ナッキが何か思いついたようである。
この声を聞いたザリガニのランプは満足そうに頷き、大きな鋏(はさみ)を動かしてその先を促すのである。
「お気付きになりましたか、そう、それが正解ですよ、ナッキ様」
ナッキは大声で言う。
「僕の国、『メダカの王国』のナンバーツー、宰相にはメダカを選ぶ事にするよぉっ! 子供は兎も角、一万匹のメダカ達を皆の相談相手、それに上司に選べば良かったんだねぇ! そりゃそうだよぉ、だって『メダカの王国』なんだもんねぇ! でしょ? ランプ君?」
ランプは目を閉じたままで殊更満足そうな笑顔を浮かべて言う。
「ええ、ええ、そうでしょうとも♪ これまで上下の区別無く平等を旨としてきた『メダカの王国』、それを構成してきた面々から宰相を選ぶ事は最善とは言えません! ですので、ここは私め、ランプが宰相として皆様のためにこの身を捧げるべきなのです! 甚(はなは)だ僭越(せんえつ)では御座いますが、王の言葉には従わざるを得ませんっ! ここはこのランプが皆様の上に立たせて頂き、この王国を導いていきます、その名の通り『メダカの王国』の宰相、メダカとして…… えっ? えええっ! メダカ……? え? メダカァ? 私じゃなくて、メダカ、なのですかぁっ!」
ナッキは笑顔満面である。
「うん、メダカにするよ、アドバイスをサンクス! ランプ君♪」
どうやら、ナッキの副官には一万匹近い『メダカ』が選出されたようである、良かった良かった。
ヒットが感心したような声を上げる。
「なるほどなぁ、メダカ達ならこの池や周辺に幾らでもいるし、常に認識を一(いつ)にしているからなぁ~、そりゃ頼もしい副官ってヤツだろうなぁ! ナッキナイスッ、だぞぉ!」
オーリも続いた。
「本当よね! メダカは一匹が聞けば全員に聞こえるし、判断にも迷いは無いもんね! 『相互依存型集団随伴性』の権化だもんねぇ、それが良いわよ、公明正大だしぃ」
『確かに!』
「でしょ? ナイスチョイスでしょう?」
パチパチパチパチパチパチパチ!
鳴り止まぬ拍手の中、ランプは吐き捨てるように言う。
「ちっ!」
と……
「あたた、酷いじゃないですかナッキ様ー、まだ頭がくらくらしていますよー」
復活したらしいアレ、ヘロンが翼で頭を抑えながら近付いて来た。
ナッキは再びゴミを見る目つきに戻って言う。
「ああ、気が付いたんならさっさと帰りなよ、僕等としても実験動物にされたら敵わないからさ」
「へ? 実験動物…… ってあの声が聞こえたんですか? 純粋な鳥語で話したんですよ! 本当に?」
「ん? ああ、君の本音はしっかり聞き取れたよ! ついでにドラゴの羽音も理解出来るようになったからさ、君は本当に必要なくなったって事さ! 判ったらもう帰りなよ!」
冷え切ったナッキの口調であったが、この言葉を聞いたヘロンはどういう訳かパァッと表情を喜びに満たして叫ぶ。
「や、やったー! 実験成功だーっ! これで、これで! 皆、生き残れるかもしれないぞぉっ!」
「っ!」
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