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「あら、急にどうしたの、ご主人様?昨日の今日で連勤かしら?」
眠いんですけど~、と宣いつつ伸びをする彼女に、
「前から聞きたい事があったんで呼んだんだ」
「いくらご主人様でも私のスリーサイズは」
「それはどうでもいいから」
「どうでもいいってナニよ!?」
ムキー!とジタバタするエインセルを横目に、
「なぁ、君達モンスターにとってMPって何なんだ?」
「何って……MPはMPよ。逆に聞くけどあんた達人間にとってMPって何よ?」
む……
「人間の間だとMagicPower、魔法の力、と言う解釈が一般的かな」
「ふーん。間違いでもないと思うけど、どうなのかしらね。こっちだと、Mind Power、つまり心、精神、思い・想いの力と認識されているわ」
「で、それがどうしたの、急に」
「急でもないんだけどさ、前からエインセル呼ぶときにMPの消費量が他のモンスターと比べて凄く少なかったからそれが気になっててさ。何でなんだろうって」
「そう、そうなんだ。それって私だけ?」
「いや、最近来てくれた子もそうなんだけど」
「へぇ~、そうなんだ。ご主人様、その子の事は大切にしてあげるべきよ?使い捨てとかしちゃうときっと後悔するわ」
「いや、しないけど。で、何か理由はあるのかい?」
「ご主人様はモンスターがMPを必要とする事情から知らないのよね?」
「ああ、人類の中でも知られていないんじゃないかな」
何処かの組織の機密とか秘匿情報扱いかもしれんけど。
「じゃあ最初からね。私達モンスターがMPを必要とする理由はね、第一に生きるためにそれが必要だから、よ」
「ご主人様が来てくれた契約の場はね、私達が生まれた……いえ、存在が発生した場所なの」
「ある時突然あの場所に存在するようになった私達は本能として生きるためにMPが必要な事と、MPの稼ぎ方を理解するの」
「理解?」
「人間でいう所の本能みたいなものかしら。MPがあるとね、あの場所に生きる為の様々な恵みや変化を齎す事が出来るようになるの。
昔はあの場所にも果物とかキノコとか沢山あったのよ」
そのフルーツ・キノコって暗喩的なサムシングではなく、合法的なヤツですよね……?
「そのイメージもシツコイというか根深いわね。で、稼ぎ方だけど。
1.ダンジョンに身売りして戦闘要員として働く
2.MPを使って分身を作り、これまたダンジョンに売りさばく
この2つは派遣先での働きに応じてMPが貰えるわ。
1で死んだらソウル化するし、2で分身が破壊されたら特約付の契約じゃなければMP丸損だけど。
で、3.誰かと契約して使役される
これが人間たちで言う所の簡易契約と本契約。
簡易契約なら2と同じでMP使った分身販売。
本契約なら1+2のセットね。
普通の場合なら2で作った分身を本体が遠隔操作する感じで、召喚される度に分身用のMPが回収されるらこの時に前に作った古い分身を使いまわせればボロ儲けね。分身が作れない場合は本体が出向くだけだし」
分身に傷がついても少しのMPで直せるし。
と付け加えるエインセル。
「つまり、本体が来てるから安く付いたのか」
「ええ、そうよ。とは言っても最低限行帰りのゲートを開く分のMPは必要だけど」
それが2MPの理由か……
「他にもMPがあれば自分の強化にも使えるからいくらあっても損はしないし、むしろ全然足りないわ」
……そっかー。MPがあるとエインセルがある日突然全長2Mのムキムキマッチョの胸毛おじさんになるのかー……
「何、その悍ましい発想は。アンタってそういうのが」
「守備範囲にございません!!!!!」
「で、話がそれたけど、例外として、その自分の場所を中心に領域を展開・変化して他の存在からMPを狩るのが」
「人類の言う所のダンジョン、か?」
「ええ、そうよ。普通に出現するのが待ち伏せなら、スタンピードっていうのは、MPの略奪ね。待ち伏せの状態で誰か入ると、そいつからMPが自動徴収されてダンジョンのインスタンスが作成されるけど」
「そうなると、ダンジョン内のモンスターってのは……」
「契約の場に他のモンスターを呼び出して、その場の主と契約したモンスターよ。自分の場をダンジョン化したモンスターはダンジョンボスとして、色々な事が出来るようになるわ。他のモンスターとの契約もその一つね。とはいっても自分よりランクの高いモンスターとの契約とか相手側に何かしら事情が無いと出来ないと思うけど」
……あれ?そうなると……
「エインセル、ひょっとしてモンスターってわざわざソウルカード用意しなくてもMPがあれば自分でランクアップってできる?」
そうでないとモンスターがMPを溜め込む理由が……
「効率は悪いけど、出来るわよ?私も100万MP位貯めれば上位の存在に上がれるし」
何と言う……
「フェアリーのランクアップ先ってたしかハイエレメントだっけ?」
取引価格が十億単位で気候制御や土壌・水質改善で酷使される奴。
「さらに溜め込めば一足飛びでエルフとかティターニアとかまで行けるわよ?」
おい、それ取引価格十~百億単位!?MP効率が若干悪くてもそもそもカードが出回らない奴!!!
なんてこった。ここに来て爆弾情報が増えた。もしこんな情報が世に出る事があればカードとMPの相場がオシロスコープめいたことになってしまうじゃないか!?
個人的な機密情報が増えた事を嘆きつつ、
「最後に三つ確認したいんだが」
「改まって何よ?」
「一つ目は本能と言うには随分と詳しくないか?二つ目は、分身とその……」
「最後まで言わなくてもいいわよ。一つ目に関しては詳しくて当然ね。私、ダンジョンボスやったことあるもの。イギリスだっけ?ひょっとしたら記録があるかもしれないわよ?あの時はランクアップしていてもっと別の姿と名前だったはずだけど。二つ目は、アレね。
余程の物好きじゃないと子供は出来ないと思うわ。分身はよく言っても空〇嫁とかダッチ〇〇〇だし、本体で人間の相手しようなんて、C系の神話生物相手に股開くような物よ?生理的に無理。分かる?セ・イ・リ・テ・キ・ニ・ム・リ(はぁと)
アタシだってアンタより前の契約者に妖精〇〇〇として分身レンタルされた事あるし、アンタじゃなけりゃ人間なんて見たくもなかったわよ」
人間の業の深さが酷過ぎる件。
「今更だけど、良く契約してくれたね?」
大丈夫?無理してない?
「だ~か~ら~、アンタだから良いのよ、アンタで良かったの!?はい、この話これでおしまい!!!で、最後の一つは?」
「うん、ありがとう。最後の一つは…人間ってMP持ってるの?死んだ人から魔石が出たって聞いた事ないけど」
「り心、精神、思い・想いの力なんだから持ってないって思う方が不思議なんだけど?何であんな容器に入れて持ち運ぶの?こないだのアンタみたいに体の中に入れておけばいいのに」
どうやら、また藪をつついて蛇を出したようだ。よし、俺は何も聞かなかった!それはそれとして、今以上の容量のMP容器の買い替えが必要なさそうなのは実に有益な情報だった。いや、知らないけど(欺瞞)