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「おはよう」
「慧君、おはよう。いつも配達ありがとう」
「ここに置いてくね」
小麦粉を定位置に置いてから、慧君は意味ありげな表情で私を見た。
「どうか……した?」
「いや、あのさ。近々、一緒にご飯行けたらって……」
「あっ、そうだよね。イベント終わったらって言ってたもんね」
「うん」
「ねえ、慧君。ごめん、今夜電話できる?」
「大丈夫。じゃあ……夜に」
慧君は、不安げな顔をして出ていった。
「大丈夫? 雫ちゃん」
「あんこさん……」
「ごめんね、聞こえちゃったから。慧君の気持ち、痛いほどわかるからつらいけど、でも……」
「今夜、言います。祐誠さんとのこと……」
「そっか……うん。気持ち、しっかり持ってね。慧君ならわかってくれる。何よりも雫ちゃんの幸せを1番に考えてる人だから」
あんこさんの励まし、すごく有難かった。
「慧君は優しいから、いつだってわがままも言わずに……」
自分よりも他人のことばっかり心配して……
「あの子なら大丈夫。しばらくはつらくても、絶対に前を向いていける。私も東堂社長もついてるし、もちろん、あの子の心にはずっと雫ちゃんがいる。それだけで頑張っていける男だから。いい男だよ、本当に」
あんこさんは、私の肩を叩いて微笑んだ。
穏やかで物静かな慧君。
そんな彼に、私はいつも助けられてきた。
でも、言わなきゃね……
私の想い、私の……答えを。
「雫ちゃんに引越し祝いしなくちゃね」
「引越しのお祝いなんてそんなのいいですよ。あっ、じゃあ、もし良かったら、引越しパンを焼いて下さい。祐誠さんも喜びます」
引越しそばの代わりに「引越しパン」。
「任しといて! そしたら、めっちゃ美味しいのん期待しといてや~」
「いいですね~めっちゃ期待しときます~」
「あはは~雫ちゃん、ほんま可愛いなぁ。社長さんが惚れるのわかるわ~」
関西弁で言われて、ちょっと照れた。
「か、可愛くないですよ、私。お化粧とかもあんまり上手くないし」
今までメイクとかもちゃんと勉強したことなかったから、今になってちょっと後悔。
「化粧なんて関係ないよ。雫ちゃんはナチュラルメイクで好感持てる。可愛い……美人……どっちとも取れる感じがいいんだよね~」
私の顔をマジマジと見ながら言った。
「止めて下さい、恥ずかしいです。可愛いとか、美人だとか、私には縁のない話ですから」
本気で恥ずかしい。
「何言ってるの、雫ちゃん。もっと自分に自信持ちな。そろそろトラウマも完全に捨ててしまってさ。榊社長さん、慧君、そして希良君。あんなイケメン達に好かれてるんだよ。私だったら思いっきり自慢しちゃうなぁ~」