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その日菊田と梅原は連絡先を交換して別れました。
梅原は別れ際、二日後までに一本ネタを作ってこいと言いました。
菊田は、家に着いた途端にネタ帳を開きました。
天才梅原にこの菊田の実力をわからせてやる。そう言う心持ちでした。
ニ日後、菊田は劇場の楽屋に人のいない時間を狙って梅原にネタ帳を見せました。梅原が開くとネタ帳には、何重にも台詞を消した後がありました。
「まぁ、長いな。これ言いたいんやろうなーって言う台詞が丸分かりやし。」
菊田は開いた口が塞がりませんでした。一言梅原に言ってやりたかったですが、梅原に見捨てられてしまっては劇場に立つことも叶わなくなってしまいます。菊田は口の奥の方を噛んで我慢しました。
「分かってないな。このツッコミもそらそうやろでええよ。」
梅原は菊田を置き去りにしてネタを添削し続けました。
「こんな大袈裟なツッコミ意味ないわ。今更お前アホなんって誰も使ってないで。」
菊田は我慢ならず梅原に口を出しました。
「ならお前がネタ書いたらええやん。」
梅原は台詞を変えながら言いました。
「俺は1を100にするのが得意やねん。ネタはあんまり書きたくないな。だからお前が書いてる方でよかったわ。あ、ここもいらんな。」
それ以降菊田は黙って梅原による添削を眺めていました。
「はい、まぁ大体いいんちゃう。今回は話の筋は変えやんかったけど、コンビニ店員のネタなんて腐るほどあるから書かん方がええで。」
菊田は生まれて初めて、自分の中に流れている血を意識しました。完成したネタは、もはや菊田の書いたものではありません。それにその時、菊田にはこのネタが面白いとはどうしても思えなかったのです。梅原がネタを読んで笑うことはありませんでした。
「明日劇場でこのネタやるで。」
それだけいうと梅原は菊田を置き去りにして、舞台袖に漫才を見に行きました。
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