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その頃、最愛の姉シャーリィの生存とその窮地を知ったレイミは愛馬ダッシュを駆って直ぐ様六番街にあるカジノ『オータムリゾート』本店へと駆け込む。

「リースさん!十六番街への潜入と『エルダス・ファミリー』との交戦許可をください!」

「おわぁあっ!?」

執務室で優雅に農園産のオレンジジュースを楽しんでいたリースリットは、ドアを蹴破らん勢いで部屋に駆け込んできたレイミに驚き引っくり返る。

「リースさん!?」

「てめえ!レイミ!!ノックくらいしやがれ!!」

「ごめんなさい!」

頭からオレンジジュースを被る羽目となったリースリットは怒り、レイミは直ぐに謝罪した。

「ったく。で、一体なんだってんだ?マナー違反なんて珍しいじゃねぇか」

起き上がったリースリットはハンカチで濡れた顔などを拭きながら問い掛ける。

「リースさん!遂に見付かったんです!私のお姉さまは生きていたんです!」

「へぇぇ、そりゃすげぇや。良かったじゃねぇか、レイミ。それで?『エルダス・ファミリー』に捕まってたりするのか?」

常に姉の事を心配していたレイミをよく知るリースリットは、育ての親として嬉しく思いながら続きを促す。

「似たようなものです。なにより、リースさんは知っていますよ?『暁』の代表さんです」

「はぁ!?シャーリィがレイミの姉ちゃんなのか!?髪色も違うし同じ名前なだけかと思ってたぞ」

「お姉さまはお父様のブロンドを、私はお母様の赤い髪を受け継ぎましたから」

確かに見た目だけならば姉妹に見えないのがアーキハクト姉妹である。

「そうだったのか。済まねぇな、その辺詳しく聞いとけばもっと早くに……それで?今危ないんだな?」

「はい、お姉さまは少数で十六番街へ潜入しています。『エルダス・ファミリー』の攻勢を誘発するための工作だと思いますが、『暁』は幹部マクガラスの動きを掴んでいませんでした」

「なんだと?シャーリィらしくない手落ちじゃねぇか。エサを前にした犬みたいに待ってるんだぞ?」

「バンダレス攻略を優先した結果と思います。リースさん、どうか許可を。生きていたお姉さまをこんなところで失いたくはありません!」

それはレイミの悲痛な叫びだった。前世では経験できなかった愛を教えてくれた、なによりも大好きな姉を失いたくはないと。

「レイミの頼みだし、なにより私の妹分の危機だ。出し惜しみをするつもりはねぇよ。ジーベック」

「なんだ?」

リースリットは側に控えていた顔に十字傷のある幹部ジーベックを呼ぶ。

「今考えてる計画の前倒しって出きるよな?」

「兵隊はそれなりに集まった。金で雇った連中だから忠誠心は期待できねぇがな」

「良いんだよ、そう言う連中は金が有る限り裏切らねぇから。下手に忠義やらなんやら言われた方が信用ならねぇよ」

金は裏切らない。ギャンブルの女王と詠われるリースリットの変わらぬ信条である。

「なら前倒しにするか」

「よし、準備が出来たら直ぐにこのバカ騒ぎに参加するぞ!」

「『血塗られた戦旗』についてはどうする?」

「手紙を書くつもりだよ。やる気なら『海狼の牙』と連携して潰すぞってな」

「そりゃまた、奴等がビビりそうな脅しだな」

「それで収まるとは思えませんが……」

「なぁに、時間を稼げりゃ良い。レイミは今すぐに十六番街へ行け。私も兵隊が揃ったら乗り込むからな」

「ありがとうございます!」

レイミは深々と頭を下げる。

「構わねぇよ、どのみちバカ騒ぎに参加する予定だったしな。ちゃんとした目的がある方がやる気も出る」

「そのやる気を普段見せてくれりゃ俺達も楽なんだがな」

「私は金を稼ぐだけだ。後始末は幹部連に任せてるからな」

「知ってた」

「リースさん、お姉さまを探すために情報網を自由に使いたいのですがそちらも許可をいただけますか?」

「構わねぇぞ?その代わり、定期的に連絡を寄越せ。十六番街の内情を知りたいからな」

「斥候としての役目もしっかり果たしますから、ご安心を」

「よしよし」

「だがボス、お前は残れよ」

「なんで!?」

リースリットは目を見開く。

「だってお前弱いだろ」

「そんなことねぇよ!なっ?レイミ」

「キングは後ろでどっしり構えているのがお仕事ですよ」

レイミの表情は、それはそれは良い笑顔だったと言う。

「それ遠回しに足手まといだって言われてない?」

「足手纏いだな、大人しくしてろ」

「拗ねるぞ」

「ガキかよ」

ギャンブルで成り上がった女リースリット。男勝りで豪快な性格をしているが、その腕っぷしに関してはさっぱりである。

同じ頃、十五番街にある『血塗られた戦旗』の事務所前の通り。事務所からセーラー服を纏った栗色の髪を腰まで伸ばした少女が出てくる。その整った顔を不満げにしながらぼやく。

「あーあ、つまんないの。しばらく作戦中止だってさ」

「不満そうだな、聖奈」

少女に声をかけたのは、鍛え上げられた上半身に黒いコートだけを纏った白髪の青年であった。

まるで蛇のように鋭い視線を向け、首からは蛇を象った銀のペンダントが下げられている。

「あっ、ジェームズ!」

青年を見ると少女は満面の笑みを浮かべて駆け寄る。

「ボスに我慢しろって言われたんだろ?」

「そうなんだよ!せっかく楽しそうなことになってるのに!」

少女は不満をぶつける。

『血塗られた戦旗』は『オータムリゾート』からの脅しを受けて行動を一時的に鈍化させていた。それはつまり、暗殺などを生業とする二人にとって退屈な判断となる。

「我慢しろよ、聖奈。ボスだって完全に身を引いた訳じゃねぇんだ。俺達の出番もある。それまでは俺が遊んでやるから」

「むぅ、ジェームズがそう言うなら我慢する。でも、お祭りには絶対に参加するからね!?」

「分かってるよ、そこは心配すんな」

ジェームズと呼ばれた青年は抱き付いてきた少女の頭を撫でながら落ち着かせる。

「楽しくないなぁ、私は人をたくさん斬れるって聞いたからここに来たのに」

「複雑な事情って奴はあるもんさ。好き勝手やってたら、あっさり死んじまうのがこの街だ。『血塗られた戦旗』に義理を通しておくのも悪いことじゃねぇよ」

「異世界に来てまでルールを守らなきゃいけないなんてね」

少女は小声で呟く。

「なにか言ったか?聖奈」

「んーん、なーんにも。それじゃ、家に帰ろうよ。退屈で欲求不満なんだ。ジェームズ、今夜は寝かせないよ?」

妖艶な笑みを浮かべる少女。

「なに言ってやがる。いつも先に落ちるのは聖奈だろ?」

「ふふっ、今日は勝つよ!」

夜の街で若い男女は語らう。片や異世界からの転生者にして心に闇を抱える少女。

片や『スネーク・アイ』の異名を持った賞金稼ぎの青年。二人の物語はもう少し先となる。

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