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かくして、俺が始めて遭遇した翌亜流高校スタンピード事変は終わりを告げた。
後片付けを皆に指示して、現地指揮官のデモニカさんに報告して防衛隊の仮設休憩所で仮眠を取って、片付けが終わって撤収するドサクサに紛れてセキローと佐助の力を借りてコッソリ帰宅した。
帰宅途中に自宅付近の住宅の一部に損傷が見られ、動揺したが、幸いにも我が家は無事だった。
庭で剛武とキラービー達が飲み食いしており、ご近所さんも食事を持ち寄ってそこそこの規模の食事会が行われていた。
「ただいま~」
父さんと母さんに声を掛けると、
「あら守、お帰りなさい」
「おっ、守。今さっきまで〇×テレビで翌亜流高校のスタンピードの緊急特番が流れていたぞ。父さんたちも見ていたが、守の大活躍も映っていたぞ!それで、最後に大活躍したあの子達が黄泉醜女なのかい?」
「そうね、母さんもあの子達の事は気になるんだけど?」
「ごめん、今日はもう疲れたから風呂入って仮眠取るよ。あの二人は黄泉大毘売命なんだけど、話は夕飯の時にするから」
「あら、そう……メニューは何かリクエストがある?」
「洋食系で、ご飯はおかわりするから多めに炊いといてくれると」
体感3年位和食生活だったし、体が洋物を求める……それと、今日位は制限考えずにガッツリ食べても良いよね!
「わかったわ。お疲れ様、守」
「ああ、それと父さん。念の為に剛武とキラービーをこっちで呼び出したんだけど、こっちはスタンピードの被害とか大丈夫だった?」
「ああ、うん。スタンピードの被害は大丈夫だったんだがなぁ……」
父さんは答えながら母さんの方を向き、
「お父さん?」
母さんから謎の圧が。心なしかキラービー達も圧されている……!?
「いやいや、母さん。……守、それでだな。お前が呼び出したモンスターのおかげでこの辺りに大した被害は無かったんだが、お前の部屋から急に大量発生したキラービー達を見た母さんが、軽くパニックになってな……キラービーの何体かに被害が……」
キラービー達に確認すると、殺虫剤の直接噴射を受けたのが3体、俺の部屋にあった椅子の振り回しを喰らったのが2体いたらしい。
幸いにも致命の一撃には至らなかったようで、今は向こうで療養しているようだ。しばらくしたら元気になるだろうとのことだったので、その事を二人に伝えたら、見るからに安堵していた。
「それは良かった……いや本当に良かった」
「助けに来てくれたのに私ったら本当に……でも守、連絡の一つも寄こしてくれても良かったんじゃないの?」
「ごめん母さん、その時目の前でスタンピードが起こっていてそれどころじゃなかったんだ」
「そう、それなら……「母さん、守も疲れているだろうし、今日はもう……」そうね、ごめんなさい。今日はもう休みなさい」
結構限界が近かったので風呂で寝落ちしない様に気を張って気合でベッドまで移動して、最後の力をふり絞り目覚ましをセットしてぶっ倒れる。
7時過ぎに目覚ましの音に起こされて、リビングで晩御飯を食べながら、今日の話をする。
〇×テレビの人からインタビューされるかも知れないと言うと、父さんが怖い顔をして席を離れて何処かに電話したかと思うと、戻ってきて、
「守、今言っていた〇×テレビのインタビューの話は『もうなくなった』から気にしなくていいぞ」
「そっかー……」
インタビューを切欠に㈱小野麗尾興業(予定)の宣伝媒体に使い倒す算段が……
まぁ、いいか。
「それで、黄泉大毘売命というのは……」
こないだの契約の時の話をすると、父さん母さんが急に表情を引き締めて、
「で、守はどうするんだ?」
「え?どうするんだって、契約もしたし、他の召喚モンスター同様、これからも頑張ってもらう積りだけど?」
と言うと、二人そろってため息を吐いた。
「まぁ、なんだ。許可証が発行されたら顔合わせをさせてくれよ?」
別に構わないが、何でそんなに疲れた顔を……
微妙な空気のまま、晩御飯が終わり、自室に戻って寝直した翌日。
朝から連絡網が周り、学校が暫く休校になったというお知らせが。
丁度良かったので午後から役所に行って召喚許可証の申請に行って、帰りは鍵留と池流のお見舞いに寄って行くかと思っていたら、冒険者証の方に異常空間対策局への出頭の要請メールが。何事だろうか。
取り敢えず母さんに学校が休校になった事と、午後に出かけるからと伝えて、朝食を食べて、2階の自室に戻り、PCを起動してまずは今日のニュースチェック。昨日のスタンピードの記事がずらりと並んでいたが、一番上に来ていた記事は、
「フランス政府、日本政府にジャンヌ・ダルクのソウルカードの引き渡しを要求か!?」
という物だった。
他の記事は華麗にスルーして真っ先に確認した所、〇×テレビの中継映像がネットに流れた物をフランス人が見た所、向こうの冒険者を巻き込んだ大規模なデモが起きたらしく、外交筋で打診、というか無理だとは思いますが、という感じのお伺いがあったそうな。
日本国政府としては、国民の財産への不当な侵害は、国内法および国際冒険者協定のいずれにおいても認められず、そもそもカードは所有権を持つ冒険者から一時的に預かって居る物にすぎず、政府の一存で所有権を左右できる物ではないと明言したそうな。
……さっすが日の丸の親方! いざと言う時はやってくれるとあっしは信じていましたぜ、ゲヘヘヘヘヘヘヘヘ。
あれ?関連記事に
「アメリカ合衆国政府、ジャンヌ・ダルクのソウルカードの買い付けを発表!?」
なんかまた
悪い予感が
してきたのぅ……
記事内のアナリストの予想だと、今年の予算の内、予備費として計上されている分と外交機密費を合わせたおよそ0.5兆ドルを上限に交渉してくるのではとある。あった。
イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!
グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーー!!!!!
アタシは死んだ。
(いえ、まだ死んでいませんよ?)
はっ!? ここは誰!? 俺は何処!?
一寸ばかり脳のキャパ超えたんでブレーカーが吹き飛んだ所までは憶えて……
「たまげた、とはよく使われる表現だけど、実際魂消る寸前まで行くのを見たのは初めてね」
「うっうっう。旦那様……」
君達を呼んだ憶えまでは無かったかな。
「しょうがないでしょ。何かアンタが急に消えそうになったから……」
あれ?魂ってそんな簡単に消える物だっけ?
「ふ、普通は消えませんが、旦那様の魂は母様曰く”特別な物”らしく、気を付けるべきだと……」
おかしい。悪の組織に攫われた事や、邪教の生贄に捧げられた記憶は無いんだが……
まぁ、いいか。”些細な事”だ。『気にする必要は無い』
で、何だったか。ああ、フランス政府のいちゃもんに日本政府が決然とNoを突きつけたんだった。
ブラウザに残ったタブを纏めて閉じて、
「迷惑かけたね、二人共。もう大丈夫だよ。わざわざありがとう」
そう言って見送った後、MPの消費量が2である事を確認して、エインセルを呼んだ。