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第8話 失敗
「アルカンジュ!」タムチャが驚いたような目をして口を開いた。タムチャの目の前にいたのは第2階級 リーダー ウォンツ・バルズだ。
「感服致しました、ですがそれもそこで終わりです」といつの間にかタムチャの後ろへといて、手を肩にそっと乗せていた。
「!?」タムチャは避けようと思い、体を動かそうとすればウォンツの”どうぞ”という一言でデリットの方へと吹き飛び共に壁へと追突する。
「私から離れたかったんでしょう、分かっています」そして神槍を取り出しこちらに向ける。これはただの槍では無い、悪魔の内部に入り込めばたちまち刺さった部位が壊れるという物だ。デリットとタムチャはハッとした様子で手を止めれば、神槍を手にしたウォンツは瞬間移動でコチラまで向かってきてデリットの後ろに立つ、後に無言のまま槍を構えては刃を振るうだろう。その様子を見てタムチャは苦笑いをうかべながらモーニングスターを構えてデリットの前に立ち、繋ぎ目の鎖で槍を抑える。
「タムチャ!」
「うるさい!あんたが死なれるとここの門が通れなくなるから守ってあげてるだけ!勘違いしないで、早くしなさい堕天使!!」
その言葉を聞いて「優しいね、タムチャ」と言い放ち扉の前に立つ、ウィングはその様子を見てタムチャの腹部を蹴り飛ばし、向かいの壁へと打ち当てる。地面に這いつくばったタムチャは身を震わせながら起き上がろうともがく。
その背後では槍を構えてデリットを打とうとするウィングの姿があった。再び足首に魔法陣を展開し、移動速度をはね上げればウィングに向かって飛ぶ、モーニングスターを振ればウィングは吹き飛び、地面に倒れ込むだろう。足首の魔法陣を解いて手のひらへと展開する。そして追い打ちをかけようと手を振りあげれば、倒れたウィングがすぐさま槍を持ち直しタムチャの手元へ向けて投げる。タムチャは反応が遅くなり、槍は手のひらを貫こうとした時
「全く、キミはいつでも無鉄砲に敵に突っ込む、そういうトコロだ、タムチャ」という言葉が聞こえると紫色の球体がタムチャを包み、槍を通さなくなる。これは結界だろうか
「これって、、!」タムチャの体は段々と傷が癒えてくる。球体の中は魔力があり、悪魔の栄養分として体の中に蓄積されると傷が治る、そういう仕組みだ。
「ミューズ!」と球体の後ろからどこから、どう現れたのか、その姿を生す。
「アルカンジュ、第2階級 リーダー ウィング・バルズか、厄介なものを呼び寄せたものだ」
「私の事をご存知で?」槍を持ち直しその場で立ち上がる。
第3階級 リーダー ミューズ、彼はその質問に対して軽く頷き
「ワタシに知らない事はないに等しい」と一言応え、ミューズは後ろにフォレストを展開しデリットとタムチャに拘束魔法をかけ、身体の周りで浮いていた手で2人をフォレストの中へと投げ入れる
「一旦ここでお暇させてもらいましょう。ではまたイツカ。」と、共にフォレストの中に入る。するとフォレストは閉じ、そこは本などの残骸しか残らなかった
「騒がしい悪魔たち、もう少し静かに過ごせないものかしら」
︎✧︎✧︎✧
フォレストが食堂の扉の前で開く、そこからは拘束されたデリットとタムチャがミューズに首根っこを掴まれながら出てくるだろう。
「戻ったよ、グランシェオラ」
と、地面に2人を乱暴に下ろしてデリットとタムチャはその場で膝を着く。
正面には椅子に腰をかけワインを飲んでるグランシェオラと読書を行うジュゴンの姿、そして第7階級リーダー リヴィ・ウバウネの姿があった。
「お疲れだな、タムチャとデリット」横にいた中級悪魔が持ったお盆の上にグラスを置く。
「グラン、違うの!これは突然現れた2階級アルカンジュのせいなの!」タムチャは開口一番言い訳を並べる。グランシェオラの表情は穏やかだ、だがこのオーラからして確実に怒ってるだろう。
タムチャは軽く身を震わせ、怖気付いていた。あの陽気ないつもの彼女とは変わって。
その様子を見た正面にいた3人は冷めた視線を2人に向ける。
「今回の事はもっと穏便に行動するべきだったはずだ。特にアルカンジュの野郎にはバレてはいけなかった」グランシェオラは席から立ち上がりデリットの方へ向かう。正面に立てば床に着いた手に靴の踵で勢いよく押し乗る。
「天使どもの情報は我々悪魔にとって、奴らを滅ぼすために必要なものだ。それを貴様らは取りこぼし挙句アルカンジュにバレた」
「それがどういうことか分かるよなぁ?」踵で思い切り踏まれた手の骨はミシミシと悲鳴をあげる。そしてデリットの悲痛な声がこの食堂に響くだろう
「あぁ”ああぁ”!!…”」
共にグランシェオラはタムチャの方を向いた
「お前もだぞタムチャ、貴様がいながらこの結果は到底許されないからな」
「…わかってるわ」とタムチャはそのまま立ち上がり、扉へ足を進めていけば扉を開け、食堂を後にする。
「はは…ッ変わらずタムチャには甘いなぁ、グランは」デリットは苦笑いを浮かべればピクピクと痙攣を起こした指先を見つめる。グランシェオラは足を離し、席に腰を下ろす。そして一言”下がれ”と命令を下した。デリットはそれに素直に従い、踏まれた手に軽く指先を添えながら「はいはい、仰せのままに」と皮肉混じりに言葉を返しそのまま食堂を後にした。
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