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プルルルルルル。 指先で、しおりんに折り返しの電話を送る。
彼女はすぐに応答してくれた。
『おーっす、まもっち』
「……おっす」
『む、まだ元気ないね』
「……そりゃあね」
『何があったかわかんないけど、僕怒ってるんだよ?』
「なんでさ?」
『だってせっかくのバレンタインだよ?今まで誰にもあげたことのないんだ、チョコを。
それを最愛の相手にバレンタイン処女を捧げたのに、嬉しそうに受け取って貰えなかったんだもん。せっかく君のために用意したってのにさ』
「……ごめん……」
通話越しに腰を90度曲げる。
『許すためには条件がある』
「何?」
『何があったか答えなさい』
「結構ショッキングな内容だぜ?」
『いいよ、受け止める覚悟はできてる』
俺は母から聞いたことや、桜花姉から伝えられたことを全て打ち明けた。
『まもっち』
「うん?」
『あんたバカァ!?』
「某有名アニメのヒロインみたいに言わないで貰えます?」
「けっけっけ、わ・ざ・と♡」
ったく、この子は……。
呆れながらも、この子のノリに助けられた気がして、クスッと口角が上がった気がした。
『とりあえず、僕からしてみたらくだらない。実にくだらない』
「なんでさ?」
『ご存知の通り、僕は元々20歳まで生きられないって言われてたんだよ?
けど、奇跡的に回復した。そして初恋の相手と再会して、僕は3人くらいが両手で抱えても零れてしまうくらいたくさんの幸せを与えられた。
それでたとえまもっちと付き合って、結婚して、幸せの絶頂で死んだとしても僕は本望さ。
それにさ、人間誰しもいつかは必ず死ぬ。
それが世の理。
先にあの世でまもっちが来るまで見守るさ』
「しおりん……」
『さぁ、僕は思いの丈を喋ったんだ。次はまもっちの番だよ』
「しおりん……俺は君のことが好きだ。たとえ短い間柄であろうと最期まで一緒にいたい」
『……………………』
押し黙る。
電話越しから、すすり泣く声が耳に届いた。
「ダメ……かな……?」
『この状況で普通そんな質問する?答えは決まってるよ。ただ歓喜回ってただけ。よろしく、僕の恋人。この命尽きるまで絶対離さないから』
「ありがとう。たとえ短くとも、隣にいてくれ。俺の恋人」
こうして俺たちは付き合うことになった。
翌日、病院に行き、改めてしおりんと顔を合わせる。
「…………………………」
「…………………………」
「電話越しだったから気兼ねなく話せたけど、こうして顔を合わせると緊張するね……」
「だな……」
二人、赤面したまま互いの顔を見ようとしない。
カチカチと時計の針の音がやけに大きく聞こえる。
ガチャ。
「紫音、今日の予定だけど……あら守君来てたのね」
「はい、お母さんに報告したいことがありまして」
「何かしら?」
「行け、まもっち!」
「この度、紫音さんとお付き合いさせていただくことになりました!」
「えっ……!?」
突然のカミングアウトに動揺しているのか、表情が驚いていた。
「守君」
「はい」
「娘をよろしくお願いいたします」
深々と頭を下げてもらった。
「こちらこそです」
俺もお辞儀を返した。
「次は誰に報告する?」
「桜花姉と蕾さんは今日バイト休みで、家にいるって言ってらから、一応あと1年はお世話になる眠子さんかな」
穏やかな風、咲き乱れる桜。
整備された歩道を車椅子で押して歩く。
「みんちかー」
「その呼び方やめい」
「それは名付けた作者に言って」
『報告したいことがあるので、どこかで会えませんか?』
メッセージアプリを送信する。
ヒュポ。
すぐに返信が来た。
『今、島の商店街にいます』
『待ってて貰えますか?』
『はい』
スマホをポケットにしまう。
「商店街にいるってさ、行こう」
「うん!」
眠子さんは律儀に商店街の入口で待っててくれていた。
「眠子さーん」
「みんちー」
二人で彼女を呼ぶ。
黄金色のウェーブのかかった髪が風に揺れてファサファサとなびいていた。
