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放課後の教室。
七瀬はスマホを手に握りしめ、深呼吸をした。ついに、美咲と決着をつける時が来た。
『七瀬!!なんで返事してくれないの!?』
美咲からのメールが画面に表示される。指が震える。返事をしなければ、ずっと追いかけられる気がする。
でも、返したらまた絡まれるかもしれない。七瀬は決意を固め、打ち込む。
『うん、返事、するよ』
メールは少しずつ交わされ、最初はお互いに遠慮がちだった。
七瀬は強く自分を守る言葉を選びながらも、美咲の感情の渦に巻き込まれていく。
『もう、七瀬なんかバカで大っ嫌い!』
その一言で、七瀬は胸が締め付けられるのを感じた。幼馴染のように仲良くしていた日々は、一瞬にして崩れ去る。
しかし、七瀬は冷静に返す。
「……じゃあ、いいよ。私に美咲は必要ないから」
メールを送信し、指を止めた瞬間、心にぽっかり穴が空いたような感覚が走る。
長かった1年の束縛から、ついに解放される――でも、それと同時に、恐怖も残っていた。
翌日、学校に行くと、七瀬は美咲の視線に耐えられなかった。休み時間、ずっと教室を除いているのだ。
教室の隅に座る七瀬を、無言で追う視線。胸が締め付けられ、呼吸が浅くなる。
「……今日は無理かも」
七瀬は学校を休む決断をする。
家の窓から見える校舎を見つめながら、怖さと解放感が入り混じる。
午後、玄関のチャイムが鳴る。見ると、美咲とその仲間が立っていた。
「七瀬、ごめん……!」
七瀬は一瞬ためらうが、返事をしない。
美咲はさらに謝りを重ね、七瀬は少しだけ心を許す。顔を上げると、かすかに安心感が芽生えた。
「……わかった、私もなんかごめん。美咲」
その日は、七瀬は少しだけ心を軽くして眠ることができた。
しかし、翌日からは決意を新たにする。
美咲からのメールはブロックし、教室でも距離を置く。話しかけられそうになれば、あえて必要最低限しか応対しない。
七瀬は沙也加と過ごす時間を優先し、心の平穏を守ることにした。
放課後、七瀬と沙也加は駅前のカフェで笑い合う。プリクラを撮り、お菓子を分け合う時間。
学校での恐怖とは違う、穏やかな日常。
「七瀬、最近元気そうだね」沙也加が笑う。
「うん……やっと、少し自由になれた気がする」
七瀬は深呼吸をして、心の中でつぶやく。
「これからは、自分を守るために、ちゃんと距離をとろう」
もう、美咲に振り回されることはない。悠真も沙也加も、七瀬の味方だ。怖かった日々は過去になり、これからは自分で選ぶ時間が始まる――そう信じられる瞬間だった。
教室の窓の外を見ると、遠くの空が少し赤く染まっていた。七瀬は小さく微笑む。
「これで、本当に終わり……」
怖さと不安を乗り越えた先に、七瀬の新しい日常が始まったのだ。