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「自分自身を心から愛せるようになるまでは、
間違えた人を愛してしまうと思う。」
-エマ・ワトソン
窓から差す日差しで目が覚める。どれだけ心が軽くなっても、朝の気だるさはとどまることを知らない。おぼつかない足取りでリビングに向かう、しぱしぱとしたうつろな目で朝食の準備を始める。しばらくして身支度を済ませるとスマホに通知が届いている、京蔵だ。
【昨日はすまん、奢りさんきゅ。お前からの借り1な】
貸し借りとか考えたことはあまりなかったが、京蔵はそういう細かいことをいちいち覚えるやつだ。以前はただ日常的なメッセージの通達にしか感じなかった通知が、今では子供がレストランで品が届くのを楽しみ待つかのような、高揚感で心包まれるものに変わっている。
「…学校いこ。」
「京蔵おはよ。」
「ん。あぁ、はよ」
「……」
気まずくないとは言っても、何を話せばいいのかわからない。俺が勝手に話しずらいと思ってるだけで、京蔵にとってはいつもの日常にすぎない。俺だけが非日常なだけ。
京蔵に気づかれないように顔を見る、横顔のライン。猫目と言うべきか、強気に少し吊り上がっている目尻。歩くたびに揺れる横髪は心の奥でなにかぐっとそそられるようなものがあった。俺は普通に女の子の仕草とかにドキッとすることもあったし、…もちろん性的に感じることだって何度かある。多分だけど俺が京蔵を好きになったのは男だからとか女だからとかじゃなくて、「京蔵が」好きなんだと思う。だから京蔵が女の子でもきっと俺は京蔵のことを好きになる。
恥ずかしくて遠回りで思考を巡らせていたが、全然京蔵のことを抱けると思っている。元々人との距離感は近くても平気なタイプだし、ハグとかも抵抗はない、むしろ女の子の方がドキドキして悪い意味ではない抵抗がある。
「何ジロジロ見てんだよ」
「ん⁈え〜となんかちょっと髪型違う気がして…」
「お前よぉ今更かよ、こちとら毎日変えてんだよ。まぁお前はファッションとか興味ねぇのは知ってたけど、顔と体格は申し分ねぇんだからもっと気を使えよ。モテる気ねぇ風を装って女子の注意引こうってぇことかよ」
「そんなことないって。」
「いーや!お前なんか隠してるな?ダチに隠し事とは許せねぇよなぁ?」
…一瞬冷や汗をかいたが許せないと言うことに関しては京蔵も直前まで俺に告白することを言ってなかったから同罪ではと思った。
そんな話を繰り広げている間に、校舎がいつのまにか見えてきた。俺の中で今日の会話は酷く、狂おしく、大切な思い出になった気がする。
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