テラーノベル
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「翔太」
すっと伸びた細長い脚が、カーテン越しに見える。
グループ用に番組が用意してくれた、広めの楽屋。その奥にある試着室のようなスペースで衣装に着替えようとしていた俺の前に立つ恋人。自前の服を脱ぎ、上裸でいた俺を、追い詰めるように入ってきた。
「あべちゃ!?……んっ、、」
そのまま強引に唇を重ねられる。
息もできないほどに熱い舌で攻め立てられて、上顎を蹂躙され、舌と舌とも抱き合わせ合い、粘っこく口内を愛された。
背中に回された腕の感触が意外と逞しくて、いつも沈着冷静な彼らしくなくて、驚いてる間に、少し硬度を増した下半身を擦り付けられる。
「どぅ……したの?らしく、ない」
「俺らしいってなに」
いつも優しいはずの目の奥には滾るような熱がこもっていて、俺を見下ろす目が意地悪く光った。
「も、すぐ……。みんな、来ちゃうよ……んっ、あんっ」
無防備だった胸の先端を捏ねられて、思わず高い声が出た。
……恥ずかしい。
「そうだね。さっさと終わらせなきゃね」
「えっ?なに、、するの?んんっ!だめぇ、、」
先端を引っ張るようにして虐められ、密着すると、また深いキスが始まった。
頭に直に響くような水音…。
何度も唾液が交換されて、じゅるじゅると吸われて、興奮し始めた下半身を手で下からさわさわと撫でられて、唇が離れた瞬間に耳元で囁かれた、えっちだね、という言葉にまた感じる。
「やだ……っ…。あ、ん……」
「目黒に会えた?」
「会ってな、、、」
「嘘」
首筋を撫でられて、鎖骨の辺りをちゅっと吸われる。痺れる痛みで、印を付けられたのだとわかった。
「おこってる……の?」
「いや」
あべちゃんは表情の読めない仮面を被りながら、片方の口の端だけ、くいっと持ち上げた。
(おこってるんだ、おれが、はっきりしないから)
めめが出発する日に、めめを忘れると一度決めた。
別れを告げると、めめが俺は忘れないし、俺には翔太くんだけ、と言った。
(でもさみしいのは無理で。おれが、にげた)
ひとりぼっちになった俺を迎えるために開かれて飛び込んだ胸は、いつも優しくて、うっとりするような知性に溢れていた憧れの人。
『俺がずっとキミを見てたこと、キミだって気づいてただろう?』
『……………………』
あべちゃんがずっと俺のことを………?
胸が熱くなる、嬉しさが込み上げる。
だから、受け入れた。胸に空いた隙間以上の愛で俺を包んでくれた人。
それなのに昨夜。
俺は一時帰国しためめに抱かれていた。
めめに求められるままに手を握り合って、口付けを交わして、身を委ねた。会っている刹那の時間、少ない時間を惜しむように求めてくる彼を拒めなかった。
二人の狭間で揺れる俺は、 卑怯にも決断を下せないまま、二人の魅力的な男たちに翻弄されている。
「悔しいよ」
「あべちゃ…」
「俺だけのものになってよ」
ベルトを外され、手が、強引に後ろに回った。
めめに数時間前に絆されて、愛されて、彼を受け入れた場所を、今度は別の男に触られている。
俺の前は、誤魔化せないほどに膨らんでいて、身体はいやらしく男を求めていた。
普段は思慮深いはずのあべちゃんも、誰が来るともわからない楽屋の隅で、執拗に俺を求めていた。
その時だった。
「おはようございまーす」
メンバーの誰かが到着した。
思わず嫌な汗が吹き出る。あべちゃんは、人差し指を口元にあて、そのまま頬に触れるだけのキスをすると、俺を背中向けにした。
「なにす………っんっっぁ…」
囁くように抗議しても、あべちゃんは止まらない。俺の口に手をあて、声が漏れないようにすると、準備の要らない俺の秘所に強引に欲望を突き立てた。
「あん………っ……」
声が出て、慌てて抑える。カーテン越し、薄い布切れ一枚を隔てた中で、ゆっくりと俺たちのセックスが始まった。
挿入のたびにぐりぐりと押し付けられる肉棒が、俺の急所を抉る。動きこそ緩慢だが、狙いは正確で、なんとか声が出ないようにするのに必死だ。耳の淵を舐めながら漏れるあべちゃんの息遣いも、興奮しているのか徐々に上がってきた。
