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月詠 涼
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鷹槻れん

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#極道
鷹槻れん

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鷹槻れん

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「お前、ホントおっちょこちょいで目が離せねぇよな」
クスッと笑われて、渡された紙ナプキンを「柳川のせいだよ!」と心の中でつぶやきながら受け取って、
「あ、ありがと……」
言いながら、耳まで真っ赤になっているのが、熱さで分かる。
なまじ髪を上げたりしてるから、バレバレかも知れないって思ったら、恥ずかしくて堪らなかった。
こんな恋人みたいな時間を柳川と持てたことを嬉しく思うと同時に、そのさんとは1ヶ月以上一緒にいても、こんな気持ちは芽生えなかったなって思ったのを思い出す。
***
「言凛ちゃん、聞いちょる?」
肩に軽く触れられて、私は回想に浸っていたのだとハッとする。
「ごっ、ごめんなさいっ、そのさん」
取り分けたトマトをみんなの前に置きながらソワソワと謝ったら、そのさんに小さく吐息を落とされた。
「今日夕方に会ったときにも思ったけど――」
言われて肩をグッと抱かれてそのさんの方へ引き寄せられて。
「やっ!」
思わずキュッと突っ張ったら、小さく吐息を落とされた。
「俺の呼び方、いつの間にか〝そのさん〟に戻っちょるし、今の塩対応。ねぇ、ことり、俺が見てない間に柳川と何かあったんかな?って疑いたくなるんじゃけど?」
言われて、私はヒュッと喉が鳴りそうになる。
そのさん、今日の集まりでは「偽装」の恋人関係だと言うのを柳川の前で暴露してくださるんじゃなかったんですか?
これじゃあまるで――。
「俺な、言凛ちゃんと別れる気、ないよ? だって言凛ちゃんのこと、無茶苦茶好きじゃもん」
肩を抱く力をグッと強められて、私は柳川の前なのに!と泣きたくなる。
「そのさん、私たちはっ――」
私が一生懸命そのさんの腕から抜け出そうともがいたのと、柳川が「そのさん、全部一旦リセットすべきじゃないですか?」と低い声を出して、まるでそのさんを牽制するみたいに立ち上がったのとがほぼ同時だった。
「リセット? 何それ、どういう意味? 柳川、お前、何が言いたいん?」
そのさんが私から腕を離すと、柳川を眼鏡越し、冷ややかな目で見上げて。
私は思い切り壁の方へ寄るようにしてそのさんから距離を取ると、涙目で2人を見つめた。
「鳴宮。お前が選べ」
と、不意に柳川が私の方へ視線を転じるとそう言ってきて。
私は意味が分からないままに、恐る恐るそんな柳川を見上げる。
「……やな、がわ?」
私が……選ぶ?
何を?
キョトンとする私に、柳川が続けるの。
「そのさん、俺、あのとき言いましたよね? 鳴宮にはずっと片想いしてる相手がいるって」
柳川の言葉に、私はドキッとする。
その相手が、そのさんだと柳川は勘違いをして――。
結果それを利用する形で私とそのさんは付き合っているふりをすることになったの。
柳川、もしかして私が好きな相手が自分だって気が付いた?
ソワソワと柳川を見上げたら、そのさんが小さく吐息を落として。
「だから……その相手が俺だって柳川が言ったんじゃん?」
そのさんの言葉に、柳川が
「そう。俺が勝手に決めつけて、勝手にそう言いました。けど、そもそもそれが間違いだったんじゃないかって気付いたんです」
と静かに応じた。
「俺もそのさんも鳴宮の話を聞いたわけじゃない。なのに勝手にそいつの気持ちを決めつけて、手前勝手に動いちまった。――それが今のこの状況でしょう?」
柳川の言葉に、私はギュッと胸が苦しくなって。
私が選ばなきゃいけないのは……自分の身の振り方だって気が付いた。
周りに流されるんじゃなく、自分でどうしたいか決めろって……柳川はそう言いたいんだ。
「俺、言凛ちゃんから聞いて、彼女の好きな相手が誰か、最初から知っちょったよ? その上で、お互い合意の上で今の形を選んどるんじゃけど」
そのさんに、「ねぇことり、そうじゃったよね?」って聞かれて、ビクッと身体が跳ねる。
そのさんの言う通りだ。
そのさんは全てをご存知の上で、私に仮初の恋人契約を持ちかけていらしたんだもの。
そのさんの言葉に小さくうなずいたら、柳川が吐息を落としたのが分かった。
「だったら……! 鳴宮、何でお前、そんな辛そうな顔してる?」
言われて、私は思わず唇を噛んだ。
「俺は鳴宮にそんな顔させたくて、そのさんにお前を託したわけじゃねぇよ」
柳川の言葉に、私は思わず彼を仰ぎ見て。
至極真剣な目で私を見下ろす柳川の視線とかち合って、トクンッと心臓が跳ねた。
「お前が本当に好きなのは誰だよ?」
ハッキリと言葉にされた訳じゃないのに「俺じゃないのか?」って問いかけられている気がして、私は思わずふらりと立ち上がって。
そんな私にそのさんがまるで無意識に。
咄嗟にそうしてしまったみたいに私の手を掴んだけれど、私はその手をもう一方の手を添えて、そっと振り解いた。
「そのさん、ごめんなさい。私、そのさんとはもう、この関係を続けられません」
敢えて「お付き合いを」とは言わなかった。
だって私とそのさんの恋人ごっこは、最初から嘘っこだったもの。
1度だって私、そのさんと〝その先〟を夢見たりしなかった。
「言凛……ちゃん」
そのさんが眼鏡の向こう、瞳を見開いて私を見つめて。
私はそのさんを見つめてもう1度「ごめんなさい」ってハッキリと彼を拒絶した。
「……そっか。最初から無理があったもんね、俺ら。言……鳴宮さんがそう決めたんじゃったら俺はもう何も言わんよ。けど――」
そこでそのさんも立ち上がってじっと私を見つめると
「ゼミで気まずくなるんは嫌じゃけ、次に会ったときは……お願い。今まで通り話しかけて? 俺も極力頑張るけぇ」
そう言って、どこか辛そうに八重歯を見せてニコッと笑った。
コメント
2件
そのさん(涙) そして柳川! どうなっちゃうの!?
うわあ……この展開、めちゃくちゃ胸にくるね……🥺 鳴宮ちゃんが「この関係を続けられません」って自分の言葉で言ったところ、すごく大事な瞬間だったと思う。柳川くんが「辛そうな顔してる」って気づいてくれたのも、ちゃんと見てくれてるんだなって伝わってきて泣ける。そのさんも最後、気を遣って去ってくの切なかった……誰も悪者じゃないのに、それぞれの正しさがぶつかってて苦しいよ。続き、気になる……!