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オフ日、ふたりでこっそり訪れた遊園地。並ぶ人の列に立ちながら、藍がそっと手を差し出す。
「祐希さん……」
「ん?」
「手つないで」
「迷子になんねぇだろ、お前」
「ちゃうよ。人混みやからやなくて、俺がそうしたいの」
「素直かよ」
「だって、祐希さんと一緒に歩けるだけで嬉しいのに、手までつなげたら最強やん?」
ぎゅっと繋いだ手に、ほんのり汗ばんだ温度が伝わってくる。
「離さないからな……?」
小さく呟いた祐希の言葉はしっかり藍に届き、それに藍も小さく言葉を返す。
「うん。絶対な?」
手を繋いだまま観覧車へとやってきたふたり。
ゆっくりと空へ昇っていく観覧車のゴンドラ。
景色が広がる窓の外より、藍はずっと祐希を見ていた。
「……祐希さん」
「ん?」
「こないして二人っきりで観覧車乗るん、めっちゃドキドキするな」
「藍、高いところダメだっけ?」
「ちゃうわ!祐希さんが目の前におるから……心臓バクバクやわ」
「……ずるいな、お前」
「ずるないやん。本音やし」
そう言って、そっと祐希の手を握る。
狭い空間の中で、藍の指が少し震えていた。
「……好きやで、祐希さん」
祐希は一瞬だけ言葉に詰まり、けれど強く握り返した。
「……俺も」
ゴンドラの中、ふたりの手はずっと離れなかった。