俺は榎煉。生徒会長に立候補することになった芽依の彼氏だ。ここ最近は学校へ行くことが多くなったが周りの生徒からは嫌われ者扱いだ。そりゃそうだ。裏で喧嘩ばかりの俺にくっついてくるやつなんて,芽依ぐらいしかいねぇんだから。
「榎煉…ほんとに出来るの?みんなの前で演説なんて。」
「大丈夫だろ。」
芽依が何故こんなにも俺を心配するのか。それはそう。嫌われ者が善良(?)生徒の演説をすると大ブーイングが発生するからだ。過去に一度それが起きたことがある。でも今回は一味違う。
「じゃぁ,明日までに考えてきてね。」
絶対に芽依が生徒会長になるために,良い文を作ってきてやる。
ー次の日ー
「できた?」
「バッチリ。」
だが,ここで芽依に見せるのは勿体ない。当日まで見せないよう,先生に提出してやろうか。
「何,見せてよ。変なこと書いてないかチェックしないと。」
「無理。」
「早く。」
「嫌。」
意地でも見せるもんか。だから俺は逃げる!生徒会担当の先生がいる場所まで!
だから俺は捕まるわけにはいかない。本気で逃げなくたって芽依は走るのが苦手だ。俺とちが___
誰かとぶつかってしまった。しまった。きちんと前を見ないからこうなるんだ。
「ってぇ…すまん。」
「ふん,だから黒川,貴方はいつまでたっても嫌われ者なんだよ。」
如何にも優等生な黒髪眼鏡だった。こいつは確か去年転校してきたウザ眼鏡…いや,歩く辞典…いや,違う。
「名前何だっけ。」
「東勉(あずまつとむ)だよ!いい加減覚えろ不良!」
そうだ,そんな名前だった。演説用の紙を抱えているこいつは芽依のライバル…徹底的に潰さなくては。
「まぁ,演説頑張りなよwその頭でね。」
本当に鬱陶しい奴だ。
ー更に数日後ー
いよいよ演説日になった。芽依には演説用紙をまだ見られてはいない。まぁ,そんな恥ずかしい内容ではない。芽依の良いところを詰め込んだだけだ。
「では,生徒会長に立候補した鈴木芽依の応援弁士による演説です。」
「はい,生徒会長に立候補した鈴木芽依の応援弁士を務めます3-1の黒川榎煉です。」
体育館にいる生徒がざわつきだした。
「鈴木さんは頭が悪く,運動ができないおっちょこちょいです。しかし,人に対する態度は私とは全く違い,聖女そのものです。英語の点数は毎回赤点,数学なんてみじんもできない。そんな人が人を助けるとき,萌えますよね。」
またざわつく。どうだ,これで芽依の可愛さがよくわかっただろう。
「…以上で演説を終わります。」
お礼をし,壇上から降りた。芽依はありがとうと言わんばかりの目で俺を見ている。その視線がすごくうれしい。
その後,俺はなぜか芽依に怒られる羽目になった。
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