「お二人とも、ご無沙汰してます」
「ご無沙汰なんて程長い間会ってなかった訳じゃないでしょ」
「それで報告とは?」
「俺たち」
「僕たち」
「「付き合うことになりました」」
「そう、ですか。おめでとうございます」
ついしおりんとハモってしまった。
素っ気ない反応。
「あの、用事はそれだけですか?」
「はい、一応先輩ですし、残り1年生徒会でもお世話になります。それと、しおりんも入学するので一応と思いまして」
「わかりました。おめでとうございます」
「はい」
「では」
短く告げて去っていく眠子さん。
「いつもと雰囲気違ったね」
「あれはね、抑えてるんだよ。自分の感情を。一応まもっちに恋心抱いてたわけだし」
「マジ?」
「マジ」
「全然気づかなかった」
「だろうねー」
「正面からぶつかって行かないと、まもっち気づきそうにないもん」
「そっかー」
「ほらね、皮肉に気づいてない」
「皮肉だったの!?」
「そうだねー。次行こ」
『こんにちは、今どちらにいらっしゃいますか?』
蕾さんにメッセージを送る。
ヒュポ
すぐに返ってきた。
『今桜花ちゃん家にいるよ』
『すぐ帰宅するので、待ってて貰えますか?』
『もちろん』
スタンプが送られた。
「よし、家に行こう」
「いるって?」
「おう」
ガラッ
玄関のドアを開ける。
「ただいまー」
「おじゃましまーす」
しおりんを車椅子から降ろし、それが邪魔にならないように玄関脇に設置する。
「ゆっくりでいいよー」
「うむ、我のサポート頼むぞ」
しおりんは一応歩行器か誰かの手を借りれば、歩けるくらいにはなっていた。
ただ、今までほぼ自分の足で歩いていない彼女が、自身で歩ける距離はサポートがあっても限界がある。
「この段差はまだ高いなぁ」
「そっか、ほれ」
「キャ、もー!まもっちー」
お姫様抱っこをすると女の子のように軽い悲鳴をあげたのが可愛かった。
リビングのドアは開いていた。
「廊下でイチャついてたから、みんなに聞かせようと開けておきました」
むふーと桜花姉が無い胸をはる。
「大方の予想はついたけど、報告って?」
「俺たち」
「僕たち」
「「付き合うことになりました」」
「はいはいおめでとー」
「軽くない!?」
「だって見せつけられたらねー」
軽く呆れる桜花姉。
「そうだよ、おめでとう」
蕾さんは笑顔だ。
ただ無理をしているのだろう、手足が小刻みに震えていて、涙腺が今にも決壊しそうだ。
「希導よ」
「はい」
「お前の選択に否定はしない。あたいから言えることは、自分の選んだ相手は幸せにしてやれ」
美咲先生が告げる。
「帰るぞ、蕾。もう昼前だ。たまにはあたいが飯の準備をしてやる」
「うん」
足速に去る咲倉姉妹。
『うわああああああああん!!!』
玄関先で蕾さんの慟哭が轟いた。
「まもりん」
「うん?」
「紫音ちゃんと付き合うってことは、あの事は話したの?」
桜花姉の真剣な問。
ジッと俺の目を捉える。
「おうとも!バッチリ聞いたぜー!」
「そっか。でもいいの?せっかく繋がれた命なのに」
「いいよ、たとえ短い期間だとしても初恋で最愛の相手と一緒なら」
「そっか、ならあたしは何も言わない。お母さんは?」
「私はあるわ。おめでとう、2人とも」
「「ありがとうございます!」」
俺達はまたもや同時にお礼を言った。
この恋は相手を傷つけてしまったり、逆に祝福もされた。
大事にしたい。
朝露紫音という子を。
俺の最愛の相手を。
「うー、話に聞いてたけど、島の外は寒いねぇ」
「だから言ったろ?覚悟しておけって」
3月10日、俺としおりんは島を1度出て本土へとやってきていた。
ガラガラと車椅子を押しているのはいつも通り俺。
キャスケットをかぶり、桃色の髪をひと結びで纏めている。
来ているのは、北海道を除けば1番広い県だ。
その地にある、某大型ショッピングモールへとやって来ていた。
しおりんのお母さんは、2人きりのデートを邪魔する訳にはいかないと、同行していない。
3月といえば、察しの良い奴は気づくだろう。
というか、気づかない奴はいないだろう。
な?
