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「太宰」
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自身の名を呼ぶ心地よい声
返事をするように
『おださく』 と馴染んだ愛称を言う
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だが自分の耳には
その声は届かなかった
聡明な頭で既に分かっていたことだ
変わらず心地よい声を出す彼は
今は土の中で眠っている筈なのだから
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これは夢
彼は私の夢の中にいる
私が見たかった
私が聞きたかった
ただの夢
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「太宰」
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もちろん
分かってるさ
本当に君は意地悪だね
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「太宰」
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君だって
まだ私に過去を引き摺っていてほしいくせに
変なところで我慢するよね
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「愛してる」
最後の日にだって聞けなかった言葉
頬から零れた雨を無視して
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『愛してたよ』
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声にならない声で別れを告げた
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これは夢
俺は彼の夢の中にいる
俺が見たかった
俺が聞きたかった
ただの夢
嗚呼 この悪夢にさよならを