「おはよう」
「あ、おはよ、康二。みんなは?」
「そろそろみんな集まってくるんとちゃう?」
試着室のようなこのスペースは、広い楽屋の奥まったところにある。入ってすぐには気づかれにくい場所だ。
スタイリストさんに渡された衣装を持って俺が試着室に入ったのは、一番乗りで広々とした楽屋で着替えるのがなんだか気恥ずかしかったからだ。それなのに今は、気恥ずかしい以上の行為を俺はしていた。
「やめ、て、、、とまって。あべちゃ、、、」
「いやだね」
「あっ!!!」
きっぱりと、そして短く断ったあべちゃんは、俺の懇願を合図のように腰をより深く突き入れた。律動の速度が上がる。いよいよ呼吸すらも我慢しないといけなくなってきた。
両手を壁に突き、やや前傾になった腰を持たれる。あべちゃんの欲望がさらに深く、強く、俺を揺らした。
****
「っく!………」
初めは揶揄うだけのつもりだった。
それなのに、数日ぶりに会う翔太はほんのり色づいて見えた。いつもと同じ透き通るような白肌の、その肌に残った異質なものをいやでも嗅ぎ分けた。そしてそれが目黒の痕跡だと気づくまでにさほど時間はかからなかった。
我ながら不安定だと呆れる。
翔太を好きでいて、手を出せないでいたのは俺の方だ。目黒を失って、生まれた心の隙間に、救いの神のように現れたふりをして、長年の恋煩いを成就させた。
欲しいものを手に入れたのに、何かあれば、こうしてみっともなく焦っている。
それほど翔太の中に存在する目黒の影は濃かった。
「んっ………むちゃくちゃ締め付けるね?」
翔太の中がきゅうきゅうと締まっている。
肉壁が俺を求め、離すまいとしている。中の熱が、俺を溶かしていく。自分でも驚くほどに早く達しそうだった。
わかっている。
翔太の胸の中、二人の男たちがせめぎ合っている。
自分から選ばせてもらえない翔太は、俺たちに代わりばんこに翻弄されているだけだ。そして俺たちは揃って、この愛する人を諦められないでいる。
いや。
諦められないのではない、俺のものだから。
恐らく目黒もそう思っている。
翔太は、自分の目の前にいる時、全力で愛されてくれるから、それこそが愛だとよくわかるのだ。
誰かが苦しいのに、誰もやめられずにいるこの関係に、正常な名前などなかった。
「っん!出すよ、、、翔太、俺を受け止めて」
「ちょう、だい、、、」
耳元で囁くと、翔太が俺を探して後ろに伸ばした手を握る。挿入したまま、翔太の中に俺の愛をありったけ注いだ。翔太の前から出たものは、俺の掌が受け止めている。翔太が二度、三度とびくびくと腰を震わせた。
「はぁ、はぁ……いっ…衣装……は?」
「大丈夫。汚れてない」
「よかっ……たぁ……」
その場にへなへなと座り込もうとする翔太を、すんでのところで抱え上げる。カーテンの裾がそれほど長くないから、座り込んでしまったら可愛いお尻が丸見えだ。
ただでさえ、この狭い空間に二人きりなのも異常なのに、流石にメンバーにはバレたくない。
最低限に身なりを整えて、軽くキスを交わし、可愛らしく睨まれたところで、鎖骨に並ぶキスマークを再び見た。
……二人分の印がそこには刻まれている。
「俺のが、少し濃いかな」
「え?」
可愛らしく、でも怪訝そうに首を傾げる俺たちの姫は、まだほんのりと頬を赤らめたまま、そっとキス待ちをした。
唇ではなく、近くにある黒子にキスを落とす。
「っん!……いじわる」
「なんとでも。ちょっとした罰だよ」
「ますますいじわるぅ……」
潤んだ目を見つめていると、もっと欲しくなりそうだから、俺は翔太から視線を逸らした。
そのまま試着室から先に出て、何事もなかったように、メンバーたちに合流した。背中に確かに色づく、愛を感じながら。
ruruha
#読み切り
コメント
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昨日のkaedeさま(お名前出して大丈夫でしたでしょうか、すみません🙇♀️)からの本日のまきぴよさまの💚💙🖤💙で切なさと愛しさに溺れて胸がもはや苦しいです🥹 💚の嫉妬からくるワイルドさに思わずときめいてしまいました…。 ありがとうございました✨

やん🫣🫣🫣