まぁ、読者に圧をかけるのはここまでにしようか。
俺はしおりんを初めとして、たくさんの方からバレンタインデーにチョコを貰った。
そのお返しを求めてやって来ていた。
「桜花姉と伯母さんには缶のクッキーでいいか」
「みんちから聞いたよ〜?せっかく悩んで買ったチョコを嬉しそうに受け取ってくれなかったって」
しおりんと眠子さんは同い歳である。
しおりんはこの春から高校生で、眠子さんは3年生に上がるので、脳がバグるが。
「そうだな、だから最大限の気持ちを込めて返そう」
「いや待った」
「なに?」
ガラガラと車椅子を押しながら、お返しの品を選ぶ。
「恋人じゃない相手に最大限のお返しをしたら、僕へのお返しはどうなるの?」
「もちろんしおりんには限界突破のお返しをするさ」
「けっけっけ、何を要求しようかなぁ」
しまった、言葉の綾だったかもしれん。
「ま、まずはみんなのプレゼント選ぶぞ。しおりんの要求はその後だ」
「あとはつぼっちくらい?」
「そうだな。俺も手作りでお返し出来ればいいんだけど、俺は料理はからっきしだからな」
「考えてはあるの?」
「とりあえずゲーセンに行く」
「なーる」
エレベーターで2階のゲーセンへ。
「お、これなんてどう?」
しおりんが示した先にはクレーンゲームの景品だ。
全2種で、甘蜜のレイサとアレックスが互いに銃を向けているシーンだ。
「とりあえず、つぼっちにはレイサ。僕にはアレックスね」
「なんでさ?どうせなら両方取ろうぜ」
「いんや、このシーンはレイサがスパイだって発覚してお互いが対峙してるシーンでしょ?僕とつぼっちは友達同士だったけど、同じ相手を好きになって互いに銃を向ける。最高じゃない?」
「まぁ、一理あるかも」
「だから我が彼氏よ!栄一が何人吹き飛ぼうとも気合いで2つ取るのだ!」
聞いてくれなかった
10分後
「まさか1000円ちょっとで取るとは……」
「ふっ、経験さ」
「まさかのやり手だったか」
ぷくーと頬を膨らませる。
「可愛い」
「バカにするな!」
思わず漏れた言葉で絶叫する。
「せっかく万札吹き飛ばして泣いてるところを、笑ってやろうと思ったんだけどなぁ」
「悪魔かお前は」
「僕は神にも悪魔にもなれるからね」
「はいはい。スーパーロボット談議はまた後でやろうぜ」
「ところでまもっちよ」
しおりんがゲーセンの隣の店を指す。
「うん?」
「隣にトイ〇らスがあるじゃろ?」
「そこまで要求するのか……」
「けっけっけ、1000円で満足すると思ったか、この馬鹿彼がぁぁ!」
「師匠の言葉じゃあ従うしかないな」
はぁとため息。
「けっけっけ、実はプラモ作ってみたかったんだー」
「じゃあ、RGのZガ〇ダムな」
「それ地雷キットでしょ?」
「じゃあ、RGシナ〇ジュ」
「それも地雷」
「じゃあ、HGトリ〇タン」
「それも地雷。僕のこと馬鹿にしてる?」
「あっはっはっは!」
笑い飛ばして誤魔化す。
さっき1万飛ばして笑ってやるのお返しだ。
「おっ、Ξガン〇ムあるぞ」
「初心者にそんなデカイもん作らせるの?」
若干、いやかなり引いていた。
「無難にこれでいいよ」
しおりんが選んだのはEGガ〇ダム。
「これでいいのか?」
