テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
43
1,140
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
俺が冬馬と初めて会ったのは、大学3年の春の事。まぁ、会ったと言うより、俺が一方的に冬馬を見ただけなんだけど。俺はあの日、食堂で飯を食ってた。そんな時、近くで食べてた女子達の会話がたまたま聞こえて来たんだよな。
「ねぇ、あの人かっこよくない?めっちゃタイプなんだけど」
「あ〜。あれ、佐野冬馬だよ。2年の」
「2年生?あんなイケメンいたんだ。連絡先でも聞いて来ようかな〜」
「やめときなよ。あの人、遊び人らしいよ。まぁ、それでもモテるらしいけど」
俺は思わず視線を向けた。
──遊び人?
確かに顔はイケメンだし、如何にも″モテそう″って感じだ。
でも、だからって遊び人になるとか、理解できない。
そんな奴にしっぽ振るなんて、みんなバカだな。
その時は知らなかった。
まさか俺もそんな遊び人に落ちるなんてな。
それから2日、いや、3日が経った頃かな。食堂で飯食ってたら見かけたんだ。少し離れた向かいの席で飯食ってる冬馬を。俺は何となく冬馬の事を見てたんだ。そしたら冬馬と目が合った。すぐに目を逸らしたんだけど、なんかまた見ちゃって。そのまま見続けてたんだよ。何故か目が離せなくて。そしたらアイツ、なんか急に立ち上がって。それでさすがに見るのやめたんだけど、なんかこっち来てる気がするんだよ。飯が乗ったトレー持ちながら。俺は焦ったけど、「違うだろ」って心の中で思ってた。なのに。
「隣、いいですか?」
まさかと思って見たら、冬馬が立ってたんだ。真横に。
「お断りします」
なんて言ってニコッて笑ってやった。遊び人なんかと関わりたくないし。絶対しっぽなんて振らねぇし。
なんて思ってたら、トレー置いて椅子引きながら言うんだよ。「ありがとうございます」って。そんでそのまま座ったんだ。俺の隣に。
──は?
何コイツ。普通に隣座ってきたんだけど。どういう神経してんの。遊び人とはいえ常識とか無いわけ?
そんなこと思いながらもなんかもうめんどくさいし、そのまま飯食う事にしたんだよ。そしたらさ。
「俺、佐野冬馬って言います。2年の」
なんて自己紹介し始めて、正直ビビった。俺は無視した。
「お兄さんの名前は?」
って聞かれたけど、俺は無視した。遊び人なんかに名前教えたくないし。
「学年だけでも教えてくれません?」
これも無視。
「他の人に聞いてみようかな。大声で」
なんて言い出したけど、俺はそんな誘いなんかには乗らない。本当にやると思えないし。
そう思ってたのに、冬馬は大声で言ったんだ。
「あの〜、この人…」
俺は咄嗟に冬馬の口を両手で塞いだ。やめろ。目立つのは好きじゃないんだ。
「やめろバカ。3年だよ3年」
俺はそう言って冬馬の口から手を離した。そしたら冬馬は満足そうに笑ってた。ムカつく。まんまと乗せられた自分が恥ずかしい。
「ついでに名前も教えてくれません?」
そう言ったけど無視した。名前まで教える訳にはいかない。
「教えてくれないんですね。じゃあさっきみたいに…」
「大和だよ。橘大和」
咄嗟にそう言ってしまった。また乗せられた。しかも同じような方法で。
冬馬はまた満足そうに笑ってる。
「大和先輩、ですね」
「もういいだろ。話しかけてくんな」
「無理です。俺、大和先輩の事気に入ったので」
──気に入った?
なんでちょっと偉そうなんだよ。大体気に入ったってなんだ。まさか俺、狙われてんのか?遊び人に?
「そんなん知らねぇよ。俺はお前に興味無いんだよ」
そう言ったら、何故か嬉しそうに笑ってた。
「じゃあ、大和先輩が俺に興味持ってくれるように頑張りますね」
なんて言ってニコって笑った。不覚にも一瞬、ドキッとした。危ない。遊び人に落ちるとか、絶対ありえない。
少なくともこの時はそう思ってた。
次の日から冬馬は毎日のように話しかけてくるようになった。俺が食堂で飯食ってる時を狙って。毎日毎日。
最初はうっとおしいと思ってたのに、気付いたら密かに来るの待ってるようになっちまった。
だって、遊び人の割には俺に一途だったから。
いつだったか忘れたけど、誰かに聞かれたんだ。
「なんでそんなに気に入られてるの?」
「知らないよ。冬馬から声掛けてきたし」
「へぇ〜。冬馬が自分から声かけるなんて珍しいね」
「珍しいの?誰にでもホイホイ声掛けてそうじゃん」
「ううん。冬馬は自分から声掛けないよ。ちょっと変わった遊び人だよね」
その話を聞いてからだ。冬馬の事、気になり始めたのは。
冬馬が向けてくれる笑顔。冬馬がくれる言葉。俺に触れる手。全部が頭に残って、冬馬の事ばっかりになった。
そう。俺は完全に落ちたんだ。冬馬に。
いつだったかな。俺の家に冬馬が来た時、俺は冬馬をベットに押し倒した。俺だって男だ。そういう事くらいしたい。冬馬は抵抗しなかった。だから俺は冬馬にキスをした。そしたら冬馬が言ったんだ。
「急にどうしたんですか?」
「別に。なんかムラついてるだけ」
「へぇ〜。もしかして、俺の事好きになってくれたんですか?」
「そうだな。だから責任取れよ。遊び人」
「いいですよ。ほら、好きに抱いてくださいよ。大和先輩」
なんて甘えた顔で言いやがった。正直反則だろ。こんなの。だから抱いてやった。愛おしくて仕方ない冬馬を。
それから俺達はそういう事をよくするようになった。大体俺から仕掛けるんだけど、たまにアイツから誘ってくるんだよ。そんな冬馬が可愛くて愛おしくて、毎日が幸せだった。
でもある日、事件が起きた。俺の運命が変わったかもしれない大事件だ。
進級して月日が流れた夏の事。その日、俺は冬馬の家に来ていた。する事しようとしたら、冬馬が「結構汗ばんでるから」ってシャワー浴びに行ったんだ。冬馬を待ってる時、事件が起きた。本当に何気なく大学の教材が積まれた机の横を通っただけだった。
その時、どっかが引っかかったみたいで、教材の山が倒れちまったんだ。机の端に置いてあったから床にたくさん落ちた。それを拾った時、見つけたんだ。
「なんだこれ」
落ちた教材の中に混ざってた1冊のノート。
「″春人くん日記″?」