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″春人″って誰だ。そう思ったけど、すぐに分かった。冬馬と仲良くなってから「なんで遊び人になったんだ?」って聞いたことがあった。そしたら、「高校生の時に色々あった」って一言だけ。その時は何となくそれ以上は踏み込まない方がいいと思った。でも、その″色々″に関わっているのはここに書かれている″春人″と言う人物かもしれないと思ったら、目の前にある日記を読まずにはいられなかった。ずっと知りたいと思ってたから。その色々を。
少し迷った。知りたい事が書いてあるとはいえ、これは冬馬のプライバシーだ。多分、冬馬もこの日記は他人に読んで欲しくないと思う。
だけど、俺は好奇心が勝ってしまった。冬馬の過去を知りたいって。だから俺は、日記を開いた。
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2019年4月19日
今日、好きな人が出来た。1年生の柳春人くん。
俺の目をまっすぐ見てくれた。俺が見続けても、しばらく目を逸らさなかった。当番も同じで、運命を感じた。
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──柳春人。
コイツが冬馬の好きだった人。
俺はページをめくった。
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2019年4月24日
今日、春人くんに会いに1年生のフロアに行った。
そしたら、春人くんがちょうど廊下を歩いてた。運命かもしれない。
壁ドンして目合わせたら、また俺の目をじっと見てくれた。普通目逸らすのに。春人くんの、そういう所が好きだ。
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ページをめくった。
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2019年5月13日
今日、春人くんが図書当番だから、図書館に会いに行った。冬馬でいいって言ったら、冬馬先輩って呼んでくれた。少しいじわるしたら困った顔してて可愛かったな。
興味無いって言われたからちょっと傷付いたけど。
春人くんに興味持ってもらえるように頑張らないと。
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最後の1行がやたら気になった。この言葉は、俺も言われたことがある。少し嫌な予感がした。
それでも俺は、ページをめくった。
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2019年5月14日
今日も春人くんに会いに図書室に行った。
春人くんが好きか嫌いかなら好きって言ってくれた。
愛斗のせいであんまり話せなかったけど、少しでも俺に興味を持ってくれたなら、それだけで嬉しい。
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ページをめくった。
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2019年5月23日
今日、翔くんに教えてもらったことをやってみたら、かっこいいって言ってくれて、好きって言ってくれた。
嬉しい。俺の事、好きになってくれた。俺の好きとは違うけど。それでも嬉しい。
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ページをめくった。
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2019年10月10日
今日は春人くんと文化祭を回った。
ホラー脱出ゲームってやつをやってみたんだけど、春人くん怖いの苦手みたいで、俺にすごいくっついてくれて、春人くんには申し訳ないけど嬉しかった。
誰もいない校庭で春人くんと食べ物いろいろ食べて、シュークリーム食べさせあったりした。俺の口にクリームが付いてたみたいで、それを春人くんが取ってくれた。急に口元触られて、ドキッとした。恥ずかしくて少しぎこちない態度取っちゃったけど、春人くん変に思ってないかな。
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ページをめくった。
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2019年10月11日
春人くんと俺の写真がSNSで出回った。春人くんが心配で会いに行こうとしたけど、愛斗に止められた。
代わりに愛斗が様子見に行ってくれて、″翔くんがいるから大丈夫″って聞いたけど本当に大丈夫かな。
今は翔くんに任せるしかないよね。
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──写真。SNS。
2人の写真が出回ったのか。
ページをめくった。
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2019年10月28日
今日、図書当番で久しぶりに春人くんと会えた。
春人くんは、自分が俺といると迷惑がかかるって言ってた。だから俺は迷惑なんて思わないって言った。
そしたら放課後の当番の時、春人くんが謝ってきた。授業中ずっと俺の事考えてたんだって。また好きって言ってくれた。俺とは意味が違うけど、好きになってくれるだけで嬉しい。
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ページをめくった。
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2019年11月19日
春人くんに嫌われた。
春人くんは俺が迷惑だって。俺といると周りに何か言われるから。普通、そうだよね。
なんで早く気付いてあげれなかったんだろう。
ごめんね。春人くん
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──嫌われた?周りの目?迷惑?
正直ムカついた。春人って奴は、周りの目なんか気にして、冬馬を手放したのか?
ページをめくった。
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2020年3月2日
今日は卒業式だった。
春人くんが写真を撮りに来てくれた。正直もう会えないと思ってたからすごい嬉しかった。
でも、急に俺から離れて、やる事があるって教室から出てっちゃった。
ちょっと近付きすぎたかな。さよならくらい言いたかったのにな。
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そのページにクリップで挟んであった1枚の写真。冬馬と、男子高生のツーショット。
多分。いや、絶対。これが″春人″って子なんだろう。
冬馬はずっと、この″春人″って子の事引きずってるのか。
ページをめくった。
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2021年4月22日
今日、春人くんみたいな人がいた。
春人くんみたいに目をまっすぐ見てくれて、思わず声掛けちゃったんだけど、興味ないなんて言われちゃって。でも、そういう所も春人くんにそっくりだね。
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──2021年4月。これ、俺の事か。さっきの嫌な予感が的中した。冬馬が俺に声を掛けて来たのは、俺が″春人″に似てたからなんだな。
ページをめくった。
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2021年5月19日
大和先輩といると春人くんと一緒にいるみたいだ。
明日も大和先輩に会いに行かなきゃ
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ページをめくった。
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2021年10月15日
今日、大和先輩に抱かれた。
俺の事、好きになってくれたんだって。
春人くんだったら良かったのにな
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──″春人くんだったら良かった″か。
俺は冬馬にとって何なんだろう。
俺は静かに日記を閉じた。もう、これ以上ページをめくるのは嫌だったから。
床に落ちたままの教材を拾い上げて、元の場所に戻す。
今日はもう帰ろう。そう思って俺はカバン持って出てこうとした。そしたら冬馬がちょうど脱衣所から出て来た。
「どうしたんですか?カバン持って」
「あー…大学のレポート、明日提出のやつあるの忘れててさ。もう帰るわ。ごめん」
そのまま帰ろうとした。なのに、冬馬が俺の腕掴んで震えた声で言うんだよ。
「行かないで」
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