あなたは優しいから、きっと放っておかない。
それを知ってて、ワナを張る。
「…何してるの」
雨の中、傘もささずに佇む俺に、傘を手向ける。
自分の肩が濡れるのも躊躇せず、すでにずぶ濡れの俺のために、雨を遮る。
「…濡れますよ?」
「いいよ」
そう言って、腕を掴んで歩き出した。
「どこへ?」
「俺の家」
「…出掛けるとこだったでしょ?」
「…いいよ」
ほらね、放っておかないよね。
そうやって、まんまと思う壺にハマるあなたを心配する傍ら、俺はその優しさを利用するんだよ。
玄関に入ると、安心する、愛しい人の香り。
「待ってて」
水滴が、冷たい玄関の床に水溜りを作っていく。
「ほら、ちゃんと拭いて」
そう言って、タオルを頭からバサリと掛けると、髪を優しく拭いてくれる。
自分も濡れているのに、タオルは首にかけたままで。
「あざす…」
ぽそっと呟くと、何かあった?と心配そうに顔を覗き込む。
顔が、近くて…
首に掛けられたタオルをぐいと引っ張り、キスをした。
「っん …っ何」
「キス、したくなった」
「…わけわかんない」
呆れたように、タオルを顔に投げつけられた。
「早く上がって?とりあえずシャワーしなよ」
面倒見がいいのも、好き。
優しいのも好き。
鈍感なとこも、全部好き。
「ありがとうございます…」
「約束があったんじゃないですか?」
「断った」
ほら、思う壺。
その約束知ってて、その相手に会わせたくなくて、俺は卑怯な手を使ったんだよ?
それを知ったら、あなたは何て思うかな
俺のこと嫌いになる?
信用はなくすかな…
「ごめんね?」
予定を潰したことに対して?
騙すようなことして?
優しさを、利用したことに対して?
口をついて出てきた謝罪の言葉は、ただの定型文にすぎない。
「いいよ」
温かいコーヒーを差し出しながら、ソファに座る俺の隣に腰を下ろす。
「あ…、シャワーありがとうございます。服も」
愛しい人の香りに包まれて、どろどろした気持ちが解かされるようだ。
「うん。それより、何かあった?」
俺の気持ちを汲もうと、目を合わせて問いかける。その瞳は、疑うことを知らない真っ直ぐで綺麗な光。
少しだけ胸が痛んだけど、僅かなアトだけ残して消えた。
「大丈夫?」
怪訝そうに、何も言わない俺の濡れた髪をそっと撫でる。
優しいその腕を掴んで、そのままソファへ組み敷いた。
「…っ!何…を」
「…抱いていい?」
「!何言って…」
言いかける言葉をキスで塞ぐ。
我ながらズルくて、無理やりで、一方的で…
拒めないのを知ってて、こんなやり方するんだよ。
卑怯でも汚くてもいい。
あなたを誰にも渡したくない…
「っ…目黒…!」
「好き…大好きです、舘さん」
俺だけのものになってよ
情緒不安定気味な目黒くん書きたかっただけです(ヒャッホイ)
続きそうで続きません(逃)
コメント
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こういうの大好物です🫶🏻️︎🫶🏻️︎