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ソファに並んで映画を見ていた夜。途中で藍がもぞもぞと動き出し――
「……祐希さん、こっち来て」
「こっちって……?」
「俺の膝の上ちゃうて、俺が祐希さんのとこ行くほう」
「は?」
「つまり、こうや!」
そう言って、藍は遠慮なく祐希の太ももにちょこんと座り込む。
「お前、映画見てんの?」
「見てるけどな、祐希さんに触れてるほうが、ずっと見やすいんよ」
「お前、それ逆じゃね?」
「ちゃうねん。映画より祐希さんの隣おるほうが大事なんやもん」
抱きつくようにして膝の上でくつろぐ藍を、祐希は片手で抱きしめながら、映画そっちのけで髪を撫で続ける。
藍は膝の上で体を預けながら、画面よりも祐希の胸のあたりをじっと見つめていた。
「……なぁ、祐希さん」
「ん?」
「映画より祐希さんの鼓動聞いてるほうが、落ち着くわ」
「どんだけ俺に集中してんだよ」
「だって好きやから。触れてへんかったら、落ち着かんねん」
そう言ってぎゅっと抱きついてくる藍に、祐希は思わず小さく笑う。
「ほんっと甘えんぼだな、お前」
「ええやん。祐希さん限定の甘えんぼやで」
その言葉に胸をくすぐられながら、祐希は映画の音をBGM代わりに、腕の中の藍をさらに強く抱きしめた。