だから、いじめられて当然だった。……でも、どうしてこんな私をいつも守ってくれていたの?」
「五年生の時、私がクラスの女子からハブられていたの覚えてる?」
その話には俺だけでなく、翔もピクッと反応していた。
凛が?
「私、建前と本音を分けるとか出来ないからはっきり言ってしまって、一軍女子グループからムシられるようになったよね? そうしたらクラスのみんな、私から離れていった。だけど小春だけは、『凛ちゃんのはっきりした性格好きだ』って言ってくれて、私から離れなかった。そのせいで小春も女子からムシられたのに、何も言わなくて。あの時に決めたの。これから先、小春が困っていたら絶対に助ける。絶対に信じる。……なのに、…私は小春を疑った。最低だよね」
「だから、こんな鈍臭い私いつも守ってくれていたんだ。本心だよ。あの子達、表では笑い合っていたのに裏では居ない子の悪口ばかり言ってたんだよ? ……私も、か……。止めたかったけど、そうしたら私がより悪口を言われると思うと怖くて。だから陰口とかダサいって言い切った凛と、友達でいたいと思った」
「小春……」
凛は体格差がある小春を、包み込むように抱きしめる。
「小春、慎吾がしたことともう一度向き合ってもらえないかな? 確かに許せない気持ちは分かるし、不信感も出てくる。だけど慎吾なりに悩んだ末の決断だったと思うし、その一面だけで、相手の全てだと思うのも違う。一緒に過ごした四年間を思い出して、総合的に考えて欲しいの」
「凛……」
「慎吾の友達として、お願いしてるの」
凛は名前の通り、凛とした華のように美しく誇らしく微笑んだ。
ピッ、ピッ、ピッ。
「あ……」
時間というのは残酷で、とうとうきてしまった。
死の指輪のカウントダウンが。
「行こう、翔」
「凛……」
翔は握られた手を振り払おうとするが、凛がそれを阻む。
「これ以上、命が散る瞬間を二人に見せてはならないから」
「だけど!」
翔は何かを言おうと口を開けるが、そこに続く言葉が見つからないようで、ただ俯いてしまった。
「そう。どうせ生き残っても、私と小春は命を賭けた戦いをしなければならない。しかも散々傷付いた挙句、無様に負けるの……。今、華々しく散るか、一時間後に無惨に死ぬか。最期ぐらい、好きに選ばせてよ? ……これ以上、私を最低な人間にさせないでよ……」
翔の胸を借りて泣く姿はあまりにも自然で、二人が付き合い、共に過ごしてきただろう時間は確かにあったのだろう。
「……初めて、弱音を出してくれたな……」
「最期ぐらい、わがまま言ってもいいかなって」
それを聞いた翔は唇を強く噛み締め、凛の手を握った。
「走れるか?」
「陸上部員にヤボなこと聞くじゃない?」
#ご本人様には関係ありません
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「あ。それも、そっか」
眉を下げて、二人で顔を見合わせて笑う。
それはいつもの冗談を交わす光景で、あまりにも自然な笑顔だった。
「二人は……生きて」
その言葉を残し、翔と凛は風のように走り抜けて行った。
「待って!」
小春の手を引き追いかけるが、足が速すぎてすぐに見失ってしまった。
追いかけてどうするんだ? 翔を助ける方法なんてない。
凛は巻き込まないでくれと言うのか?
しかし三人を助けてくれるなんて、生優しいルールなんてないだろう。
俺は、小春と凛。どっちかを選ばないと迫られたら、どうするんだ?
そんなの……。
パァーン。
上の階より、聞き慣れた音が聞こえた。
それを、俺達は知っている。
「行ったらだめだ!」
音がした方に駆け出そうとした小春の手首を掴み、力強く抱き締める。
「だって……、だって。凛と翔が!」
「二人が俺達から離れてくれた……、気持ちを無駄にしては……だめだから……」
「……うっ、ああああああっ!」
夕陽に照らされる廊下。俺達は互いを強く抱きしめ合い、ただ叫んだ。
大切な友達が、命を散らした。
こんな理不尽なゲームによって。
確かに。翔がしたことも、凛がしたことも、許されないのかもしれない。
だけど人間は、やはり弱くて。
目の前に現れた、優しい人に縋ってしまうこともあって。時に、感情のまま動いてしまうこともあって。
間違えてしまうことがある。
だからって、たった一度の過ちが許されないのか?
死んで償わないといけないことだったのか?
二人が生きていたら、翔は凛の気持ちが落ち着くまで待っていただろうし、凛だって自分の弱みを見せられるのは翔だと気付いていたかもしれない。
小春が落としたスマホが光ると、そこには四人で写った待ち受け画面。
中学の時にあったスタンプラリーで道に迷った俺達は、記念写真でもへとへとで、そんな冴えない一枚。
だけどその時の話が一番に盛り上がり、「みんなで間違えたから仕方がない」で終わる会話。
誰かを責めたり、怒ったり。そんなことなく盛り上がる会話が心地良かった。いつも相手を気遣ってくれる二人は、大切な存在だった。
翔、凛。最期まで、優しい親友だった。