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校門に着くと、ぺこらがデカい声で絡んできた。
「おーい、まつり!遅いぺこ!また寝坊したやろ!」
「なに、ぺこら!ちゃんと起きたし!ほーっとけ!」
まつりは笑いながら返すけど、頭の奥で、さっきの夢がチラつく。 フブキの泣いとる顔。 ブレーキの音。 あの、嫌な予感。
教室に入ると、フブキが窓際の席に座っとった。 いつもみたいに、クラスのみんながフブキの周りに集まっとる。 笑顔で話すフブキ、ほんまにキラキラしとる。 まつりは、ちょっとだけ胸がチクッとした。
「おはよー、フブキ!」
まつりは、わざと明るく声かけた。 けど、フブキが顔を上げた瞬間、心臓がドクンって鳴った。
「…おはよ、まつりちゃん…」
フブキの声、かすれとる。目元、うっすら赤い。…夢と、同じや。
「え、フブキ、泣いとるん? どーしたのさ、話してみ?」
声、ちょっと震えた気がする。 嫌な汗が背中を伝う。
「飼ってた犬が…死んじゃったの…」
フブキが、唇を噛みしめて呟いた。 震える声。
夢の再生みたいに、全部同じ。
「そ、そーなん…」
まつりは、言葉につまった。 喉がカラカラや。 何やこれ。 なんで、夢のまんまなん。
その時、教室のドアがガラッと開いた。 スバルが、いつものドタバタした感じで入ってくる。
「おーっ、なんやこの空気!まつり、フブキちゃん、どないしたん? めっちゃ暗いやん!」
スバルの関西弁、いつも通り元気やけど、今日はなんか耳に残る。
「スバちゃん…なんでもないよ、ちょっと…」
フブキが無理やり笑顔作って答えた。 まつりは、黙ってフブキの横に立った。 胸の奥で、なんかモヤモヤが膨らむ。
スバルが、まつりの肩をポンと叩いた。
「まつり〜、なんやその顔! フブちゃんのこと、気ぃ使いすぎやろ! 話してみ?」
―― 彼女に、生きててほしいの?
ゾクッとした。 シオン… の声や。 夢の中で聞いた、あの小悪魔みたいな囁き。 まつりは思わず周りを見回したけど、シオンの姿なんてどこにもない。
「まつり? どしたん、ボーッとして?」
スバルが心配そうに覗き込んでくる。 まつりは慌てて笑顔作った。
「なんでもない! まじで、なんでもないって!」
けど、心臓がバクバクしとる。 フブキが席から立ち上がって、教室の外に出ていく。 まつりは、反射的にその後を追った。
校舎の裏、いつもの静かな場所。 フブキが、ポツンと立っとった。
「フブキ…ほんとに大丈夫そ?」
まつりは、そっと声かけた。
フブキが振り返った。 目、涙でキラキラしとる。
「まつりちゃん…ありがとう。いつもそばにいてくれて…でも、なんか、今日、胸がざわざわするの…」
その言葉に、まつりの胸が締めつけられた。 夢のブレーキ音が、頭の中でリピートする。
―― キキーッ!!
その音を思い出してはまつりは、思わずフブキの手を掴んだ。
「フブキ、今日は一緒に帰ろう!ね!絶対、離れんけん!」
フブキが、ちょっと驚いた顔で頷いた。
「うん…ありがと、まつりちゃん。」
けど、心のどこかで、別の自分が囁く。
――フブキさえ、いなけりゃ。