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こんにちは怜奈です。
今回はrちゃんモテモテのお話し
少しいつもとは違う雰囲気で、落ち着いた(?)
ちょっと悲しい系の
物語になってます
よろしくね!
そしてこの第三者視点が私は結構好き、
春の午後、陽射しがやわらかくカフェの窓から差し込んでいる。
藤澤涼架は窓際の席で、両手でカップを包みながら外の景色をぼんやり眺めていた。
桜の花びらが風に舞い、歩道を行き交う人々の肩にそっと降りかかる。
その様子を眺めているだけで、心がふんわりと温かくなった。
「涼ちゃん、今日もいい匂いするね」
隣に座る大森元貴が、突然顔を近づけてきた。
元貴は昔からこうして、何のためらいもなく距離を詰めてくる。
涼架は思わず苦笑いを浮かべた。
「元貴、またそうやってからかうんだから」
「えー、からかってないよ。本当に思ったこと言っただけだし」
元貴は悪びれもせず、さらに肩を寄せてくる。
そのまま涼架の肩に頭を乗せ、まるで子どものように甘えてくる。
周囲の視線が少し気になるけれど、元貴はまったく意に介さない。
「だって、涼ちゃんの隣が一番落ち着くんだもん」
元貴の言葉は、いつもストレートで、どこかまぶしい。
涼架は照れくさそうに視線を逸らしながらも、心のどこかでその言葉を嬉しく思っていた。
そんな二人の様子を、向かい側の席から若井滉斗が静かに見守っている。
滉斗は、涼ちゃんの好きなストロベリータルトを注文し、何も言わずそっとテーブルに置いた。
「涼ちゃん、これ好きでしょ」
その一言に、涼架はぱっと顔を上げる。
「ありがとう、滉斗。覚えててくれたんだ」
「うん。前に一緒に来たとき、美味しそうに食べてたから」
滉斗は穏やかな笑みを浮かべ、グラスの水を静かに飲む。
彼の優しさは、いつもさりげなく、涼架の気づかないところで支えてくれている。
目立つことはなくても、滉斗の存在はどこか安心できる空気をもたらしてくれるのだ。
元貴が「俺にも一口ちょうだい」と涼架のタルトにフォークを伸ばす。
「もう、元貴は食いしん坊だなあ」
と涼架が笑うと、滉斗も思わず微笑んだ。
三人で過ごすこうした穏やかな時間が、涼架はとても好きだった。
バンドとして一緒にいるときとは違い、肩の力を抜いて素の自分でいられる。
何気ない会話、ふとした笑顔、そして誰かの優しさ。
それらが積み重なって、心の奥にあたたかな灯りをともしてくれる。
ふと、元貴が涼架の手を取った。
「涼ちゃん、今度また一緒に曲作ろうよ。最近、涼ちゃんといるといろいろ浮かぶんだ」
「いいよ。元貴の新しいアイディア、楽しみにしてる」
そのやりとりを見つめる滉斗の表情は、どこか寂しげで、それでも優しかった。
滉斗は決して自分の気持ちを表に出さない。
けれど、涼架は知っている。滉斗がいつも自分たちを支えてくれていることを。
カフェの窓の外、桜の花びらがまたひとひら、舞い落ちる。
三人の春は、静かに、けれど確かに動き始めていた。