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翌日の午前八時。参加者は朝食の席に集まる。昨日に引き続き、今日も現時点でリタイアを申し出たりルール違反で失格した者はいなかった。この六名は最終日まで残りそうだ、と月呼は心で感じる。
ゲーム終了まで、今日を合わせて残り三日。月呼が侑加といられる時間もどんどんと減っていく。月呼はすでにさみしさをおぼえていた。
今日も月呼と侑加は散歩したり、トランプゲームをしたり、いつもと同じことをして遊ぶ。
恋人どうしで遊ぶにも限られていると、島を出て遊びたいと思う。そうなると、今みたいに侑加と寝食をともにできなくなる。ならば、このままずっと島にいるのがいちばん幸せなのか。でも、家族とこのまま会えないというのは辛いし、大学にも通いたい。それは侑加とて同じだろう。
「私、疲れちゃった」
トレーニングルームから部屋へと戻った後、月呼はソファに寝そべる。
「マッサージしてあげるよ」
侑加はすかさず月呼の腰や脚を揉む。筋肉痛をやわらげるなら国家資格を持つ人間にやってもらった方が効果は高いのだろうが、月呼は恋人から手厚い施しを受けているという事実に癒される。
「侑加くんって、気がきくよね。最初の頃はそんな印象はなかったな」
初めて話した時は他人の目を気にせず、気もつかわなさそうというのが、月呼から見た侑加のイメージだった。だが、実際の侑加は恋人に尽くすタイプのようである。かと言って、常に自分の様子を見張られているような、窮屈な感じもない。侑加の気配りはあくまで自然だった。
「俺、だれにでもやさしいわけじゃないよ。前沙さんにだけ」
侑加と一緒にいられるだけで幸せなはずなのに、彼に愛されれば愛されるほど、月呼の中で欲がどんどんと出てくる。侑加とエジプト考古学の話がしたい、と。自分がエジプトおたくだと知ったら、彼はなんと思うだろうか。侑加なら笑顔で話を聞いてくれそうだ。でも、自分の好きなものをすぐに話せなかったから、打ち明けるのにも勇気がいる。
「侑加くんは私に話したいことってある?」
「話したいこと? たとえば?」
「趣味とか、好きなものとか」
「うーん、そういうのはないかな。俺、趣味はないから」
「そうなんだ」
好きな食べ物がない侑加に趣味がないというのは、自然なことに思えた。物事に強い興味をもたない人生とはどういうものなのだろう。月呼には想像もつかない。
「……」
侑加は黙々とマッサージを続けている。侑加のプライベートを知ったところで、これまでと特に印象は変わらなさそうだ。
「俺の趣味は前沙さん」
突然、侑加が口にした。
「ん? それはどういう意味?」
「前沙さんと話したり遊んだりするのが俺の趣味」
それを聞いた月呼はうつぶせの状態でにんまりとする。その表情は侑加には見えていない。
「前沙さんはあるの? 俺に話したいことが」
「うん。でも、侑加くんはそれを聞いて楽しいと思うのかなって、少し不安」
「そんなことはないよ。俺はそれを知りたい。気になる」
侑加の返事で、今の生活より元の生活が月呼の中で優勢となった。自分は島を出たらより幸せになれると信じたい。今は一秒一秒をむだにせず、侑加との時間を心から楽しもうと感じた。
コメント
1件
第40話読み終わったよー!もう終わりまであと3日って思うと切ないね…😢 でも侑加くんの「俺の趣味は前沙さん」には完全に持ってかれたわ♡ あのストレートな愛情表現、反則すぎる!!月呼ちゃんがにんまりしてるの、私も同じ顔になってたよ🤭 自分の趣味を打ち明ける勇気が出てきたのも、侑加くんの優しさのおかげだね。2人の時間が尊すぎて泣ける😭💕