「忘れたいのなら」
目を閉じたのは、意識的だったのか無意識なのかわからない。
彼と目を合わせていられずつぶっただけなのか、単に体に染みついた習性なのかすらわからなかった。
彼のキスは触れただけで、それ以上を求めたりしないものだった。
そのことにほっとして、ゆっくり目をあけて―――すぐそこにあった彼の瞳に私が映っているのを見て、息が止まった。
至近距離で見つめられていることに気づき、キスをした時よりずっと鼓動がせわしなくなる。
そんな私の背中に手を添え、彼はリビングの奥にあるドアへと促した。
“寝室だ”
そう思って反射的に身が固くなったけれど、予想に反して、彼の行き先は脱衣所だった。
思わず彼を見上げると、 紀坂(きさか)は「使って」と言い残し、部屋に戻ろうとする。
「えっ、あの」
「俺も入ってもいいならそうするけど、すこしはひとりになりたいでしょ」
自分でも意識**********
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