TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する


守は昨日のゲームの出来事を思い返していた。見知らぬ男たちに襲われ、

無力感に苛まれた瞬間、助けを求めても誰も反応せず、ただ通り過ぎていくプレイヤーたち。

その時の絶望と孤独が、今も胸にこびりついている。


「見てるだけだったらあいつらと一緒ですよ」天城に言われたその一言が、

まるで刃のように心に刺さっている。そして、シンシアが涙ながらに言った言葉が脳裏に蘇った。

「自分たちも強くなるんだ」――彼女はあの絶望的な状況の中でも、立ち上がろうとしていたのだ。


「シンシアさん…勇気をください…」守は、震える手を握りしめ、

何かを決意したかのように一歩進んだ。体中の力が張り詰め、鼓動が速くなる。

これまで避けてきた責任や恐怖が、いま自分の前に立ちはだかっているような気がした。

しかし、ここで逃げてはならない。今度こそ、行動するべき時だった。


守は2階へと走り出した。紗良が更衣室のドアを開けようとした、その瞬間だった。

「三井さん!」守は声をかけた。紗良は驚き、

振り返って不思議そうな顔をした。「どうしたんですか?」


守は焦りながらも、ドアをそっと締めた。

「あ、あの、じょ女子ロッカーにネズミが出たから、退治してって言われて…」

震える声で守は言った。

「ネズミ?」紗良は戸惑ったように小さな声で聞き返す。

守は慌てて、さらにいろんなことを付け加えた。

「え、ええ…ネズミにゴキブリやムカデ、それから、えっと、へ、蛇とか…」

「そ、そんなに?」紗良は驚きつつも、顔をしかめる。守はとにかく、

彼女をロッカーに入れないために必死だった。女の子が嫌がるものを次々と並べ立てていたが、

自分でもその説明がどこか滑稽に聞こえるのを感じていた。


「今日はトイレで着替えてください、ボクが退治しますので…」守は精一杯冷静に言った。


紗良は、守の必死な様子を察したのか、少し戸惑いながらも「分かりました」と頷いた。

「ちょうど着替えを持ってきたからよかった」と言いながら、彼女はトイレに向かった。


守は、紗良が無事にその場を離れるのを確認すると、大きくため息をついて、その場にへたり込んだ。

「はぁ~…」彼の体から一気に力が抜けた。心臓が激しく打ち、全身が緊張から解放されたように感じた。

手はまだ震えていたが、守は少しだけほっとした。

(やっと…やっと何かができた…)

守は、自分が踏み出した勇気の一歩を感じ取っていた。


「最悪の誤解」


守は紗良を無事に更衣室から追い出し、ほっと胸を撫で下ろしていた。

しかし、まだ問題は終わっていない。紗良のロッカーに仕掛けられた

カメラを何とかしなければならなかった。彼女が戻ってくる前にカメラを取り除き

証拠を抑えなければ、事態はもっと悪化するかもしれない。

守は誰もいないことを確認し、そっと女子ロッカーに忍び込んだ。


紗良のロッカーに近づき、カメラの位置を確認する。予想通り、

カメラはロッカーの上に巧妙に設置されていた。その向きや角度から、

間違いなく盗撮目的であることは明白だった。守は死角に入り、慎重に近づく。


しかし、その瞬間、守に妙ないたずら心が芽生えた。

「僕が今このカメラに映ったらどうなるんだろう?」――ふとそんな考えが頭をよぎった。

守は一度手に取ったカメラを自分の胸元に向け、寄せて自分の胸を演出し始めた。

太っている自分の体を利用して、まるで女性の胸の谷間ができたように見せる。

その姿を想像すると、佐々木と森井が興奮している様子が目に浮かんだ。


「これであいつらが盛り上がってると思うと、面白いな…」守はさらにエスカレートして、

自分の尻をカメラに向けた。笑いをこらえながら、お尻を振ってみせる。

そんな悪ふざけが楽しくなり、とうとう彼はパンツを脱ぎ、下半身をカメラに押し付けようとした。


その瞬間、ドアが勢いよく開いた。


「ネズミが出たって本当?!」田中さんの声が響き渡った。

守は動揺して振り向くと、そこには田中さんだけでなく、紗良まで立っていた。


「!!!」お互いに固まった。時間が一瞬止まったかのように感じた。


「きゃー!!何やってるの!」田中さんの悲鳴が部屋中に響いた。


「ち、ちがうんです!」守は慌ててパンツとズボンをはこうとしたが、

手足がもつれ、よろけて倒れてしまった。その瞬間、田中さんのスカートに手が触れ、ずり落としてしまった。


「いやー!!」田中さんは悲鳴を上げ、紗良は恐怖に顔をこわばらせた。


「ま、待って、これは誤解なんだ!」守は必死に弁解しようとしたが、

紗良が震えながら「こないで!」と叫んだ。その言葉が守の胸を強く突き刺した。


騒ぎを聞きつけて、主任と佐々木、森井が駆けつけてきた。「まじかよ…」という声が聞こえ、

守は絶望感に包まれた。佐々木と主任に取り押さえられ、何が起きたのかも説明できないまま、

守はそのまま店長室に連行された。


守の頭の中は真っ白だった。「終わった…」そう呟く彼の目には、すでに現実感が失われていた。

loading

この作品はいかがでしたか?

40

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