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ATTENTION
rdmd注意
R 18描写はナシ
キャラ崩壊注意
rdの愛がけっこう重め
md死ネタだけど、ハピエン
死ネタ苦手な人の克服用にぜひ
読後の苦情は一切受け付けません
ー ー ー ー ー
世界は主に四つの国により分割、統治されていた。
東西南北に分かれた十字の交わるところのちょうど真ん中。
そこには人外と呼ばれる存在が今も生き永らえていると言われている。
神々の時代から存在したとされる彼らは、人間には無い人智を越える力を持っているとか。
だからこそ、そんな人外について各国の間だけに留まらず、全人類において暗黙のルールが子々孫々に至るまで語り継がれている。
彼らの存在に手を出してはいけない、と。
そのため、各国は十字の交わる位置から半径百キロメートル内を侵入禁止区域として設定した。
しかし、最近では北の国がその暗黙のルールを破ったと噂されている。
国王は一貫してこの件を否定しており、噂の真偽は定かでは無い。
「ヘェヘェ、お国も事の隠蔽にアレコレと大変なこって…」
読みかけの新聞をバサリと後ろに放って、ロッキングチェアをゆらゆらと揺らした。
街から少し離れた静かな森の中にポツンと建っている小さな家。
その家の住人である魔女は苛々と指先を肘掛けに叩き付け、大きく溜息を吐いた。
何故そんなに苛立っているのかって?
理由は至って簡単。さっきから家の周りを国の兵がうろついているから。
しかも一人や二人じゃなく、ちゃんとした部隊で長々と列を作って。
テリトリーにそうも大人数でウジャウジャされたら誰だって溜息のひとつやふたつくらい…
「森の魔女よ!扉を開けろ!」
ほら、お国の兵はこれだから嫌だ。
どうせまた国王の思い付きが悪い方向に転んだから後処理をしろ、とか言われるんだ。
とんがり帽子をうんと深く被って、分けていた前髪をわしゃわしゃかき混ぜてボサボサに崩す。そうすれば誰もが忌み、嫌い、恐れる、森の魔女の完成だ。
渋々とドアを少し開けると間髪入れずに扉に手がかけられ、一気に全開にされる。
ヒュルリ、と魔女の苛立ちに呼応するように風が強く吹いた。
長い袖に隠れている両手をぐっと握って、なんとか怒りを抑える。口元を袖で隠すようにして小さな声で「何の用で?」と尋ねれば、扉を無理矢理全開にした兵は尚偉そうに魔女を見下したまま口を開いた。
「我々は国王の使いでやってきた。だというのに、其方は歓迎の茶すら出せないか」
「……私と国王は対等な立場に御座います」
「其方の戯言など聞いては_」
「それは、盟約により先代の国王が定められた事…まさか、先代とはいえ国王のご意思を否定する気で?」
「っ…!」
淡々と事実を述べた魔女の言葉に兵士は何も言えなくなったようで、苛立ったように腰からぶら下げ国王からの書状を読み上げた。
つまるところ、今すぐ城に来い。
あまりに短い要求を長々と書き連ねるのは高い地位を持つものの定めなのか。
長い読み上げにうんざりした魔女はパチンと指を鳴らして、その証書を繊維ひとつすら残さず灰へ変えた。
恐れ慄く兵達を一瞥した魔女は扉にかけられた兵士の手を叩き落として勢いよく扉を閉めた。すると勝手に内側からガチャリと鍵のかかる音がして扉はピクリともしなくなった。
「…先、行くので。サヨナラ」
フッとその場から消え失せた魔女に、きっと兵達はさらに恐れ慄いて好き勝手に憶測を喋り散らかすのだろう。
別に、それすらあまり興味の無いことだが。
兎にも角にも代替わりしたことで王の座に着いた元バカ王子の後処理をしてやらないことにはどうにもならない。
テメェのケツくらいテメェで拭きやがれ、と言うのが本心であるが、先代国王と結んだ盟約があるからには仕方のないこと。
きっとこれも、どうにもならないことの一つなのだ。
「ああ、よく来たな。森の魔女。相変わらず地味で美しくないな」
「国王陛下の命を拝聴しに馳せ参じました。一体何用でしょう」
「フンッ、父上がお前如きにあんな盟約など結ばなければ良かったものを…まぁいい。聞け、お前には神々の時代から生きる人外の世話と調教を命ずる」
「…調教、と言いますと…まさか軍事利用するおつもりで?」
魔女の質問に鼻で笑った国王。どうやら、そのまさからしい。
神々の時代の生き物はどれも意思の疎通が人間とは違う上に血の気が多く、プライドと戦闘能力が高い。その世話というなら数日のうち何回か顔を出す、なんてもので済まされるわけがなく、おそらく泊まり込みで働かないといけなくなる。
一言で言えば、この命令の内容は魔女の最も面倒とする分野だ。
上から目線だし、軍事利用とかバカ言うし、キモイし、内容は終わってるし。
盟約無視してコロス?いや、そうするとその後の罰が痛い。
「……拝命、致しました」
「ああ、ではお前は今日から離宮に住め。分かったならさっさと動くんだな」
「…………失礼致しました」
いつか絶対にその首を城門に吊るしてやる、と心の中で罵詈雑言を浴びせながら魔女は家へ帰った。
こぢんまりとした部屋には魔女の私物は数えるほどしか存在しない。私物の上に広がった新聞紙を見てフンと鼻を鳴らす。
わずかな荷物を鞄に詰めて魔女はまたパッと移動した。
「ここか……汚い、ボロい、カビ臭い…」
手入れされた様子のない王族の離宮と呼ぶには小さすぎる館。
もはや宮殿ではないだろうと言いたくなるのを抑えてそっと玄関扉を開けると、木の軋む音が酷く耳障りで魔女は思わず顔を顰めて手を離した。
ガチャン!と扉が一気に閉まる。
まるで、この館に閉じ込められてしまったのかと錯覚するほど。
「…っ、ぅ……ひっ、ぐす……」
啜り泣く声が聞こえて二階に上がると、透明な正方形の箱の中で男の子が膝を抱えていた。
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