ランプは更に話し続ける。
「理解して頂けましたか? でも困りましたね…… 先程アナタは主であるナッキ様に言ってしまいましたものね、自分以外は信用できない、してはいけない、でしたっけ?」
「うっ…… そ、それは言葉のアヤで……」
「でしょうね、別段、責めていると言う訳ではないのですよ? 心から王に仕える者の特有の忠心からの憂慮、更に言えば、一群を率いる責を負う立場に有る者故の独特な克己心(こっきしん)から来る勇み足、私個人としても、又国家としても決して好ましからざる物ではありません…… とは言え、ナッキ様、今回ドラゴがこのような発言をした事も、ヘロンが不敬とも取れる態度であった事も、どちらもこの池の現行体制、その有り様に起因している事に他ならないので御座います…… 何卒この事をご理解下さいませっ……」
ヘロンに緑の大きな石を埋め込まれたお蔭で、ここまでのやり取りを一言一句聞き逃さない様に内耳(ないじ)を澄ませていたナッキはビックリした顔である。
「へ? この池、国の有り様に原因がぁ! そ、そうなの? い、一体っ、ど、どうすれば良いのか…… なんともぉかんともぉ……」
ランプは相変わらずの冷静沈着な表情を崩す事無く、左右の前足でもある大きな鋏(はさみ)を胸の前に重ね合わせながら、頭(こうべ)を垂れてナッキに言う。
「『メダカの王様』、ナッキ様! 僭越(せんえつ)ながら、私、ニホンザリガニのランプが恐れ多くも上奏致しますっ! ナッキ様に準ずる立場で全ての決済を一手に担う、宰相、若しくは総理とでも呼ぶべきナンバーツーをお決めにならなければなりません、そう言う時が差し迫っているのです! 平たく横並びにナッキ様只お一人を敬愛する者達が集う、そういった時期をこの『メダカの王国』は当に過ぎ去っていたので御座いますっ! とは言え、今からでもまだまだ間に合いますのでご安心を…… さあ、お選び下さいませぇっ! ナッキ様に代わって決を下す、その一者をぉっ! 指名の責、それこそが王の専制、それに他ならないのですっ!」
ナッキは首をあちらこちらに傾げながら、考えている事を口に出して隠す素振りもない。
「う、うーん、たった一匹を選ぶのかぁ~、そう言われちゃったらやっぱ生まれた時から一緒に居たヒットかオーリかなぁ? ヒットは体だけじゃなくて心も強いしぃ、でもオーリは色んなことを知っていて頼り甲斐があるしぃ~、うううーん、でも僕にとっては一番心安いのは二匹だけどぉー、『メダカの王国』って言う意味じゃ最初に仲間になってくれたのはモロコ達なんだよねぇ~、増水した日に命がけで上の池から訪ねて来てくれた訳だしなぁ~、ん? んん? ああっ! そうか、あの時はモロコ君達は僕の事只の抑止力、敵を圧する軍事力としか考えてくれていなかったっけねぇ~、そう考えれば殿様やダルマ、カエルの皆が最初に忠誠を誓ってくれたんだけどぉ…… でも、でもぉ…… ティガがいなかったらギンブナの仲間達にも再会出来なかった訳だしぃ…… えっとぉ…… ……………… 誰を選べば良いのやら~、うーん………… はっ! も、若しかしてぇっ!」
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