テラーノベル
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スミスは降谷からの山のような着信を見たあと、考えていた。
スマホから向こうも居場所は特定できるはずだから……要するに「おかんむりかしら…」首をかしげる。
だが戻るわけにいかない。
やはりあの女、別の組の女だったか。高木に調べさせたからこれはもう確定だ。盗聴器らも外れたのがわかれば、もう手を出してきてもいいだろうに。
ガチャ、と音がして高木が帰ってくる。
「ねぇ、あなたたち愛し合ってるんでしょ?」高木は口を利かない。「なら別に大丈夫よ、あなた事件に巻き込まれてるだけなんだから…」
「…バレてますから」と高木。「もう、出勤したら早々言われたんで…話しました……」ぐっ、とお茶を飲む。
「それでいいんじゃない?」ふふ、と笑うスミスに、高木は「は?」と言う。
「あの女の刑事は……」ふさ、と前髪が垂れる。
「【それ】が好きなんだろうな…ふふ。それより」と空のミルクの箱を揺らす。
「あーっ!」はいはい!と高木は再び上着を着た。
「何もないと思いますよ」
「え?」デスクでぼーっとしている佐藤に白鳥が言う。
「あなたと」ちらと佐藤を見て、すぐパソコンを叩く画面に視線を戻す。
「付き合っていて、名前さんとそんなことするような【バカ】じゃないですよ。彼」
「なにそれ?慰めてるつもり?」佐藤は呆れたように笑う。
「僕もそう思うよ」千葉がまた椅子のまま出てきた。パンをかじる。
「独り身ならまだしも。美人かどうかは関係ないーーただ、相手がどう思うか、って思いやりが高木にはありますよ。僕が知ってる高木なら」
「ふっ…」と佐藤は困ったように笑った。
「違うわよ、私が心配なのは高木くん自身よ…」
佐藤はまた窓に寄っていった。
考えろーーと言い聞かす。次に相手はどう動く?
盗聴器などがしかけられていたということは、組は高木の場所を特定済なのが確定している……。
そして、名前がそこをねじろにしているかを確認したのだ。狙いは彼女だ。
もし?もし私なら?佐藤は考える。
逆の立場なら……?
はあっ!と佐藤は息を飲んだ。皆が驚いて佐藤を見る。
「警部ーー!今すぐ!今すぐ保護の許可を!」
「待て待て!名前さんの件なら公安に話したほうが……」
「違うわよ!」と佐藤は叫ぶ。「とっくに公安を頼るわよ!でもそうしないのはなにか理由があるのーー」佐藤はさらに続けた。
「保護対象は、高木刑事ですーー!」
「あ、ありがとうございました…」びくついて袋を渡す店員に、「ありがとう」と高木は笑う。
「はあっ…」と肩を落とした。
たしかに名前は美人だが…佐藤さんも美人だが……
あのときの佐藤の瞳…裏切られた、とでも言いたげで、苦しくて、言い訳さえ見つからないようなまなざしだった。
「ちゃんと謝らないと…って僕何も悪いことしてないでしょ!?」
天を扇ぎ言うが、何も答えない。
口を利いてくれただけましか。でも怒ってないわけないよな。
保護とはいえ、女性を、付き合っている女性に話さず置いていたんだから。
角を曲がった瞬間誰かとぶつかって一瞬目を閉じた。「ーー!」次に目を開けたときには、目の前に拳があった。
「今時こんなものがあるのか」家の電話が鳴り、スミスは出る。「高木くんっ」その声にスミスは黙った。しん、となる通話。
「名前さん…」低い声に、ああ怒ってる。とくすりと笑う。「こんばんは」「高木くんは!?無事!?」
その言葉にスミスは目を上にやる。
「やるじゃないか日本警察……狙いが私でおびきだすなら、彼氏とか家族を狙うよなぁ…」
やはり離れて正解だった。と思う。
「高木くんどこへ!?」
「ミルクを買いにコンビニに」ちら、と時計を見る。「だが少し遅いな」
「スマホの電源が入ってないの!」と佐藤は叫ぶ。
「きまりだ」スミスは立ち上がった。「ほぼ決定でいいだろうな、拉致されたんだ」
「あなたーーまさか高木くんを利用したの!?」
スミスは降谷の満面の笑みを思い出して言う。
「…だったら?」ガチャッ、とスミスは電話を切った。
「来ると思ってたよーー」
真下組のビルはもはや空物件になっていた。もう2度と此処に来ることはないと思っていたのに。
ビルのへりに、両手両足を縛られた高木がいる。ガムテープされているせいで首を振るだけ。
ガチャッ、と両サイドの男がスミスに銃口を向ける。
「姉貴の仇だ!」
「お前がビルから飛び降りるなら」
どっ、と高木に足をかける。
「こいつは解放してやる」
どうするーー?
