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『ミセスの大森って明らかにギターの方が仲良いよね』
ふと目に付いた投稿があった。
3人体制になってからこう言われることが増えた。理由は単純。僕がぼっちになるから。過去の映像を見返しても、仲良さげな2人を見ている僕が沢山いる。でもフェーズ1の頃からずっとそうなので、特に気にしていなかった。
あくまで、自分は。
『涼ちゃん、嫉妬してる?』
『寂しそう〜もっくん涼ちゃんにも構ってあげて!』
『最近もとぱ距離近くない?』
『わざと涼ちゃんに見せてるんじゃ…?』
日に日に増していくそんなコメント達。
自分が特にどう思ってもいなかったことを急に人に言われると、気にし始めてコンプレックスになってしまう訳で。肩を組んだり遊びの用事を立てている2人をみて胸のどこかが痛むようになった。気が付けば毎日エゴサーチにはまりスマホと睨めっこしていた。
まだ、可哀想といった憐れみの内容はよかった。
『こんなに2人仲良いから、キーボードの人必要?』
『若井と藤澤って不仲らしいよ』
『もとぱで活動すればいいのに』
『3人はバランス取れてるようで取れてねえな』
必要ない。不仲説。2人だけで十分。大森の性格が悪い。3人にしたのが間違い。あの頃に戻って欲しい。
ただちょっと元貴と若井が仲良いだけで。今まで一緒に居た歴が長いだけで。簡単にミセス自体を咎めるアンチとして成り立っていく。必要ないと言われてしまう。そんな中出来たBFFの歌詞。まるで、好きな人に関係性の答え合わせをさせられているようだった。涙を堪えながらのリハで、その時の記憶はあまりない。もう僕はここに居ていい存在じゃないんだ。毎晩毎晩魘された。僕は邪魔なんだ。デビューしたての頃から言われていたはずなのに。
でも、違った。
「1番が俺で、2番が涼ちゃんって感じじゃない?……歌詞。」
心がすっと、軽くなった。ずっと若井ソングだと思っていた。こんなこと思ったら怒られるかもしれないけど、初めてちゃんと元貴と若井の愛情らしきものを感じた。ここにいて良かったんだ。
それから2番の歌詞を見て、なんとなく気になる部分かあった。もうちょっとだけ期待してみてもいいのかな。叶う叶わない以前の問題ではないけれど。
あるライブ、キラキラとした衣装を身にまとった君と僕ら。
一つ息を吸って、歌い出す。3人で向かい合った丸いステージは高く、お互いの姿と遠くのペンライトしか見えないくらい。君は、このメンバーじゃないと駄目だ、と言うように目を合わせて、限りなく優しい歌声で歌い切った。日照りが心を戻すように、離れた場所から見ていた僕をひっぱって連れてこられたあの優越感に似た気分だった。まるで、あなたの居場所はここだから。そんな2人の眼差しが、考え込んでいた自分を馬鹿らしく思わせてくれた。
意識が浮上する。
「…懐かしい夢を見たな…。」
大事なことを忘れていた。いつからか作ってくれた居場所を無視して、僕は2人の気持ちを台無しにしていたんだ。変わりたいを子守唄に出来るように。尖っていた心が和らぐような気がした。
通知音が鳴る。画面をタップし、用事を尋ねる。内容は君から今度のオフの日に集まりたいとのことだった。いつもより軽くなった体で、見えないけれど大きく頷いた。
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読んで下さりありがとうございます!
回想シーンと現在を混ぜてみたので、分かりずらかったら申し訳ないです。きっと涼ちゃんはまだ3人で集まると思ってそうですね。残り3話もよろしくお願いします。
次も是非読んで頂けると嬉しいです。