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「き、気にしますよ。祐誠さんがそんな人達のパーティに呼ばれたとして、パートナーが私みたいな地味な女だったら、みんなびっくりしますよ」
「雫は地味な女なんかじゃない。すごく魅力的だ」
「そんなこと……ないです。私は……地味ですよ……だからフラれてしまうんです」
「こんな美しい人をフル男がこの世にいることが信じられない。でも、もし……君が自分をそう思ってしまうなら……最高のドレスを用意しよう。この体にピッタリ合うセクシーなドレスを。そしたら、俺の周りの男はみんな君に釘付けになる」
顔から火が出そうだった。
「そ、そんなわけないです。誰も私のことなど気にしません。せっかく用意してもらっても、ド、ドレスに負けてしまいます」
「雫の体ならどんなドレスにも負けない。これから俺の彼女として、そういう場に君を連れていくのが楽しみだ。他の男がどんなに君を欲しがっても、絶対に誰にも渡さない。この顔も体も……この優しい心も……全部俺のもの」
真っ直ぐ私を見つめる瞳にクラクラしそうになる。
「わ、私……祐誠さんにそんな風に言ってもらえるほどいい女じゃないです。本当に……あなたとでは……住む世界が違い過ぎて」
「なぜそこまで自分を卑下するんだ。雫はこんなに素敵なのに。俺は普通の人間。たまたま会社の社長だったっていうだけ。それに見た目で言うなら、俺と君はかなり『お似合い』だと思うけど?」
「ま、まさか!」
祐誠さんと私が「お似合い」だなんて、とんでもないよ。
「とにかく俺と雫はもう離れられない。ずっと一緒だ。だから……」
祐誠さんはほんの少しだけ間を置いて、そして……言った。
「これからは2人でここに住もう。そしたら、ずっと一緒にいられる。パンの配達もしなくていい」
突然の申し出に、私は驚きを隠せなかった。
「そんなこと……」
「もう決めたから。これは決定事項、覆せない。この世の中で1番美しい人、愛しい人と、俺はいつも一緒にいたいんだ」
祐誠さん、いつだって強引だよ。
正直、嘘みたいな展開に着いていけなくて、まだ全然信じられない。
これは、夢じゃないんだよね?
目の前の祐誠さんに、私は告白されたんだよね?
体を許して、そして……「付き合って」って言われたんだよね?
おまけに一緒に住もうとまで――
こんなシンデレラストーリーが現実にあるのか、本当に私の身に起こってることなのか、頭の中で整理しようとしても、やっぱりまだ夢心地で。
「私、祐誠さんの胸に……素直に飛び込んでもいいんでしょうか?」
「もちろんだ」
「……ずっと一緒にいてもいいですか?」
その言葉に、祐誠さんはニコッと微笑んでうなづいた。
「今週中にここにおいで。全て、俺に任せて」
心強くて、頼り甲斐があって、寄り添いたくなるような言葉。
まだいろいろ不安はあるけど、とにかく私はこの人の言う通りにしようと思った。
それから、祐誠さんは引越しのことから、何から何まであっという間に進めてくれて。
私は夢みたいな幸せ過ぎる展開に胸を踊らせ、立派で素敵なマンションでの2人だけの生活が始まった。
残念がったのは前田さん。
毎週月曜日のパンの配達がなくなって、ショックだったみたい。
でも、そのおかげで仕事がない時に『杏』に通うようになってくれて、祐誠さんの代わりに前田さんが来るようになったって、みんなが噂してた。
私達を見守ってくれてたあんこさんも、前田さんも……2人の同居を知って、誰よりも本気で喜んでくれたんだ。