スミスは腕を組んだ。「飛び降りるわ」
あまりに簡単に答えるので、銃口を向ける奴らも目を合わす。
高木は首を激しく振る。
「愛してるの……」
びゅう!と風がふき髪が横に殴られる。
「だから…先に彼をこちらに」
「だめだ。お前が先に来い」
スミスは歩き出し、高木の横に立つ。
男はにやりとして、高木をビルの内側へ投げた。「んーっ!んん!」高木はじたばたするが、仕方ない。「ごめんねだんな様……」「はっ」男が嘲笑うように銃口を構え、内側に下がっていく。高木に向ける。
「さあ!」
スミスはビルに振り向き、1歩ずつ下がる。高木が動くのが激しくなる。
瞬間、ドアから何か転がってきた。あの女ーー思っている間だった。
彼女は1発ずつで、男らの銃をはねていく。「がっ!」「うっ!」「ああっ…!」
「警察よ!」ばたばたと所轄が入ってきて、同じように膝をつく。
「両手をあげて膝をつきなさい!!」
怒号のような声に、刑事らはヤクザども押さえにかかる。
「高木くんーー!」すぐに佐藤は海老のような彼に駆け寄る。ガムテープをむしる。
「ぷやあっ」
「高木くん…!」佐藤は彼を抱き締めた。ぎっ、とスミスは睨まれる。
ぱあんーー!
と乾いた音がして、刑事らは皆それを見て目を見開いた。
「なんで…」
スミスは叩かれた頬を押さえる。
「なんで叩かれたのかって?」
にや。と笑う。
「叩きたかったろ?」
「…っ!」佐藤はさらに拳を握る力を入れる。
「あなたは…あなたは高木くんを危険にさらした!許さないわ!名字名前!」
「仲がいいな」と高木を見る。
「佐藤さんも名前さんも降りて!危ないからーー」
佐藤はふんとまた高木に駆け寄った。
「礼を言う。日本警察…もとい、だんな様……」
「あなたが公安に頼らなかったのは…」
「お前と同じだよ、女」
わたしはただの…女なんでね……
「ん?」
「この音はーー」
「きゃあああ!」佐藤は後ろに倒れていくスミスに悲鳴をあげる。
ぶわあ!というプロペラの風と共に、ヘリに乗っていた人物と目が合う。
「風見…刑事」
「公安部……」
「ああ!」
はしごに掴まっているスミスは、唇に手をやり、ふーっ…と吹く仕草をしてみせた。
ヘリはそのまま飛び去っていく。
残された刑事らは、ただ唖然とするしかなかった。
凛🐶
128,003
#降谷零
コメント
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第33話読み終わったよ!スミスの「飛び降りるわ」の即答、めっちゃ痺れた…あの覚悟と愛情、熱すぎるだろ。でも最後のヘリで逃げるシーン、まさか公安と繋がってたのか!?「わたしはただの女」って台詞も含めて、スミスってキャラめちゃくちゃ深いな。続きが気になりすぎるわ…!