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守は昨日のゲームの出来事を思い返していた。見知らぬ男たちに襲われ、
無力感に苛まれた瞬間、助けを求めても誰も反応せず、ただ通り過ぎていくプレイヤーたち。
その時の絶望と孤独が、今も胸にこびりついている。
「見てるだけだったらあいつらと一緒ですよ」天城に言われたその一言が、
まるで刃のように心に刺さっている。そして、シンシアが涙ながらに言った言葉が脳裏に蘇った。
「自分たちも強くなるんだ」――彼女はあの絶望的な状況の中でも、立ち上がろうとしていたのだ。
「シンシアさん…勇気をください…」守は、震える手を握りしめ、
何かを決意したかのように立ち上がった。体中の力が張り詰め、鼓動が速くなる。
これまで避けてきた責任や恐怖が、いま自分の前に立ちはだかっているような気がした。
しかし、ここで逃げてはならない。今度こそ、行動するべき時だった。
守は2階へと走り出した。紗良が更衣室のドアを開けようとした、その瞬間だった。
「三井さん!」守は声をかけた。紗良は驚き、
振り返って不思議そうな顔をした。「どうしたんですか?」
守は焦りながらも、ドアをそっと締めた。
「あ、あの、じょ女子ロッカーにネズミが出たから、退治してって言われて…」
震える声で守は言った。
「ネズミ?」紗良は戸惑ったように小さな声で聞き返す。
守は慌てて、さらにいろんなことを付け加えた。
「え、ええ…ネズミにゴキブリやムカデ、それから、えっと、へ、蛇とか…」
「そ、そんなに?」紗良は驚きつつも、顔をしかめる。守はとにかく、
彼女をロッカーに入れないために必死だった。女の子が嫌がるものを次々と並べ立てていたが、
自分でもその説明がどこか滑稽に聞こえるのを感じていた。
「今日はトイレで着替えてください、ボクが退治しますので…」守は精一杯冷静に言った。
紗良は、守の必死な様子を察したのか、少し戸惑いながらも「分かりました」と頷いた。
「ちょうど着替えを持ってきたからよかった」と言いながら、彼女はトイレに向かった。
守は、紗良が無事にその場を離れるのを確認すると、大きくため息をついて、その場にへたり込んだ。
「はぁ~…」彼の体から一気に力が抜けた。心臓が激しく打ち、全身が緊張から解放されたように感じた。
手はまだ震えていたが、守は少しだけほっとした。
(やっと…やっと何かができた…)
守は、自分が踏み出した勇気の一歩を感じ取っていた。
守は紗良を無事に更衣室から追い出し、ほっと胸を撫で下ろしていた。
しかし、まだ問題は終わっていない。紗良のロッカーに仕掛けられた
カメラを何とかしなければならなかった。彼女が戻ってくる前にカメラを取り除き
証拠を抑えなければ、事態はもっと悪化するかもしれない。
守は誰もいないことを確認し、そっと女子ロッカーに忍び込んだ。
紗良のロッカーに近づき、カメラの位置を確認する。予想通り、
カメラはロッカーの上に巧妙に設置されていた。その向きや角度から、
間違いなく盗撮目的であることは明白だった。守は死角に入り、慎重に近づく。
しかし、その瞬間、守に妙ないたずら心が芽生えた。
「僕が今このカメラに映ったらどうなるんだろう?」――ふとそんな考えが頭をよぎった。
守は一度手に取ったカメラを自分の胸元に向け、寄せて自分の胸を演出し始めた。
太っている自分の体を利用して、まるで女性の胸の谷間ができたように見せる。
その姿を想像すると、佐々木と森井が興奮している様子が目に浮かんだ。
「これであいつらが盛り上がってると思うと、面白いな…」守はさらにエスカレートして、
自分の尻をカメラに向けた。笑いをこらえながら、お尻を振ってみせる。
そんな悪ふざけが楽しくなり、とうとう彼はパンツを脱ぎ、下半身をカメラに押し付けようとした。
その瞬間、ドアが勢いよく開いた。
「ネズミが出たって本当?!」田中さんの声が響き渡った。
守は動揺して振り向くと、そこには田中さんだけでなく、紗良まで立っていた。
「!!!」お互いに固まった。時間が一瞬止まったかのように感じた。
「きゃー!!何やってるの!」田中さんの悲鳴が部屋中に響いた。
「ち、ちがうんです!」守は慌ててパンツとズボンをはこうとしたが、
手足がもつれ、よろけて倒れてしまった。その瞬間、田中さんのスカートに手が触れ、ずり落としてしまった。
「いやー!!」田中さんは悲鳴を上げ、紗良は恐怖に顔をこわばらせた。
「ま、待って、これは誤解なんだ!」守は必死に弁解しようとしたが、
紗良が震えながら「こないで!」と叫んだ。その言葉が守の胸を強く突き刺した。
騒ぎを聞きつけて、主任と佐々木、森井が駆けつけてきた。「まじかよ…」という声が聞こえ、
守は絶望感に包まれた。佐々木と主任に取り押さえられ、何が起きたのかも説明できないまま、
守はそのまま店長室に連行された。
守の頭の中は真っ白だった。「終わった…」そう呟く彼の目には、すでに現実感が失われていた。