テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
新庄 駿
270
茶々丸
122
翌日。明鳳学園のカリキュラムには、この世界ならではの「魔術授業」が組み込まれていた。
実験場を兼ねた広い講堂に、萌え袖獣耳パーカーを着た生徒たちが集まる。
「よーし、今日の授業は『魔力出力の測定』と『高難度数式の構築』だ。各自、的(ターゲット)に向かって魔術を放つように」
教師の指示と同時に、女子生徒たちの視線が一斉に「ある二人」へと注がれた。昨日のファンクラブ設立により、二人の注目度は跳ね上がっている。
「きゃあ! はるたんとわたるん、今日も並んでる! 尊い!」
「見て、はるたんが魔術の杖を萌え袖でぎゅって握りしめてるよぉ……!」
「わたるん、数式見ながら猫耳ピコピコさせてる! 養いたい!」
講堂のあちこちから、隠す気のない黄色い悲鳴が飛び交う。
「……っ、うるさいなぁ! だから『はるたん』って呼ぶな! 僕はこれでも、前いた学校じゃ戦闘魔術のトップだったんだぞ!」
小形遥太(こがた はるた)は顔を真っ赤にしてトイプードル耳を逆立てた。照れ屋な彼にとって、大衆の前で可愛いと連呼されるのは精神的拷問に近い。
「ふむ……。外野の雑音が多すぎて魔力の計算式にノイズが混ざる。そもそも、なぜ僕の魔導書はこんなに重いんだ。この萌え袖のせいでページがめくりにくい……っ」
末田渉(すえだ わたる)も耳まで赤くしながら、イライラと猫尻尾を左右に激しく打ち付けていた。
「おいおい二人とも、女子たちがスマホ構えてるぜ? 盗撮の魔術レンズだな」
一足先にスマートに測定を終えた新庄駿(しんじょう しゅん)が、ウサ耳を揺らしながら囁く。
「……鬱陶しいな。二人とも、実力で見せつけて黙らせろ」
霧島流空(きりしま るあ)が狼耳を伏せ、気怠げに腕を組んで二人を促した。
「言われなくても……! 誰も『可愛い』なんて言えなくしてやる!!」
遥太が前に出た。ターゲットの魔力測定器の前に立ち、長い袖から小さくて白い手を突き出す。
本来なら、杖を使って複雑な呪文を唱えるのが一般的な魔術だ。しかし、遥太の持つ「チート能力」は、そんなまどろっこしい手順をすべて超越していた。
「はるたん頑張れー!」という女子の声が響いた瞬間、遥太の目がスッと鋭い戦士のそれに変わる。
「――舐めるなッ!!!」
ドンッ!!! と、講堂全体が激しく揺れた。
遥太の手のひらから放たれたのは、詠唱も魔法陣もない、純粋で圧倒的な質量を持った「超・高密度魔力砲」。
まばゆい閃光が講堂を包み込み、頑丈なはずの測定器の的が一瞬でドロドロに融解。背後の防護壁までヒビだらけにして吹き飛ばした。
「は、判定不能……っ!? 国家宮廷魔術師レベルの出力です!」
教師の絶叫が響く。
「ど、どうだ……! これでも僕が『可愛い』か……っ!?」
遥太は肩で息をしながら、勝ち誇ったように女子たちを睨みつけた。しかし、規格外の魔力を一気に使ったせいで少し足元がふらつき、トイプードル耳がペタンと垂れてしまう。
それを見た女子たちは――。
「ギャあああああ!!! ギャップ萌ええええ!!!」
「何あの破壊力!? 怒って耳垂れてるの可愛すぎて心臓止まる!!」
「強いはるたん最高ーーーッ!!(ドサッ、ドサッ)」
静まり返るどころか、興奮のあまり30人近くが同時に尊死した。
「な、なんでだよぉぉぉ!!」
遥太が涙目で絶望する。
「やれやれ、やはり力押しでは脳筋のゴリラ扱いされて終わるだけだ。魔術とは、洗練された知識と理論の構築だよ」
次に前に出たのは末田渉だ。彼は眼鏡のブリッジを萌え袖の先で押し上げ、空間に浮かび上がる魔術数式のホログラムに向き合った。
出された課題は、現代の魔術師では解読に数日かかると言われる高難度の大魔術数式。
「僕のチート頭脳を侮るな」
渉の指先が動き出した。キーボードを叩くような速度で、空間の数式を書き換えていく。
通常なら何十行もの記述が必要な数式を、渉は独自の超理論で最適化し、わずか数秒で極限まで美しい「簡易式」へと再構築してしまった。
ピピッ。
『数式構築、完全完了。展開所要時間:3.4秒。誤差:0.00%』
システムのアナウンスが響く。現代魔術の歴史を塗り替えるレベルの「チート頭脳」の証明だった。
「これで理解できたかね。僕を『わたるん』などという稚拙な言葉で定義することが、いかに非論理的であるか――」
渉はふん、と鼻で笑い、完璧なドヤ顔で猫耳をピンと立てた。
しかし、女子たちの反応は渉の予測を遥かに超えていた。
「天才メガネ猫耳少年きたあああああああ!!!!」
「今の指の動き見た!? 萌え袖からチラチラ見える白い指先がエロ尊い!!!」
「ドヤ顔で猫耳立ってるの無理!! 可愛すぎて息ができない!!」
「なっ……!? なぜだ! 完璧なロジックで僕の凄さを示したはずだぞ! 指先がエロ尊いとはどういう計算式から導き出された答えだ!!」
渉は顔をこれ以上ないほど真っ赤にし、パニックになりながら猫尻尾を直立させてポフポフと膨らませた。
「あはは! 二人とも大成功じゃん! ファンクラブの登録者、また1000人増えたよ!」
秀兎がスマホを見せながら大爆笑する。
「もう嫌だーーー!!」
遥太は萌え袖で顔を覆ってしゃがみ込み、渉は恥ずかしさのあまり流空の後ろに隠れて猫耳を完全にペタンと寝かせてしまった。
チート能力を発揮すればするほど、そのギャップで女子たちを尊死させてしまう二人。明鳳学園の女子たちの「尊死の連鎖」は、誰にも止められそうになかった。
コメント
1件
新庄さん、第2話読み終えました!いやあ、遥太くんも渉くんもチート能力を発揮すればするほど「可愛い」の沼にはまっていく展開がもう最高でした(笑)。せっかく圧倒的な魔力と頭脳を見せつけたのに、ギャップで尊死される理不尽さが面白すぎます。特に渉くんの「指先がエロ尊いとはどういう計算式から導き出された答えだ!」というパニック台詞、ツボでした。新庄さん演じる新庄駿くんがサラッとウサ耳で状況を楽しんでるのも憎いですね。次はどうなっちゃうんだろう…楽しみにしてます!