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#ヒューマンドラマ
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私だけの1人の彼氏 第7話:続いていく悪夢、奪われる絆
「お待たせ、健」 デートの待ち合わせに現れた美羽。しかし、二人の背後には、狂気に染まった姉・愛良が忍び寄っていた。 「やっぱり別れてなかったんだ……私の健を奪う女は死んで!」
愛良が美羽を線路へと突き飛ばす。健は咄嗟に美羽の手を握った。だが、間に合わない。
轟音と共に滑り込んできた電車が、無慈悲に美羽の肉体を粉砕した。健の手に残ったのは、血に濡れた美羽の右手首だけだった。
「アハハハ! これでずっと一緒ね、弟くん!」 愛良の高笑いが、血の匂い漂うホームに響き渡った。
数日後、父・大智は警察署にいた。彼は愛良を、そして妻・順子を守るため、すべての罪を被る決意をしていた。
「私が娘に命じ、私が誘拐を指示した。すべて、男の子が欲しかった私の犯行です」
「17年間、ありがとうございました、大智さん……」 健の感謝の言葉に、大智は「さらばだ、息子よ」と静かに微笑んだ。
大智の本名は佐江宮勇作(さえぐみ ゆうさく)。元殺し屋としての罪も含め、彼は自らを闇へと葬った。
護送の最中、順子は謎の狙撃によって命を落とす。大智は血を流す妻を抱きしめ、自分の本名を明かして慟哭した。彼らの「偽りの家族」は、あまりにも悲惨な結末を迎えた。
健は、千葉の家を離れ、本当の両親が待つ埼玉県春日部市へと向かった。 「おかえり、詩音(しおん)」 母・美奈と父・龍吉、そして姉の桃(もも)。 健の本当の名前は風宮詩音。 17年ぶりに取り戻した本当の家族。
姉の桃は、再会した弟のあまりの可愛さと紳士ぶりに、一瞬で重度のブラコンへと変貌した。 「詩音、私のお弁当食べる? ……べ、別に作りすぎただけなんだからね!」
転校先の高校でも、黒沢や山下といった友人ができ、詩音の人生はようやく明るい兆しが見えたかに思えた。
しかし、運命は詩音を逃さない。 再会からわずか3ヶ月。父・龍吉の不倫が発覚した。 「パパが他の女とホテルに……?」 仕事仲間に目撃された父の裏切り。
かつて自分がホテル街で見かけた父の姿が、残酷な記憶として詩音の脳裏に蘇る。
リビングからは両親の激しい怒鳴り声が絶えなくなった。 「詩音、聞いちゃダメ!」 姉の桃は震える手で詩音の耳を塞ぐ。
その手も、恐怖でガタガタと震えていた。 「……たとえ二人になっても、お姉ちゃんがずっと一緒だよ」
父は家を出て行き、家族はバラバラになった。 「詩音、大丈夫よ。ママが頑張るから……」 涙を堪えて微笑む母と、必死に弟を抱きしめる姉。 「ありがとう、桃お姉ちゃん……」
皮肉なことに、本当の家族に戻っても、詩音の周りには「幸せ」よりも「欠落」と「依存」が渦巻いていた。
これは、一人の少年が光を求めて歩くたび、足元が崩れ落ちていく物語。
(つづく)
今回の物語のポイント
* 「桃」のキャラクター性の強調: プロットにある「重度のブラコン」を、単なるコメディではなく、愛良の狂気と対比させるような「不穏な依存」として描写しました。
* フラッシュバックによる対比: 千葉での惨劇と現在の家庭崩壊をリンクさせ、詩音が逃れられない運命の中にいることを強調しています。