「もちろん」
「了解」
本人がいいって言うならいっか。
「それじゃあ、これも買うか」
俺はニッパーやヤスリ、ピンセットといった初心者道具セットを手に取る。
「EGって道具不要なんでしょ?」
「そうなんだけど、バリが残るし、ツノみたいに繊細なパーツだと、折れちゃったりするから、持ってたら便利よ」
「ほうほう、なるほど。さてはお主、作り慣れてるな?」
「パチ組程度だけどね」
「今度作品見せてよ」
「人に見せられる程上手くは無いぜ?」
「それでもいいんだよ」
彼女は小さく笑った。
「お腹すいたぁー」
しおりんの言葉でスマホを取りだし、利き腕である右手で操作し時間をチェック。
もう昼回ってるな。
「何をご所望されますか?」
「うむ、余はハンバーガーが食べたい」
「かしこまりました」
エレベーターで3階へ。
迷わず、フードコートへ直行。
カレー、ラーメン、たこ焼き、うどん。様々な店が客を迎えていた。
とりあえず、ハンバーガーショップへ。
「何食べる?」
「このでかいヤツ!」
目を輝かせて食べにくいやつを食べたいと申すか。
「これ、めちゃくちゃ食いずらいぞ」
「いいのいいの!」
嘆息しつつセルフオーダーで注文。
俺たちの番号を呼ばれて商品を受け取る。俺が注文したバーガーセット2人分を片手で持つ。
しおりんは、両手でタイヤを操作し、二人で空いてる席を探すが、車椅子で座れそうな場所が見つからない。
「くるまいすのおねえちゃん!」
背後から幼い声。
振り向くと、小さな女の子が席をズラしていた。
「ここどうぞ!」
俺達は顔を見合わせる。
「「ありがとう」」
その子にお礼をいい。二人で昼食を食べた。
その女の子は、偉いねーと親に頭を撫でてもらっていた。
「あの子、将来いい子になるよ」
「だな」
「んあー!具材が崩れるー!手が汚れるー!」
「だから言ったろ……」
「まもっち計ったなー!」
「ご自分でご所望されましたでしょ……」
呆れつつもティッシュで汚れた手を拭ってやった。
「しっかし、あれだねー。桜が咲いてないって不思議な感覚だ」
昼食後、俺達はショッピングモールを出て、バスに乗り、駅周辺まで来ていた。
「俺からしてみたら、桜が一年中咲き続ける方が不思議だけど。この辺だと、4月頃から咲き始めるからな」
ガラガラと車椅子を押す。
「すいませーん、後ろ通りまーす」
時折、ほかの通行人に声をかけつつ道を開けてもらう。
「そんで散って緑の葉が生い茂って秋には赤やら黄色やらの葉が咲くわけでしょ」
「そうだな」
「夏と秋にさ、また来ようよ」
「いいぞ」
「ありがとう、守」
突然の名呼びでびっくりしたが、俺も返した。
「こちらこそな、紫音」
「うむ、老い先短い相手の希望を叶えてくれるのはいいことだ」
「まだ老いてないだろ……」
「てったって、このまま付き合ったてたらすぐ死ぬ運命でしょ?」
「まぁ、そうだな」
「だからさ、できるだけ僕の要望聞いてね」
「叶えられる範囲でな」
俺達は笑いあって、これからの約束をした。
「本当にありがとう。守」
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