コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
『イビルシープ』か。
モンスター図鑑にはミノリ(吸血鬼)が言ってた通りのことが書いてあったけど、こういうのは戦ってみたやつの意見を聞くのがいいよな。
でも、時間が経《た》てば経《た》つほど強くなっていく化け物を倒せるやつなんているのかな?
ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)がそんなことを考えながら歩いていると、何かにぶつかった。
「ん?」
彼が顔を上げると、黒いローブを身を纏《まと》った幼女が立っていた。
「すまない、ニイナ。ちょっと考え事してたから気づかなかったんだ」
「別に大丈夫だよ。それで? ナオトは何を考えてたの? エッチなこと?」
「お前は俺をなんだと思っているんだ?」
「体はショタ。頭脳はピンク色」
「えっと、俺は別に年中発情期なわけじゃないんだぞ?」
「知ってるよ。けど、たまにムラムラする時はあるよね?」
「それは……まあ……そうだけど」
彼が彼女から視線を逸《そ》らすと、彼女は彼に顔をグイと近づけた。
「な、なんだよ」
「今、エッチなこと考えてたでしょ?」
「そ、そんなことねえよ。ただちょっと気まずくなっただけだ」
「本当に?」
「ほ、本当だよ」
「怪しいなー」
彼女は彼の首筋まで顔を近づけると彼の血の匂《にお》いを嗅《か》いだ。
「……嘘《うそ》じゃないみたいだね。ごめんね、疑ったりして」
今ので嘘をついているのかどうか分かるのか。
すごいな、ニイナは。
「いいよ、別に気にしてないから。ところでニイナ」
「なあに?」
「『イビルシープ』ってさ、どんなモンスターなんだ?」
「えっと、まあ、なんというか……あんまり相手にしたくないモンスターだね」
「そんなに強いのか? もしかしてお前より強かったりするのか?」
「私の異名は『殺し屋の中の殺し屋』なんだよ? そんな私より強い羊がウジャウジャいると思う?」
「まあ、たしかにそんなのがウジャウジャいたら、この世界は今頃、そいつらに支配されてるだろうな」
彼がそう言うと、ニイナはどこからともなくナイフを取り出した。
「倒し方は色々あるけど、私はとりあえず両目をくり抜いてから切り刻むよ」
「うーん、それだとギリギリまで引きつけないといけないな。他には何かないのか?」
「うーん、まあ、角《つの》を折ったり、鼻を切り落としたりしてから倒すっていう方法もあるよ」
「なるほどな。でも、俺はお前みたいにナイフを自在に操れないからな……。他に方法はないのか?」
「えっと、鼻にパンチして……」
「分かった。もういい。なんとなく理解したから」
「そう……。じゃあ、情報料ちょうだい」
「え?」
「えっ? まさか私が何の見返りもなしに情報を提供すると思ってたの?」
「……はい」
「そっか。ということは、今ナオトは無一文なんだね?」
「えっ? いや、別に無一文ってわけじゃ……」
「そっかー。じゃあ、仕方ないねー」
彼女はそう言うと、彼の左肩に手を置いた。
「ナオト、お金が払えない時は何で払うのが正解なのか分かる?」
「え、えっと……体……かな?」
「正解。じゃあ、あとは……分かるよね?」
彼は悟った。
人と吸血鬼のハーフである彼女に何を支払うべきかを。
「はぁ……分かったよ。今回の情報分の血を吸わせてやるから、それで勘弁してくれ」
「うん、いいよ。じゃあ、ついてきて。ここだと、みんなの視線が気になるでしょ?」
「あっ、はい。分かりました」
彼はそう言うと、ニイナについていった。
彼がお茶の間に戻ってきた時、彼は少し青ざめていたそうだ。